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第3話 ダンジョン★ビートが聞こえる
ぐるぐる探し
しおりを挟むうなだれるイェロンの肩に静かに手を置くラヴィ。
「気にするな。卑怯だから責めてるんじゃなく、責める口実に使ってるだけだ。同じパーティに居ても、それぞれの目的が違って解散することはよくある」
「でもまあ、わざわざ来るのは割に合わねえな。こっから先ぁ、何にもねえからなぁ」
「ありますよ! ここは魔法植物の宝庫なんです!! まだ分類を終えてない株が山ほど……」
「あーはいはい、わかったわかった」
「なあ、それよりも天然モノのぐるぐる、早く見たい。どんな風になってるんだ?」
「うん、行こう。こっちだ」
ダンジョンに入ってから初めてイェロンが笑顔を見せた。
「おっわ!」
細い小道の突き当たりを曲がると、その奥には雑多な植物が生い茂っていた。
ジャングルってこんな感じなんだろうか?
ここら一帯には通常とは違う魔力の分布があり、その影響なのか、魔法植物の新種や突然変異種が次々と見つかるらしい。
「宝箱が出るとか、高級ポーションの材料になるようなレア薬草でも生えてれば付き合ってくれる冒険者もいたんでしょうけど、……あ、コレ、引っ張ってもらえる?」
「このツタ、見たことある。あちこちに生えてるやつ」
「普通の【ダンジョンヅタ】。珍しくないし薬効もないから抜いていいよ。すぐ増えるんだ。ぐるぐるは奥に生えてるから通れるようにしないと。でも、他の草を巻き込まないように注意して」
「りょーかーい」
イェロンの指示で何種類かの草を抜いていく。俺はモンスター相手の戦力にならない代わりに採取時の労働力だ。
ラヴィ達は曲がり角の辺りで見張りを兼ねて休憩している。
と、やかんを手にしたロックがやって来た。
「おう、ガキども。ステラが茶ぁ飲みたいってから、そこのマジカルミント分けてくれや」
「いいですよ。ユウキ君、そこのひと山、あげちゃって」
「ん? どれ?」
「青っぽい、柔らかい葉っぱの……さっき抜いたやつ」
「コレか。名前がマジカルって、ポーション作ったりはできないの?」
「薬効はあるけど効き目が穏やかで、魔法薬には向かないんです。でもおいしいからハーブティーにするといいですよ」
「へー。俺も少し持って帰ろう」
しばらく繁殖力の強い植物をむしり取りながら進んでいると、急に生えている種類が変わった。見たことのない色や形。文字が書かれた札が下がってる枝もある。ここから先がイェロンの野外研究の現場のようだ。
その中で目を引いたのは、奥のガケに這い登るようにツルを伸ばしている一群。細長くてシワのある白っぽいキュウリのような実がいくつもなっている。
「もしかして……」
「ふふふ。ユウキ君、とうとう見つけましたね?」
「じゃ、アレがぐるぐる!?」
イェロンはにっこりと笑うとナイフで実を1つ切って渡してくれる。
切り口にはナルトの赤い渦巻き模様がはっきりと見える。
「採取してすぐは青臭い水分が出ますが、一度塩ゆでしてから冷蔵すると良いそうですよ」
「よーし、集めるぞー!」
完熟一歩手前の質の良いものを選別して採取する。
「こっちの実は?」
「よく見て。シワがあまりないでしょう? 中の模様もありません。似てるけど別の種類なんです。これは『悪魔のソーセージ』と呼ばれる植物で、完熟すると生臭くなるけど、若いうちなら一応、食べられます」
「へー」
「そいつぁ、焼くと結構うまいぜ」
と、採取を手伝ってくれてるロック。この人、何でも焼いて食った事があるのかな…?
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