凡骨の意地情報局

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ブレストパスト抗争

数日前の出来事

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夏の暑さがほんの少し弱まってきた夏月九十日末日
 この日、午前中に卒業式を迎えた少年少女達は晴れて大人の仲間入りをし、夕方から催される合同のデビュタントに参加していた。
 その中で現れたアシュリーは婚約者であるファスタン・ピート・パストミリにエスコートされず、何故か父親がエスコートしていた。
 ここ一年、ファスタンは北方の暴れ馬を完全に乗りこなしたと吹聴して回り、「俺のやることにアイツは文句を言わない程俺に心酔している」と自慢気だった。
 そんな事を思い出しつつファスタンを探せば、学院内では見たことが無い美女をエスコートし、周りには学院内で侍らせていた少女たちを配置して愉快そうに談笑していた。

 気の毒に……。

 このパーティー会場に集まったほぼ全ての参加者はアシュリーに同情の念を送ったが、外面を取り繕って気にしないようにしている。

 エスコート相手と踊るファーストダンスの後、アシュリーの父親は心配そうにしていたが、アシュリーと何事か話した後、パーティー会場から去っていった。
 それを見送った後、アシュリーは一応壁の花になったが、同じく壁の花になった令嬢と話すばかりで一向に踊ろうとはせず、ファスタンを待っているのだろうと想像させた。

そんな折り。
「アシュリー・フォン・ブレストマイズ!今日この時を持って婚約を破棄する!」
ざわつく会場を静寂で包み込む一言が発せられた。
 見ればファスタンが壇上に上り、今日エスコートしていた女性の肩を抱いている。
「アシュリー、貴様は、いや、貴様等家族はとんだ外道一家だな!」
その文句から始まった演説は隣の女性がとある商会の会頭の一人娘で、それを邪魔に感じたブレストマイズ家が微に入り細に入り商会を潰そうと暗躍しているのだと言う。
 その所為でお金がなくなった彼女の家は入学金を支払えず入学を断念したそう。
 それからもブレストマイズ家の嫌がらせは続いていて、彼女自身も明日も知らぬ生活を送っているとの事。
「俺はそんな外道一家の一員には成らない!よってこれは正当な婚約破棄である!」
その言葉で締めくくられたファスタンの演説に、アシュリーは俯き震えていた。最後の一句の時などあまりにもショックで、自分で自分を抱きしめてさえ居る。
 言われた事柄に対して嘘か本当か、今、この場で確認する術はないが、アシュリー自身が言い返さない所を見ると本当なのかも知れない。
「そして、新たな婚約者を皆様に紹介しよう!ベーリック商会の一人娘、サラ・ベーリックだ!」
 そんな疑念をよそに、自分の演説にヒートアップしたファスタンは勢いのまま、周囲に隣の女性を紹介する。「紹介しよう」の辺りでアシュリーは茫然自失の体で会場から去ろうとしていた。
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