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第三章

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 しばし呆然と自分達のしでかした光景を眺めた後、これ以上の被害は出さないと誓いながら南門の前方へ大きく弧を描きながら疾駆する。先程全力疾走をした感触から、それなりの速度で流す感じに力を込めた。
 十分も経たない内に再び魔物の群が見えて来たので遠方から火の玉を生み出し、キャッチボールの容量でその火の玉を投球する。全力には程遠いが、走り込んでいたこともあり火の玉から指を離す直前に破裂音が響いたが聞かなかった事にしておこう。
 それとは別に、美咲は水を生み出して矢のように放っていた。針のように細長いそれは美咲の意志なのか途中で無数に分裂し、面での制圧にかかる。
 俺達の先制攻撃で魔物の群の過半が地に倒れ伏した。それでも赤い月の影響か、魔物の群は一心にファルムットを目指している様は意志のない機械の軍勢かと見紛う程。
 それでも、魔物の群を率いていたであろう大型の人型は倒れたみたいだから後は任せても大丈夫だろう。
 次いで向かうのは西側だ。西側は同じ様な距離に同じ様に人型が進軍しているようだが顔ぶれが東と南とは少し違うようだ。
 馬の下半身に人の上半身、それに牛の頭と美咲が言うには合成獣(キメラ)に近い魔物が多いように見える。前述の魔物の他には牛の様な二本足で立つ角を持った猿や、鳥の下半身に人間の上半身、両腕が鳥の羽になった魔物等も見受けられた。
 横合いから駆け抜けながら首を狩っていくと、俺達に気付かないまま逆側まで通り抜けられた。その間に狙われるかと思ったがそんな事はなく、突然倒れた魔物を一瞥もしないまま乗り上げ、踏みつぶしていく。
 粗方めぼしい魔物は屠った後だが、魔法による攻撃よりもやはり相手の損害が少なかったので、今一度往復して数を減らすことにした。
 地上の魔物は直剣と硬鞭を用いて数を減らし、飛んでいる魔物に対しては魔法で作った土や金属の礫で対処した。
 過半とはいかずとも、それなりに数を減らし終えたら北へ移動した。
 北に来てもやることは変わらず。構成も西門とほぼ一緒だったので南門と同様の攻撃で対処した。
 ここまで来るのに半刻ぐらい経っていたので、東門に回って遅めの昼食を摂ることにした。


 今日の昼の献立はキノコで出汁をとったお汁でマルディンの肉を煮込んだスープと、携帯食料用の塩がガツンと利いた干し肉のサンドウィッチ。やや軽食だが、身重だと動きが鈍るからこれぐらいが丁度良いだろう。


 それからは、その日の内に四回、次の日に四回の襲撃があった。回数としては例年より少なかったらしいが、俺達が倒した魔物も含めると大分大規模だったらしい。俺達が居なければ東門が突破されていたらしい。
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