戦国武将とトリップ少女

月夜

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第五幕 堅物、石田三成

一 堅物、石田三成

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 そんなことには気付かずに、私は信長様に人を思いやる気持ちが芽生え始めたのだと、目に見える変化を嬉しく感じていた。


 自室へ戻る前に、怪我人の手当をしている部屋を覗くと、中には傷付いた人達が沢山いるのが見える。

 さっきの戦でこんなに多くの人が傷付いたのだと、私の胸が痛むのを感じていると、背後から声をかけられ振り返ると、そこには秀吉さんの姿があった。



「お前、こんなとこで何してんだ?」

「怪我をした人のことが気になってしまって……」

「お前が心配したってどうしようもねぇだろ。それに、今回はいい方だ」

「え?」

「戦が早く終わったからな、怪我人もいつもよりはすくねぇし、重傷を負った奴もほとんどいねぇ。何より、死人が今回の戦では出なかったんだからな」



 死人が出なかった。
 その言葉を聞き、私は安堵した。

 でも、今回は運が良かっただけで、これから先行われる戦では、きっと沢山の怪我人や死人が出るのだと思うと胸が痛む。


 ここは戦国時代、仕方のないことだとはわかってはいても、やっぱり人が死ぬのは嫌だ……。



「何暗い顔してんだよ。今回の戦は死人が出なかったことを喜んどきゃいいんだよ」



 秀吉さんの言う通りだ、先のことを考えたって仕方がない。

 それよりも、今は今回の戦が無事に終わったことを素直に喜べばいいんだよね。



「秀吉さんの言う通りですね!あの、私にも何か手伝えることはないでしょうか?」

「それならあんたにもできることがある」



 秀吉さんに聞いたとき、背後から突然声が聞こえ振り返ると、そこにはいつの間にか三成さんの姿があった。



「三成さん、私にもできることってなんですか?」

「あんたに簡単な手当を教える、軽傷の患者を頼めるか」

「わかりました!」



 私にも少しはできることがあるなら、皆のために頑張らないと!



「んじゃ、俺は行くわ。お前は手伝い頑張れよ」

「はい!」



 秀吉さんが行ってしまったあと、私は三成さんに簡単な手当の仕方を教えてもらうと、軽傷を負った人達の手当の手伝いを始めた。


 それから何とか患者さんの手当も終わり、私が自室へ戻ろうとしたとき、三成さんに声をかけられ庭へと出た。



「手伝い御苦労だったな」

「いえ、少しでも皆さんのお役に立てたのなら良かったです」



 三成さんは私をじっと見詰めているけど、私何か変なこと言ったかな……。



「お前は変わっているな」



 突然言われた言葉に首を傾げると、三成さんは私を真っ直ぐに見詰めて口を開いた。



「あんたは何者だ?」

「何者って……」

「あんたの身形、そんな物は見たことがない」



 初めは信長様や秀吉さんにも言われていたけど、最近では馴染んでしまっていたせいか、あまり突っ込まれなくなった服装について聞かれるとは思わず、目を丸くした。



「私は」



 言おうとした言葉を、私は呑み込んだ。

 私が未来から来たことを話しても、信じてもらえるかもわからない。

 それに、その事でこの世界に何の変化をもたらすかもわからない。



「すみません……」

「話せない理由があるみたいだな」



 こんなんじゃ、家康さんの時のように三成さんにも疑われてしまう。

 だとしても、話すわけにはいかず、私は口をつぐんだ。



「俺は、素性もわからぬ女人を信長様が置くと聞いたとき、あんたが間者ではないかと疑っていた。信長様に気に入られ、城内へ潜入した者ではないかと」



 そうだよね…。


 突然現れて突然安土城に置かれて、私も驚いたけど、家臣の人達からしたら私は疑われても仕方のない状況だ。



「だが、俺が見てきたあんたは間者ではないと思った。夕餉を作ったときや戦、もしあんたが患者なら、そんなことはしないだろう」

「三成さん……」

「だが、信長様に使える身としては、あんたを簡単に信用するわけにはいかない」

「はい。いつか話せる時が来たら、必ずお話しします」

「ああ。待っている」



 三成さんと話したあと、私は自室へと戻ると三成さんのことを考えていた。



 信長様に忠実で、自分の仕事もしっかりとしていて、三成さんって真面目な人なんだと感じた。


 怪我人の手当てをしているときも、三成さんは皆に気を配っていた。

 そう言えば前に、光秀さんが三成さんのことを真面目だって言っていたことを思い出した。


 三成さんは休めているんだろうか……。


 怪我人の手当てのときも、三成さんだけは休まずに頑張っていた。

 三成さんも戦が終わったあとで疲れているはずなのに。

 私は立ち上がると厨へと向かい、女中さんに材料を貰うとおはぎを作り、お茶と一緒に三成さんの部屋へと運ぶ。



「加賀です。少しよろしいでしょうか?」

「ああ。入ってくれ」



 襖を開き中へと入ると、休んでいると思っていた三成さんは本を読んでいた。



「あの、その書物は……」

「これか、怪我人に重傷な物もいたのでな、何か使えそうな薬草はないかと調べていたんだ」



 まさか、怪我人の手当てが終わったあともずっと調べものをしてたの……?


 私は、三成さんから読んでいた本を取り上げると、机の上に持ってきたお茶とおはぎを置いた。



「何をするんだ!」

「何をするんだじゃないですよ!戦から帰ってきたら怪我人の手当をして、休まずに調べものをしてるなんて……!」

「これは俺がすべきことだ。怪我人にも早くよくなってもらわねば、先の戦に支障もでる」



 怪我人を治すのも戦のためで、あげくに自分の体調のことも考えないことに私は怒り、キッと光秀さんを睨み付ける。



「とにかく、今は自分の体のことも考えてください!じゃないといつか倒れてしまいますよ」

「俺なら大丈夫だ。こんなことはいつものことだからな」



 いつものことって、愛がない武将は誰も心配をしないの!?



「ダメです!!とにかく今だけでもゆっくり休んでください。おはぎとお茶を持ってきましたから、食べて疲れをとってくださいね」

「だが」

「わかりましたか?」

「……」



 有無を言わさない勢いで言うと、三成さんは諦めておはぎへと手を伸ばし、口へと運んだ。



「……美味い」

「良かったです!」



 おはぎを食べ、お茶を飲み終えるとすぐに本へと手を伸ばし読み始めてしまった。
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