異世界探訪記

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百九日目。ストレイフーズにて

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百九日目。
 朝起きると目の前が真っ暗で腹が重い。頭にマリーベルが覆い被さり、腹に子ライオンが丸まっていた。
 子ライオンにはシュミットと名付けた。意味はなく、語感だ。
 ギルビットさんに聞いたら、雪山の白百合にそんな名前の物が有るらしい。見つけたら幸運が舞い込むと言われる程希少だが、有名では無いらしい。

 前と左右は見渡す限りの平原で、所々丘があり、その先を覆い隠している。後ろの森は冗談のように一直線に森と平原を区別していた。向かう先のストレイフーズの上にはアイスクリームのような渦巻き状の雲が一つ。文句なく快晴と言えるだろう。

 背の高い雑草付近には兎や蛇が居るのだが、マリーベルとシュミットに注意を促すと二匹とも頷いた後に突撃。ややあってマリーベルが兎を、シュミットが蛇を咥えて戻ってきた。

 君たち頷いたよねぇ!?

 昼過ぎにストレイフーズに到着。頭にマリーベルを、腕にシュミットを抱えていたら門番さんがぎょっとしていたが、マリーベルが手を振り、シュミットがなーおと一鳴きしたら籠絡されていた。門番さんが勝手に通行許可を出す前にアズラータさんが色々と説明して問題ないことにしていたが、大丈夫なのだろうか?
 アズラータさん曰わく、子供に弱いからこっちの門番に立って貰っているそう。
 優秀ではあるから東門が混雑したときにはここを閉じてそちらへ応援しに行っているらしい。
 彼のおかげで攫われた子供たちが奴隷に売られなかった事も何度かあり、そういった場合、関与した組織は一週間の内に壊滅するのだそう。
 ロリコンだが、ロリコン以前に紳士だと言う評価はダッシラーさん。
 因みに、初めてここに来たとき色々教えてくれた門番さんだ。

 ラスティー達は自宅へ戻ったが、その外はアズラータさんが領主邸に招待したのでそちらへ。
 行き先を聞かれたが、まだ決まってないと答えると暫くはこの国に留まっていて欲しいと言われた。
 そこで機先を制したのはメヌエットさん。
 これまでこの国には守って来られなかったし重税で堪え忍ぶのも辛かった。しかし、あの徴税官の不正が発覚してからの態度を見るに、エルフ族はここを里として見ても良いのではないかと言う考えに変わってきていると言うような内容を述べた。
 それにはアズラータさんも肩の荷が下りたような表情をした後、表情を引き締めて「これからも我々から歩み寄れるよう努力は怠らない」と返していた。
 ギルビットさんとメヌエットさんは「その態度が続く限り、出来る範囲でこの領地に協力する」と言葉に出し、ベルデットさんから預かった書状だとして懐からアズラータさんに手紙を渡した。
 アズラータさんはそれを読むと頭を下げて礼を述べていたのでそれ程の事が書かれていたのだろう。
 佳きかな佳きかな。
 と、のほほんとしていたらアズラータさんは俺に向き直って「貴公はどうする?」みたいな事を聞いてきたのでエルフ族の集落に所属しているからそれに従うと言ったかも知れない。唐突に話を振られてテンパってしまった。後でギルビットさんに聞いたらそんな内容を言っていたと確認できたので胸をなで下ろしているところ。

 夕餉はラスティーが出張ってきて腕を振るってくれた。ラスティーの店で作ってくれたらしく、少し冷めていたが逆に食べやすくなっていた。
 彼女自身は彼女の店が久々の開店で客が押し寄せているらしい。
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