『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第-1章 迷星の時量剣師(めいせいのときはかし)

第28話 エルフの民

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咄嗟に両腕で顔をガードする。
ロードの放った火の球は俺の腕に触れると轟音を立てて爆発した。
爆風がコートを激しく揺らし、熱風で目が乾燥するが、熱さも痛みもない。
リングの効果か!

爆煙で周囲は目視出来ないが、ロードは俺を倒したと確信して雄叫びを上げた。
爆煙の中でも、俺の眼はゴブリン達の様子をハッキリと視ていた。
ロードと俺の間にゴブリンはいない。
爆発に巻き込まれて何匹か逝ったようだが、まだ消滅はしていない。

疾風!
過去一番の踏み込みでロードの懐に飛び込むと、バスタードソードを全力で突き出した。
踏鳴!
加速した刃はロードの胸を貫通しロードの動きが止まる。
虎切!
ロードの胸に刺さったバスタードソードを強引に右方向に横薙ぎにする。
ロードが倒れると周囲にいたゴブリン達の動きが止まった。
それまで感じていたゴブリン達の気配は急速に薄れてゆき、ドームの中に俺だけが取り残された。

終わったのか…
いままでゴブリンの大群を斬り捨てていたとは信じられない程、無機質な香りが漂う中、俺はバスタードソードを鞘に納めた。
戦闘の直後でまだ感覚が昂っている。
集中しなくても周りの様子が手に取る様に分かる。
アヤメが全力で駆け上がってくる様子が視える。
エッジはその後をのんびりと歩いて来ている。

ドームの外に出ると、街が一望出来た。
「こんな良い景色だったんだな…」
ようやく景色を楽しむ余裕が出来て、頬を撫でる風に目を細めた。
街を見下ろすと、二人の姿が視認出来る。
「ソウシー!」
息を弾ませてこちらに声を掛けてくるアヤメに手を振って応える。
「終わったのかのー?」
アヤメは大きな声でそう尋ねて来るが、終わったと確信したからこっちに来たのだろう。
親指を立ててアヤメに応える。

アヤメは俺の元まで駆けつけると、盛大に抱きついてきた。
「お主ならやってくれると信じておったぞ」
地面に飛び降りたアヤメは、両手で掴んだ俺の右手を乱暴に縦に振り回し、後ろに振り返った。
「お主にも随分世話になったの」
「いえいえ、姫君のお役に立てて光栄ですぞ」
エッジはうやうやしく首を垂れる。

「ちょっと行って来る」
アヤメがそう言うと、彼女の輪郭が歪み、姿を消した。
「精霊界か…」
「俗っぽく言うならパラレルワールドだな」
イマイチ分かっていない俺にエッジが声を掛けて来た。
「また胡散臭い話?」
「この世界は20の並行世界で構成されておる。 精霊界は我々の世界とは干渉せず、しかし重なり合っておる世界だ、テレビの電波は同じ空間を共有しておるが、画面に映し出されるのは固有のチャンネルだけだろう? それと同じことだ」
いや、当たり前みたいに言ってるけど、さっぱりわからん。
「反物質と言われる世界もその並行世界にある。 その力と干渉させることで神聖魔法が生まれるんだ、コレを理解すると魔法がもっと楽しくなるぞ」
エッジが真面目な話をしている…
今のところ、魔法には全く興味ないから良いけどね…

そんな話をしていると、アヤメが再び目の前に姿を現した。
アヤメに続き、エルフ達が次々と姿を現す。
俺達の周りだけではなく、街の中にもちらほらと現れて来ている。
「ソウシ、待たせたの」
アヤメがそう言うと俺の前に片膝をついて頭を下げた。
「いやいや、姫様がそんな風に頭を下げるものじゃないだろ」
慌ててアヤメに声をかけるが…
「そなたがソウシ殿か、アヤメから話は聞いたぞよ」
女性の声が背後から聞こえた。
振り返ると、ドームの入り口にしっとりとした感じの美女が立っていた。
俺は直感した。
彼女が本当の姫様だ。

「いえ、困った時は助け合う、当然の事をしただけです」
俺はそう答えると、思わず片膝をついて頭を下げていた。
これが覇気というものなのだろう。
エッジも驚いた様子で頭を下げている。
本当にアヤメの事を姫君だと思っていたのだろう。
「礼をしたいところじゃが、ご覧の有様で今は持ち合わせが無いのじゃ」
姫様は心底申し訳なさそうにそう言うと、少し考え込む。
「お礼を貰うためにやった訳では無いのでお気遣いなく」
「そうか、今後何かあった時にはいつでも我を尋ねるがよい、エルフ一族で歓迎させてもらうぞよ」
姫様はそう言うと隣に控えていた従者に何かを耳打ちした。
モブっぽい従者ですら、とても整った顔立ちをした好青年だ。
従者は静かに頷くと、俺達の前に歩み寄る。
「これは親愛の証です。お受け取り下さい」
従者の手には小さな袋が乗せられている。
「これは…?」
お礼の品の中身を詮索するのは失礼と思いつつも、思わず尋ねる。
「姫様の加護を得た楠の種です。これを持っていれば同胞ならすぐに貴方だと分かるでしょう」
なるほど…
持っていれば良いのか。
従者から小袋を受け取り再び頭を下げる。
「ありがとうございます」
姫様が頷くのが気配で分かる。

「そなたがエッジ殿じゃな」
「は、お姫様もご機嫌麗しゅう」
エッジらしくない挨拶を返す。
「長年に渡りアヤメを助けてくれたと聞いたぞよ。アヤメはエッジ殿に従い礼をしたいと申しておる」
「もったいなきお言葉」
そこまで言ってエッジは顔を上げた。
「アヤメ殿が?」
「左様じゃ、聞けばエッジ殿は旅を生業としておるようじゃな」
「は、基本危険を伴わぬ旅でございますれば、お供など勿体ない事で御座います」
「良いのじゃ。アヤメ、エッジ殿が我らに充ててくれた時間に相当する分、存分に務めてくるが良いぞよ」
「ありがとうございます、姫様」
アヤメは一度立ち上がり、姫様の方に向き直ると、再び片膝をついて首を垂れた。

***

「いやぁ、しかし驚いた、まさかアヤメが影武者だったとはな」
突然の謁見を終え、緊張から解放されたエッジがいつもの調子でアヤメに絡んでいる。
エルフの姫君は俺達に酒宴を申し出てくれたのだが、エッジが急いでいると言って断ったのだった。
エルフの酒宴とやらに多少興味があった俺としては残念ではあるが、エッジの剣幕から察するにあまり居心地の良い宴ではないのかも知れない。
「我が姫であると言った記憶は無いがの」
「すっかり騙されてしまったな」
「勘違いしたお主が悪いの」
アヤメは悪びれる様子もない。

「それにしても本物の姫様はオーラが違ったね」
「うむ、気が付けば頭を下げていたな、あれほどの覇気は初めてだったな」
エッジも頷く。
「我らの姫様はこの世界が始まった時から生きていると聞くからの、格が違うの」
「え? この世界が始まった時からって何千年もって事?」
「うむ、創造神とも知り合いだとか」
アヤメが得意げに言うが…
「いや、創造神なんて本当にいるの?」
「居なかったら誰がこの世界を作ったというのかの?」
アヤメが当たり前の事を尋ねる困った子を見る目で俺を見る。
思わずエッジに助けを求めて目を向けるが…
「ことわざにも、言わぬうちにもう千年、と言うしな」
誰か、俺を助けてくれ…
創造神じゃ無くても良いからと、俺は神に祈った。

「もっとも、我々には人間で言うような主従関係など無いのだがの」
アヤメが突然とんでもない事を言い始める。
「いやいや、お姫様の元、がっつり主従関係にあったろ」
ややツッコミに疲れてきてはいたが、やはりツッコまずには居られない。
「我らのは役割分担というものだの、指を動かしたとき、脳と指は主従関係にあると思うかの?」
「ん-、いや、えーっと…?」
屁理屈なのか道理なのか、もう訳が分からない。
「もちろん優先順位というものはあるが、それは役割の違いであり主従関係とは無関係なんだの」
「そっか、うん、完全に把握した。もう大丈夫だ」
何が大丈夫なのか自分でも良く分からなかったが、良く分からないのだけは理解できた。

「それで、この先どうするかの?」
アヤメの依頼を片付けた所で、今後のプランをエッジに確認する。
「予定通りこのままオオフラを目指す、オオフラに到着する頃には夜になっているだろうから明日はゆっくり休んで、タケベ、トガノオでそれぞれ一泊、そしてモズに到着するまであと4日といったところだな」
エッジが言う地名はどれも聞き馴染みが無いものばかりで大体どの辺かも見当がつかない。
俺は生前、愛知県の知多エリアに住んでいたからこの辺の地理にはあまり詳しくないのもあるが…
「アヤメはそんな遠出して不安にならないのか?」
「お主、我を子供と勘違いしておらんかの?」
確かに、そう言われれば彼女は俺達よりずっと年上だった。
エッジとアヤメのコンビをぱっと見た感じでは幼女を連れ歩く不審者なのだが。

「夜歩く事を考えたら今日はここで一泊させて貰えば良かったのに…」
エルフの酒宴にまだ未練のある俺にエッジが猛烈な勢いで首を横に振る。
「恐ろしい事を言うな、エルフ族は雑食だが基本は虫食だぞ」
エッジの言葉を何度か反芻してようやく理解に至った。
「って事は…」
「虫をつまみながら酒を吞めるか?」
「あ、俺無理」
「そういう事だ」
「動物を切り刻んで食べるなど我らには恐ろしくて出来ぬからの」
アヤメは目を逸らしてそう告げた。

エッジは馬車を急がせて山道を登っていく。
街道の両脇には森林があり、日が沈めばかなりの暗闇になりそうだった。
馬の蹄の音が軽快に響き渡る。
紅葉が進む木々に目をやりながら種族の違いについて想いを馳せる。
「でも、虫なら良いの?」
俺はふと気になってアヤメに尋ねた。
「虫はそもそも食料となる為に存在しておるからの」
「いや、そんな事は無いでしょ…」
「食物連鎖という言葉を知らんのかの?」
「あぁ、まぁ確かに…」
「成虫は子孫繁栄の為だけにあの姿になるだけで硬くてマズイ、食べるのは幼虫だけだの」
要するにイモムシ的なアレか…
「トロトロクリーミーな奴は人間にも好評だが、土臭い奴が我は好みだの」
「あぁ、やめて、想像したくない」
「なんだ、お主から話を振ってきた癖に」
「それじゃ、お肉は食べないと?」
「いや、食肉加工してあれば問題無いの」
「言っただろ、雑食だと」
エッジが御者台から口を挟んできた。
そういえば朝食では普通に同じ物を食べていたな。
「食べる為とはいえ、動物の体を切り刻むとは恐ろしい事だの」
そう言うとアヤメは身体を震わせた。


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