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ブレストパスト抗争
助言
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「――と言う事が有ったんですよ!」
すっかりリラックスした調子のアシュリーは数日前に有った出来事を饒舌に語っていた。ハリスが手に入れていた情報と内容は変わりないが、印象がぐるりと違う。
やはり、当事者から話を聞くのが一番いい助言を渡せるな。
ハリスはそんな事を思いつつ、それから今まで怒りで血が上り、久々に激情に囚われたことで寝込んでしまった事をアシュリーから聞き出した。
恥ずかしそうに寝込んでしまった事を告白するアシュリーに、ハリスはつい溜息を付いてしまう。
事件の当事者で、失意の下で寝込んでしまっていると巷では噂になっていたためほんのちょっと心配していたのだが、寝込んだのは次の日の午前中くらい。
その後は怒りにまかせ、人目の付かない中庭で結界を全力で張らせつつ第四級放出魔法をぶっ放したり、第五級放出魔法をぶっ放したりとやりたい放題やっていたらしい。
悪戯を解禁して第五級設置魔法を使ったと笑って言われた日には、関係者の苦労が透けて見えて涙を禁じ得ない。
思わず止めて差し上げろと言葉を挟むと、あっけらかんと「メイドや執事には好評なんだけどなあ」と言ってのけられた。
何でも、極々小規模の第五級設置魔法は掃除が楽になるとブレストマイズ家の中では評判らしい。これを応用した掃除機なる魔道具も開発中なんだとか。
「それで、此処に来た理由なんですけど……」
そろそろ話しが出揃ったかな?そうハリスが思い始めた頃、此処に来た当初の緊張した面持ちで居住まいを正すアシュリーの様を見てハリスも居住まいを正す。
「これからどうしようか考えられなくて。父親に相談したらここを紹介されました」
聡明で名高い彼女であっても、ショックを受けた後ではやはり考えが纏まらないようだ。
激情に身を任せていたここ数日はまだ良かったが、時間が経って自分の置かれた立場に不安が鎌首をもたげたのだろう。
一応、ここに来る前に父親のブレストマイズ家当主、ハーベスター・ララスト・ブレストマイズに相談してみたのだが、彼は答える代わりにここを紹介したと言うのがここに来た経緯だ。
「そうか。とりあえず、私の所に集まって来ている情報を踏まえて言える事は幾つかある。
先ずは、元婚約者、ファスタン・ピート・パストミリの扱いだ」
ハリスがそう言うと、アシュリーはファスタンという人物名に露骨に顔をしかめる。
「まぁ、一般的に考えられるのは三つ。『放っておく』か、『見返す』か、『振り向かせる』のいずれか……露骨に顔をしかめるな。一般論だ。一般論」
最後の選択肢に、言外に拒否を匂わすアシュリー。
後の事を考えるとハリスにとってその感情自体は好ましい物であった。しかし、美女に顔を顰められたのも事実で居心地はすこぶる悪い。
「放っておくか見返すかはこれからの俺の話を聞いた後、その話が事実かどうか自分で確認した後決めると良い。
即断即決は美徳ではあるが、軽率な事は否めない。
極力、考える時間を自分に課して実行するのが良いだろう」
そこで話を区切り、冷えてしまった緑茶でハリスは喉を潤した。
アシュリーとマーシェリーの前には新たな熱々の緑茶が配られていて、二人もハリスに習って喉を潤す。
「ファスタン・ピート・パストミリ。
私たちが掴んでいる情報としてはベーリック商会と共謀して幻覚作用、覚醒作用があり依存性の極めて高い薬の製造、運搬、販売、乱用促進を行っている。
ファスタン自身は薬の製造を統括し、ベーリック商会は運搬と販売。
父親のアーヴァン・ヤー・パストミリは貴族社会内で乱用促進の役目を担っている。
ブレストマイズ卿は端々の情報を掴んでベーリック商会の販路を潰して回っている様だが、パストミリ卿とベーリック商会が繋がっている事は掴んでいないな」
唐突に告げられた元婚約者の真実。この三年、信じて疑わなかった事がこうまで裏切られていたとは。
「ブレストマイズ卿の良いところは仲間を信じる事だ。
だが、それのおかげで今回は足下を掬われそうになっているな。
彼は仲間になるまではしっかり疑ってかかるが一度仲間になると信じて疑わない。
パストミリ卿とベーリック商会が繋がったのはアシュリーとファスタンが婚約した後。
つまり、ブレストマイズ卿が仲間として認めた後だ」
続いて出された話に、アシュリーは自身への落胆の念が渦巻いた。
婚約した後という事は学院生活中にファスタンとベーリック商会が接触したという事であり、アシュリー自身が気をつけていれば防げたかもしれないという事でもある。
彼女はそう思った。
「アシュリー、君自身が気を付けていれば防げたかもしれないと思い上がるのはやめた方が良い。
四六時中引っ付いて離れなければただ単にファスタンから嫌われていた。
これは彼自身が引き起こした問題で、アシュリーには何の落ち度もない。それだけは君自身の中心に据えておきなさい」
その言葉によって、自責の念に駆られそうになるアシュリーの思考がほんの少し晴れた。
こう言う相談は多いのかと聞きたくなったほどタイミングが良かった。
すっかりリラックスした調子のアシュリーは数日前に有った出来事を饒舌に語っていた。ハリスが手に入れていた情報と内容は変わりないが、印象がぐるりと違う。
やはり、当事者から話を聞くのが一番いい助言を渡せるな。
ハリスはそんな事を思いつつ、それから今まで怒りで血が上り、久々に激情に囚われたことで寝込んでしまった事をアシュリーから聞き出した。
恥ずかしそうに寝込んでしまった事を告白するアシュリーに、ハリスはつい溜息を付いてしまう。
事件の当事者で、失意の下で寝込んでしまっていると巷では噂になっていたためほんのちょっと心配していたのだが、寝込んだのは次の日の午前中くらい。
その後は怒りにまかせ、人目の付かない中庭で結界を全力で張らせつつ第四級放出魔法をぶっ放したり、第五級放出魔法をぶっ放したりとやりたい放題やっていたらしい。
悪戯を解禁して第五級設置魔法を使ったと笑って言われた日には、関係者の苦労が透けて見えて涙を禁じ得ない。
思わず止めて差し上げろと言葉を挟むと、あっけらかんと「メイドや執事には好評なんだけどなあ」と言ってのけられた。
何でも、極々小規模の第五級設置魔法は掃除が楽になるとブレストマイズ家の中では評判らしい。これを応用した掃除機なる魔道具も開発中なんだとか。
「それで、此処に来た理由なんですけど……」
そろそろ話しが出揃ったかな?そうハリスが思い始めた頃、此処に来た当初の緊張した面持ちで居住まいを正すアシュリーの様を見てハリスも居住まいを正す。
「これからどうしようか考えられなくて。父親に相談したらここを紹介されました」
聡明で名高い彼女であっても、ショックを受けた後ではやはり考えが纏まらないようだ。
激情に身を任せていたここ数日はまだ良かったが、時間が経って自分の置かれた立場に不安が鎌首をもたげたのだろう。
一応、ここに来る前に父親のブレストマイズ家当主、ハーベスター・ララスト・ブレストマイズに相談してみたのだが、彼は答える代わりにここを紹介したと言うのがここに来た経緯だ。
「そうか。とりあえず、私の所に集まって来ている情報を踏まえて言える事は幾つかある。
先ずは、元婚約者、ファスタン・ピート・パストミリの扱いだ」
ハリスがそう言うと、アシュリーはファスタンという人物名に露骨に顔をしかめる。
「まぁ、一般的に考えられるのは三つ。『放っておく』か、『見返す』か、『振り向かせる』のいずれか……露骨に顔をしかめるな。一般論だ。一般論」
最後の選択肢に、言外に拒否を匂わすアシュリー。
後の事を考えるとハリスにとってその感情自体は好ましい物であった。しかし、美女に顔を顰められたのも事実で居心地はすこぶる悪い。
「放っておくか見返すかはこれからの俺の話を聞いた後、その話が事実かどうか自分で確認した後決めると良い。
即断即決は美徳ではあるが、軽率な事は否めない。
極力、考える時間を自分に課して実行するのが良いだろう」
そこで話を区切り、冷えてしまった緑茶でハリスは喉を潤した。
アシュリーとマーシェリーの前には新たな熱々の緑茶が配られていて、二人もハリスに習って喉を潤す。
「ファスタン・ピート・パストミリ。
私たちが掴んでいる情報としてはベーリック商会と共謀して幻覚作用、覚醒作用があり依存性の極めて高い薬の製造、運搬、販売、乱用促進を行っている。
ファスタン自身は薬の製造を統括し、ベーリック商会は運搬と販売。
父親のアーヴァン・ヤー・パストミリは貴族社会内で乱用促進の役目を担っている。
ブレストマイズ卿は端々の情報を掴んでベーリック商会の販路を潰して回っている様だが、パストミリ卿とベーリック商会が繋がっている事は掴んでいないな」
唐突に告げられた元婚約者の真実。この三年、信じて疑わなかった事がこうまで裏切られていたとは。
「ブレストマイズ卿の良いところは仲間を信じる事だ。
だが、それのおかげで今回は足下を掬われそうになっているな。
彼は仲間になるまではしっかり疑ってかかるが一度仲間になると信じて疑わない。
パストミリ卿とベーリック商会が繋がったのはアシュリーとファスタンが婚約した後。
つまり、ブレストマイズ卿が仲間として認めた後だ」
続いて出された話に、アシュリーは自身への落胆の念が渦巻いた。
婚約した後という事は学院生活中にファスタンとベーリック商会が接触したという事であり、アシュリー自身が気をつけていれば防げたかもしれないという事でもある。
彼女はそう思った。
「アシュリー、君自身が気を付けていれば防げたかもしれないと思い上がるのはやめた方が良い。
四六時中引っ付いて離れなければただ単にファスタンから嫌われていた。
これは彼自身が引き起こした問題で、アシュリーには何の落ち度もない。それだけは君自身の中心に据えておきなさい」
その言葉によって、自責の念に駆られそうになるアシュリーの思考がほんの少し晴れた。
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