転移勇者と転生聖母と駄女神  ~フィクションだからこそ輝いているということもあるんですよ~

渡邉 幻月

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Episode4. 勇者の訪れ

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 白井真人しろいまさと20歳。大学生の彼は目下引き籠り中である。なぜなら最愛の恋人にフラれてしまったからだ。母親には『そんなことで⁉』と言う心無い言葉をかけられ、布団からも出られなくなったところである。20歳にはまだまだ重大事件であることを、社会の荒波に揉まれてきた大人は忘れてしまっているに違いない。とまだ血を流し続けている(ように感じる)心を持て余しながら真人は考えている。
別に別れた恋人だけが女性ではないし、また新しい恋人ができることもあるだろうけど、そういう問題じゃない。引き籠りも2か月目に突入して、することも無くなった真人は取り留めも無いことを考えている。考えれば考えるほど、死にたくなってくるが、まだ死ぬのは怖いという理性も残っていた。
そんなある日のこと。ただぼんやり天井を眺めていると、急に浮遊感に包まれた。寝転んでいる状態で眩暈? と特に焦るでもなく考えていると目の前が暗転した。投げ遣りになっている真人はそれにも動じることは無く、抵抗もせず、為されるがままその状況に甘んじた。

「なんと言うか、覇気の無い男よのう。」
頭上から女性の声がする、と真人は思っている。眠気は無かったけど、寝落ちたんだろうか。いつもと違うし、昏睡ってやつなんだろうか。真人は身動ぎ一つせずただぼんやりと考えを巡らせていた。
「不遜なヤツじゃ。まあ良いわ。われはエニューオー。惑星ドミニオンの守護女神じゃ。おぬしにはな、われの守護する世界で勇者の役割を与えようぞ。取り敢えず一番栄えている国に送るので、魔王討伐に励むがよい。」
真人の顔を覗きこんだ女性が一方的にそう命じてきて、さすがに彼も面食らう。が、有無を言わせずエニューオーは英雄にそうしたように、真人にもデコピン一発でドミニオンに落とした。理不尽だ、と抗議をする間もなく真人は落下のあの浮遊感に襲われるのだった。

 ドミニオンの中央にある大陸には、大小問わず幾つもの国があった。この中央大陸が、ドミニオンで活気のある場所で、さらに中央に位置するメガロアルカこそ、富と権力が集中する帝国であった。世界の中心にある国らしく、様々な種族で構成されている。その初期はやはり種族差別などもあったが当時世界を守護していた秩序の神の下、和解の後共に生きる国へと制度など一新された過去がある。

 メガロアルカの皇都アルヒェ。皇帝の居城の他、エニューオーを祀る神殿もある。メガロアルカより北の方に宗教国家があるが、エニューオーはあまり好んでいない。理由は自身が二番手だからだ。創造神デミウルゴスを主神としている。今は、自分が守護しているというのに。そう言えば、前任の秩序の神も二番手だった。今は三番手になっているが。そんな理由で、自信だけを祀る神殿のあるメガロアルカへ、真人を送り込んだのだった。

 いつもと同じように、神殿の祈りの間でエニューオーに祈りを捧げていると、枢機卿以下全ての司祭にエニューオーの神託が下った。
『今から魔王に対抗するための力を与える。』と。
一同、女神の声に喜びを感じた。間を置かず女神が告げる。
『祈りの間の中央に、魔王に対抗できる勇者を遣わすので、力を合わせて魔王に立ち向かうがよい。』
エニューオーに感謝の祈りを捧げ、枢機卿たちはこの祈りの間の中央に視線を向けた。
まさに今そこに、神威が降り注いでいた。神威が一段と濃くなり、人影が確認できると誰ともなく感嘆の声をあげた。これで世界は救われる。誰もがそう信じた。
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