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第2話 ぐるぐる★前奏曲(プレリュード)
冒険者ギルドへ
しおりを挟む異世界で遠出するのは初めてなのでワクワクしたが、冒険者ギルドは、何とネコランドの中にあった。
そもそも、冒険者および冒険者ギルドというのは、ネコランドにあるダンジョンの為に作られたものらしい。
「外にはないんですか?」
「そうよ。ネコランドの名物みたいなものね」
「め、名物!?」
「どの国もダンジョンから手に入る資源は欲しいけどモンスターに責任を持ちたくないもんだから、ネコランドは独立した自治領扱いなの。それで治安維持とダンジョン対応を受け持つ冒険者という職と、それを取りまとめるギルドがあるのよ。ギルドは実質、国の政府機関みたいなものね」
「へー」
説明を聞きながらたどり着いた冒険者ギルドの本部は、古風な石と木材を使った重厚なデザインの建物で、まるで昔話の中から飛び出してきたかのような雰囲気を醸し出している。
ラーメン屋やカフェはかなり現代的なデザインなので、これはテーマパークとしての演出で、元は園内宿泊施設か何かとして作られたものなのかもしれない。入り口には立派な門があり、その上には冒険者ギルドのシンボルマークが掲げられている。
うん、見たことあったわこの建物。裏側から。
冒険者ギルドは、猫ダンスのステージから100mほどしか離れていない場所にあった。
さすがに自動ドアは無いのか、営業中を示すかのように扉は開け放たれている。
中に入ると、いかにも冒険者っぽい人達がたむろしていた。その向こうにはホテルのクローク風のカウンター。あそこでクエストとかを受けるんだろうか?
吹き抜けの天井からは大きなシャンデリアが吊るされ、きらびやかな光を放っている。仕組みは分からないが、シャンデリアや卓上ランプ以外にも天井や壁に光るパネルが設置されており、照明も充分だ。
壁際にはクエストを書いた票がずらっと貼られた掲示板。斜め奥へと伸びる渡り廊下の先にはギルドが運営している酒場兼食堂があるようで、案内用の看板がかかっている。ちょうど夕飯から晩酌の時間帯で、時折、楽しそうな声が漏れ聞こえてくる。
「あら、ラヴィ。ステラも。こんな時間に珍しいわね。クエストの確認?」
受付カウンターにいるスタッフらしい女性が顔を上げる。
ラヴィ達の冒険スタイルは夜型で、いつもこの時間帯はダンジョンにいるか、さもなきゃ冒険明けのオフで遊んでるかなのだ。
「コイツの登録をしに来たんだ」
「あら。最近、ステージで踊ってるコよね? 人間? それともパパラチアキャットの親戚?」
ステラと似たような質問。俺ってそういう目で見られてたのか。
「ステージに上がれる人間だってんで園長が雇ったらしい。ちょっとダンジョンに連れてくから念のために冒険者の登録を頼む」
「了解」
受付のお姉さんが手元の水晶板を操作して、出てきたチケットを俺に渡す。
「2階の待合室で待ってて。準備ができたら受付番号で呼ぶから」
「どうも」
「そこの階段から上がって右だ。じゃ、俺たちはクエスト票のチェックと情報収集してるから」
え? ついてきてくれないの!?
いや、そうだよな。もう子供じゃないんだし。
身分証の登録って事は個人情報ダダ漏れになるし。
日本でならこんなに動揺しなかったと思うが、ここは異世界。日本とは常識が違うかも、対応できない事があるかも、と緊張する。
恐る恐る階段を登り、待合室らしいドア無しの部屋に入る。
奥側の壁にはドアが3つ。その向こうが個別対応のための部屋なのだろう。
すぐに、
「次の方~」
と呼び声。左のドアの表面に浮かぶ数字。番号……あ、俺だ。
待機人数ゼロだったようだ。
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