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第1話 踊れ★情熱★パパラチア!
パパラチアダンスは今日もサイコー☆
しおりを挟む午後はひとしきり練習したが、やはりパパラチアダンスの概要はつかめない。
だって見本に踊ってくれる猫は多いけど、どれもみんな違う踊りなのだ。
確かに本番のステージでも、みんな別々のダンスに見える。
ピップルとポップルは2匹でセットのダンスが多いが、他は大体、バラバラだ。
仕方ない。とりあえず基本のステップのおさらいをしておこう。
こちらの世界に来た時に持っていたスマホはあるがインターネットに接続できるはずもなく、動画を参考にしてステップを確認できないので、知ってるステップやダンスの動作を思い出しながら復習する。
♪~♪~♪♪♪~
あ、音楽が流れ出した。もうそんな時間か。
ステージが始まったのではない。開演10分前から客寄せのためのインストゥルメンタルが流れるのだ。つまり開始まであと10分。
結局、パパラチアダンス上達のヒントがつかめないまま夜の部を迎えてしまった。
せめてステップのおさらいをしておこう。
ステージ周辺に流れる陽気な音楽に合わせ、観客席から見えない場所で各種ステップを連続して試みる。
猫達は広いステージ上を自由自在に走り回るから、邪魔にならない様に位置を変えながらのステップも練習練習。
「だいぶ上手くなったナ。その調子だナ」
ふわっ!?
急に声をかけられて驚く。マッツオがうれしそうに目を細めてこちらを見ている。
え? 今のでいいの???
どこが上達したのか自分では分からないまま、パパラチアダンス夜の部が始まる……
「待ってましたァ!」
客席から歓声が上がる。昼は一般人や子供の観客が多いが、朝や夕方は冒険者っぽい人の方が多い。これから徹夜でダンジョンに潜るんだろうか?
客席には、午前中にラーメンを食べに来てくれたあのふたりもいる。今回は私服のままだ。
あ、魔法使いのキレイなお姉さん——ステラが手を振ってる。筋肉イケメンのラヴィも親指を立ててる。(ふたり共、「さん」は不要!との事)
わざわざ見に来てくれたのかな?
知り合いが見てると思うと照れるなぁ。
タン、タン、タタンン、タン、タタン……
軽く拍子を取るBGMと、音もなく跳ねる猫達。
躍動感あふれる猫達を見ていると俺の身体にもリズムが染み込んでくる気がする。
うん。上手いとか下手とかじゃなく、今の自分にできる最高のダンスをしよう。
マッツオだってほめてくれた。
ステージでのダンスを楽しもう。
昼からずっと練習をしていたから疲れてるけど、その分、体がスムーズに動く。
昨日よりもなめらかに、リズムに乗って軽やかに。
おどれ おどれ Dancing
空の向こう Facing
見つめる先
燃える花咲き
こころ火が着き
踊るパパラチア!
ふう、と意識が引き込まれる。
いつの間にか、光の渦の中で踊っていた。
手が、足が、体や顔の向きが、光の色と速さを追いかけるように、いや、流れる光とダンスするように動く。
気がつくと大歓声の中、猫達とフィニッシュポーズを決めていた。
「お前、本番に強いタイプだったんだな」
冒険者達を送り出した後、ステージ裏の休憩室で薬草茶を飲みながら、リトが少し呆れた様にいう。
「あれで良かった?」
「合格」
「ゆうき、すごいすごい!」
「ちゃんと光が飛んでたナ」
「ほんと?」
今日は観客にいつもより多くのバフが掛かったらしい。
俺だけの成果ではないだろうが、ステージが盛り上がった結果、二重三重にバフがかかった人が続出したようだ。
ラヴィ達なんか、ダンスを見に来ただけで今夜は冒険を休む予定だったのに、もったいないからと言って急いでダンジョンに出かけて行った。
「今日はもうクタクタだ」
「パパラチアダンスを最後まで踊り切ったからな」
「ん?」
その言い方、もしかして…
「もしかしてパパラチアダンスって、振り付けは何でも良くて、リズムに合わせてテンポよく踊り続ければいいの?」
猫達はいっせいに俺を見て、言った。
「「「 そうだよ? 」」」
当然!、それが何か?、という顔。
体中の力が抜け、俺は膝から地面に崩れ落ちる。
…………それ、早く言ってよ。
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