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スピネルとの合流
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結論から言えば、カルミネの不安は不安のままで終わった。少なくとも、ミアハの工房にアルバが訪れることは無かった。ミアハが見繕った物の中から、使い勝手が良さそうな指輪タイプの物を譲り受ける。代金を払おうとしたが、困っているなら持って行けとミアハが固辞したからだ。
「仲間だろうが。」
その一言に、感謝の気持ちでカルミネの心が少し癒される。
「感謝する。」
ミアハに見送られる中、カルミネはスピネルが居るだろう方向へ飛び立った。
「確か、ピオッジャ領からフィルマメント領の領都跡へ向かっているんだったな。」
カルミネは呟き、一度ピオッジャの領都方面へ飛んだ。そのままフィルマメント領方向へ続く道の上空を飛ぶ。探知の魔導具も融通してもらえば良かっただろうか、という考えが一瞬カルミネの頭を過るが、すぐに思い直す。
スピネルの手紙の内容を思い出し、発送された日付を元にどの辺りに居るだろうかと計算する。おそらく、急ぎの度では無さそうな文面だったから観光しつつになるだろうか。移動中なら見付けやすいが、町の中で散策などしていたら手間がかかるな、とカルミネは溜息を吐いた。
いくつかの町で目撃情報を集め、どうやらこの先の宿場町辺りに居るだろうと予測したカルミネは急ぎ、飛び立つ。もうすぐ日が沈む。宿に入られたら面倒だ、と飛翔速度を上げたことが幸いしたのか、宿場町近くの街道でスピネルの姿を見付けることができた。
「スピネル!」
彼の後方、少し離れた場所に降り立ったカルミネは彼を呼び止めた。
「お! カルミネじゃねぇか!」
聞き覚えのある声にすぐに振り向いたスピネルは、にかっと笑って応えた。彼の隣の黒髪の青年は不思議そうにカルミネに視線を向けている。
ああ、あれがスピネルの想い人か。見たことが無い、スピネルの太陽のような笑みにカルミネは息苦しさを感じつつ、想い人一人でこうも印象が変わる男だったのかと驚いた。
「すまんが、頼まれて欲しいことがある…」
二人の幸せを邪魔することになると、改めて気付いたが他にどうすればいいかも思い付かない。対策が思い付くまで我慢してもらおうと、意を決してスピネルに話しかけた。
「お? 珍しいな?」
「外で話すのは憚られるんだが…」
「横から済まない、それはおれも聞いて良い話なのだろうか?」
黒髪の男が首を傾げ、問う。
「あ、ああ… あなたには迷惑をかけるだろうから、面倒で無ければ同席してくれ。」
「分かった。それでは先に宿に移動しよう。外ではしたくない話なのだろう?」
二人の時間に割って入ったというのに、嫌な顔をせずにいてくれることにカルミネは逆に申し訳なさを感じた。いっそ邪魔だ、と罵ってくれたら無理やりにでもスピネルを巻き込めたのに、と考えてしまう。
「問題なければ、今日は同室にしないか?」
サプフィールと名乗った黒髪の男は、宿屋のカウンターでカルミネに提案した。願っても無いことだ。少なくとも、今夜は安心して眠れる、そこまで考えて気付く。
「その、邪魔ではないのか?」
そう言えばスピネルから恐ろしいまでの惚気が届くような間柄なのだ。目の前でいちゃつかれでもしたら目も当てられないではないか。
「おれは構わないが…」
「オレはサプフィールが良いなら。」
分かっているのか分かっていないのか、あっさりと了承するので一日くらい我慢してもらおうとカルミネは思い直す。
三人同室で部屋を取り、そのまま部屋に移動した。
「で、どうしたんだ?」
ベッドを割り当てたところで、スピネルがカルミネに改めて聞いた。
「暫く護衛をして欲しいんだが。」
「仲間だろうが。」
その一言に、感謝の気持ちでカルミネの心が少し癒される。
「感謝する。」
ミアハに見送られる中、カルミネはスピネルが居るだろう方向へ飛び立った。
「確か、ピオッジャ領からフィルマメント領の領都跡へ向かっているんだったな。」
カルミネは呟き、一度ピオッジャの領都方面へ飛んだ。そのままフィルマメント領方向へ続く道の上空を飛ぶ。探知の魔導具も融通してもらえば良かっただろうか、という考えが一瞬カルミネの頭を過るが、すぐに思い直す。
スピネルの手紙の内容を思い出し、発送された日付を元にどの辺りに居るだろうかと計算する。おそらく、急ぎの度では無さそうな文面だったから観光しつつになるだろうか。移動中なら見付けやすいが、町の中で散策などしていたら手間がかかるな、とカルミネは溜息を吐いた。
いくつかの町で目撃情報を集め、どうやらこの先の宿場町辺りに居るだろうと予測したカルミネは急ぎ、飛び立つ。もうすぐ日が沈む。宿に入られたら面倒だ、と飛翔速度を上げたことが幸いしたのか、宿場町近くの街道でスピネルの姿を見付けることができた。
「スピネル!」
彼の後方、少し離れた場所に降り立ったカルミネは彼を呼び止めた。
「お! カルミネじゃねぇか!」
聞き覚えのある声にすぐに振り向いたスピネルは、にかっと笑って応えた。彼の隣の黒髪の青年は不思議そうにカルミネに視線を向けている。
ああ、あれがスピネルの想い人か。見たことが無い、スピネルの太陽のような笑みにカルミネは息苦しさを感じつつ、想い人一人でこうも印象が変わる男だったのかと驚いた。
「すまんが、頼まれて欲しいことがある…」
二人の幸せを邪魔することになると、改めて気付いたが他にどうすればいいかも思い付かない。対策が思い付くまで我慢してもらおうと、意を決してスピネルに話しかけた。
「お? 珍しいな?」
「外で話すのは憚られるんだが…」
「横から済まない、それはおれも聞いて良い話なのだろうか?」
黒髪の男が首を傾げ、問う。
「あ、ああ… あなたには迷惑をかけるだろうから、面倒で無ければ同席してくれ。」
「分かった。それでは先に宿に移動しよう。外ではしたくない話なのだろう?」
二人の時間に割って入ったというのに、嫌な顔をせずにいてくれることにカルミネは逆に申し訳なさを感じた。いっそ邪魔だ、と罵ってくれたら無理やりにでもスピネルを巻き込めたのに、と考えてしまう。
「問題なければ、今日は同室にしないか?」
サプフィールと名乗った黒髪の男は、宿屋のカウンターでカルミネに提案した。願っても無いことだ。少なくとも、今夜は安心して眠れる、そこまで考えて気付く。
「その、邪魔ではないのか?」
そう言えばスピネルから恐ろしいまでの惚気が届くような間柄なのだ。目の前でいちゃつかれでもしたら目も当てられないではないか。
「おれは構わないが…」
「オレはサプフィールが良いなら。」
分かっているのか分かっていないのか、あっさりと了承するので一日くらい我慢してもらおうとカルミネは思い直す。
三人同室で部屋を取り、そのまま部屋に移動した。
「で、どうしたんだ?」
ベッドを割り当てたところで、スピネルがカルミネに改めて聞いた。
「暫く護衛をして欲しいんだが。」
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