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第1話 踊れ★情熱★パパラチア!

ダンスは虹の色

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 ワン、ツー、スリー、フォー!!

 合図に合わせて猫達がいっせいに踊り出す。事前の打ち合わせはほとんどなし。ぶつからないように気をつけてステージに広がり、最初の立ち位置を決めた程度。それも日によって違ったりするらしい。

 今朝、目が覚めた時には一瞬、自分がどこにいるか分からなかった。
 知らない天井だ、と言うべきだったか。アレって元ネタ何なん?

 タイショーと一緒に園内のカフェで朝飯を食い、掃除を手伝ってから猫達のステージへ。そこら中に案内板や道標みちしるべがあるから迷わずに到着した。

「ゆうき、おはよーっ」

 顔を見るなり飛んで来て、俺の周りをクルクル走り回るチビスケ。今日も可愛いじゃねーかこの野郎。
 毛づくろいを終えたパパラチアキャット達はステージに飛び乗り、開始の合図を待つ。合図のカウントダウン、そして明るい音楽に合わせてダンスが始まる。

 ステージに出てビックリしたのは観客の数。10人かそこらだった昨日と違って、今朝は少なく見積もっても50人はいる。それも、いかにも冒険者らしい身なりの人達ばっかり!

「ユウキ、キョロキョロすんな」

「あ、ごめん」

 すれ違いざま、黒猫のリトから小声で注意を受ける。いけないいけない。後でちゃんと謝ろう。前を向いて、笑顔。猫達の邪魔にならない位置でステップステップ……。
 昨日は特別に中央で踊らせてもらったけど、今日の俺の仕事は猫達のバックダンサーだ。何たって観客達は猫ダンスを見に来てるんだからな。

(うわ、見られてる…)

 大勢に「何コイツ?」て目で見つめられて緊張する。昨日だって見られてたんだろうけど、興奮してて気が付かなかった。
 何度かステップを間違え、ノリも悪く、気分が落ち込んでくる。その時、

「ゆうき」

 チビスケの声。軽快な音楽に合わせて大きくジャンプし、ポンっと頭を踏みつけていく。

「しっかり、しろ」

 折り返し、反対側からもジャンプしてポン!
 ふっと気分が楽になる。ありがとうチビスケ。

 猫達は昨日と同じく、好き勝手に踊り続けている。それに合わせた踊りをしなければ…と周囲を気にし過ぎていたが、勝手な思い込みだったかもしれない。
 猫達は、客席からどう見えるか?なんて気にしてない。他の猫にぶつからないように、そして、ぶつかっても止まらずに踊り続けているようだ。よし!

「チビスケ」

 小さな声で呼びかけて、そちらに手をのばす。
 気づいたチビスケがポンポンと軽いジャンプで斜めに下ろした腕を登ってくる。チビスケを肩に乗せたまま曲に合わせてターン、そして斜めに下ろした反対側の腕からチビスケが降りていく。ははは、楽しい。
 観客はもう、どうでもいい。
 昨日と同じ様に、曲に合わせて俺も好き勝手に踊ろう。

 タタタン、タン、タン、タン、タタン…

 BGMは昨日とは別の音楽だったが、終わりが近づいて来た様だ。
 最後にステージの中央辺りに寄って、みんなでポーズ!
 すると、ステージから虹色の光が湧き上がり、細かい粒になって観客達に降り注いだ。

「よっしゃあ! バフ掛かったあ!」

「動きにキレがある。敏捷アップだな」

「身体中から魔力が湧き上がるのを感じるわ!」

「俺はダブル、いやトリプルで掛かったかも」

「よし。急いでダンジョンへ向かうぞ」

「「「 おう!! 」」」

 ——— へ? 何?

「いってらっしゃ~い」

「気をつけてナー」

 パパラチアキャット達のお見送りを受けて冒険者達が帰ってゆく。
 それぞれ、何かしらの効果のあるバフが掛かったらしい。
 「バフを掛ける」と言うのは、魔法でステータスを強化したり属性攻撃への耐性をつけたりする事。
 さっきの虹色の光、魔法なのか?
 思い出してみると昨日もステージの最後に光ってたけど、演出の照明だと思ってた。
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