『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第0章 神在月の占い師(かみなきせかいのうらないし)

第43話 密室殺人

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甲板に出ると、月明りに照らされた甲板の上に座り込む船員達の姿があった。
「大丈夫か?」
船員の一人に駆け寄り声を掛けると、コクコクと頷いた。
「何があったの?」
ティファが尋ねると、船員が腕を上げて暗闇を指差した。
月明りが島の雑木林を淡く照らして島の方は若干明るいが、海の方を見ると吸い込まれそうな程の暗闇に沈んでいる。
船員の指した方には海があり、暗闇には何もない。
念のために船員の指差した甲板の縁から下を見下ろしてみると、足場が解体されて船底に押し寄せる波が見えた。
そのまま顔を上げて行き空まで見上げるがやはり何も見えない。
「特に何もないね」
「そんな馬鹿な」
俺の言葉に反応したのはまだ若そうな船員だった。
「俺達全員見てるんだ、間違いない」
老け顔の船員も自信満々にそう言うが。
「うん、信じるけど、もう誰もいないよ」
そう言って俺が指差す暗闇を船員達は呆然と見つめていた。

ラナの遺体が心配だとアイリスが言うので俺達は再び最下層の倉庫に戻る事にした。
階段を降り切る前に喧噪が聞こえて来た。
嫌な予感がして急いで倉庫に向かう。
「今度は何?」
ティファが倉庫に向かって声を掛けるが、男達はそれどころでは無い様子だった。
倉庫の中に目をやると、床にうずくまり激しく嘔吐しているオリオンの姿があった。
「オリオンが検死の為にハリムの身体を調べていたんだが急に…」
ラシードがオリオンの背中をさすりながら答えた。
「あれ?」
ハリムとオリオンの間の床に見た事のある物が転がっていて、それを見たアイリスが声を上げた。
「それは、ラナちゃんが砂浜で拾ったやつ?」
ティファもそれに気付いて声を上げた。
ラナが大切そうに持ち帰ったあの貝だ。
「砂浜の小屋に置いてあった筈なのに…」
アイリスが不審そうな視線を船員達に送り、それに気付いた
「いやいや、ハリムのポケットから出て来たんだ」
トーレスが言い訳がましくそう言うが。
「オリオンさん!」
トチローの悲痛な声が倉庫に響き渡った。

オリオンの遺体がハリムの遺体の隣に並べられた。
「船長がいない間に3人も…」
トチローはオリオンの遺体に毛布を掛けながら呟いた。
留守を預かる者としての責任を感じているのだろうか。
「トチローは管理者じゃないんだからあまり気にするな…」
人が死んだのに『気にするな』というのも変な話ではあるが、肩を落とすトチローに掛けるべき他の言葉が思い付かなかった。

「何故これをハリムさんが…?」
俺は床に転がる貝に手を伸ばす。
針で刺されるイメージ!
俺は咄嗟に手を引いた。
久しぶりに感じた、危険が視える能力。
貝は何事もなかったようにそこに落ちている。
──拾ったラナ、何故か持っていたハリム、そして検死の際に触れたであろうオリオン。
一連の死にはこの貝が関わっている可能性が高い。
「どうしたの?」
俺の代わりにティファが貝に手を伸ばす。
「触るな!」
俺はティファの手を掴んで止める。
「ど、どうしたのよ?」
「コイツが犯人かも知れない…」
「あっ!」
アイリスとティファは俺の言わんとする事を理解したようで、短く声を上げた。

「うわぁあああ!」
倉庫の外、恐らく甲板の方から大きな叫び声が聞こえて来た。
「次はなに?」
ティファがキレ気味に顔を上げる。
目の前で人が3人死んだばかりなのだから気が立っていても仕方ない。
今度はトチロー達も一緒に甲板まで駆け上がる。
船首の方に人だかりが出来ている。
「今度は何が?」
俺は人だかりに声を掛けるが、返事を聞く前にソレが視界に入った。
無造作に転がる生首。
切断面から流れ出たのであろう血痕から、その生首が転がって甲板の縁にぶつかって跳ね返った様子が見て取れる。
ティファは目を見開いてその惨状を観察し、アイリスは両手で目を覆って嗚咽を漏らしている。
「船長!!」
トチローがその生首を見て叫んだ。

「一体何があった?」
甲板にいた船員達にそう尋ねたのはトーレスだった。
彼は探偵ムーブが好きなようだが、イマイチ役に立った試しはない。
「突然、『ゴン』って音がして、振り返ったら船長の頭が転がっていたんだ…」
さっきまで幽霊騒ぎをしていた若い男が青い顔で答えた。
「まるで高い所から落ちて来たみたいだった…」
言われて俺達は空を仰いだ。
当然何もない。
「こんなん、洒落にならねーぞ…」
トーレスは震える声をなんとか絞り出した。

「毒なら手違いという線もあった。 が、これは完全に…」
俺は言葉にして出すべきか悩んでそこで止めたが…
「何者かが殺した、という事ね」
ティファが頷いて続けた。
「そんな… リディアさんは? リックさん達はどうなっちゃたの?」
アイリスが涙目になって尋ねてきた。
「そうだ、アイツ等は一体どこに行った?」
アイリスの問いに反応したのはトーレスだった。
「こんな事が出来るのは冒険者しかいない、そういえば最初に二人居なくなってからおかしな事が起こり始めたじゃないか!」
トーレスがそこまで言うと船員達の目が俺達に向けられた。
「えぇ? 私達は何も…」
ティファは船員達の視線にしどろもどろになりながら両手を挙げて無抵抗の意を現す。
殺気立つ船員達からティファとアイリスを守る様に背後に庇う。

「待ってください」
そこで口を挟んできたのはトチローだった。
「みなさんも見たでしょう? 颯竢さんの強さなら我々など簡単に殺せてしまうのに、こんな手の込んだ事をする理由がありませんよ」
「そうかも知れんが、そうでは無いかも知れんだろう?」
トチローに反論したのはラシードだった。
「船長がこんな事になって、一緒にいた冒険者達は行方不明だ。 疑うなと言う方が難しいというものだ」
「そうだそうだ、そもそも冒険者という化け物と分かり合える訳が無いんだ」
「レオさん!」
トチローは俺達を化け物呼ばわりした若い船員に非難がましい声をあげた。
「いや、レオの言う通りもう限界だ。 悪いがお前たちは下の小屋で過ごしてくれ。 出航する時は声くらい掛けてやる」
名前は知らないが、歳もそこそこ行っているだろう船員が、俺達にそう告げた。

俺達が船を降りる時、船員達の野次でも聞かされるものかと覚悟していたが、大半は申し訳無さそうな目で俺達を見てきたのが印象的だった。
「本当にすみません…」
トチローはそう言って見送ってくれたが、俺達にしてみればそれで充分だった。

月明かりに照らされ、小屋はぼんやりと闇夜に浮き上がっていた。
小屋の中を覗くと真っ暗だったが…
『光りよ』
ティファが簡単な呪文を唱えると小屋の中は昼白色の光りに照らし出された。
小屋の中に誰か冒険者でもいないかと期待していたが、結局誰もいない。
「ラナも連れてきてあげれば良かった…」
アイリスがそうこぼすが…
「それはやめておきなさい」
ティファが優しい口調でなだめた。
「でも…」
「大丈夫… 現地人は私達の事、気味悪がっているから、悪戯しようなんて思わない筈よ」
なるほど、アイリスはその事をずっと気にかけていたのか。
「今日はもう遅い、休める時に休んでおこう」
俺は小屋の入り口付近の床に腰掛け、横になった。
アイリスとティファが話しをしているのを背中で聞きながら目を閉じると直ぐに意識が無くなった。



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