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全くの闇が、そこにはあった。目を閉じてみても変わらないくらいの、圧倒的な闇。それはどこにでも存在していて、けれどほとんど意識することはない。なのに、今はその闇の、なんという存在感だろう。
私たちは恐る恐るその暗闇の中へと歩を進めていく。いや、恐れているのは私だけだろうか。他の二人の様子は全く見えない。線路を探りながら歩く音に耳を澄まし、二人の気配に意識を集中する。
幸い雨が降り出してすぐに逃げ込むことができたから、あまり濡れずには済んだけれど、わずかに濡れた服から冷たい雨が体の中にまでゆっくりと染み込んできているような気がした。それは、このトンネルの中を満たす湿った冷気のせいかもしれない。
なんだか落ち着かなかった。他の二人の姿どころか、自分の手足さえも見えないのだ。夜、寝る時に明かりを全部消してしまうのが怖いと思っていたのは、いくつの頃までだったろう。その頃はまだパパもいて、親子三人、布団を並べて寝ていたのだ。あの頃、私が眠るまで二人が眠るのを許さなかった。
足元に落ち葉がなくなり、足で線路を探る作業はやり易くなったものの、歩みは相変わらず遅い。さっきまでよりも遅くなっているかもしれなかった。今、二人とはどれくらいの距離にいるのだろう。少年は私を追い抜いてはいないだろうし、私が少女を追い抜いてもいないと思う。同じ線路の上を歩いているのだから。たぶん、二人ともそんなに離れてはいないのだろう。
そんなこと、声を出して確かめてみればいいだけなのに、なぜだろう、どうしてだかそうすることができずにいた。この暗闇の静寂を破ってはいけない、そんな気がした。今までの私たちがおしゃべり過ぎたのだ。そうだ、本来この旅に賑やかなのは似合わない。他の二人もそう感じているから黙っているのだろうか。それとも、実はもう、私は二人からはぐれてしまっているのだろうか。
もう慣れてしまった作業のように、足の裏が線路を探り、のろのろと進んでいく。酷く静かだ。
「なあ……」
背後から呼びかける声に、私はどきりとした。まさか少年がこの静寂を破るとは思っていなかった。いや、むしろ彼だからできたのか。この旅が望んだものでないのは、彼だけなのだ。
「なあ、さっきの話、本当なのか」
その声は少し震えていた。もしかして、彼も怖かったのだろうか。私と同じで?
「あの、お前が……」
少年は言い難そうに続けた。
「お前が弟を殺したって」
のんきな思考が一瞬で吹っ飛んだ。その話はこんな風に蒸し返したりしてもいいものなのだろうか。そんなのは嘘に決まっている、そう思いながらも、どこかで本当だったらどうしようと考えている。そんなこと、はっきりと確かめない方が良いに決まっているのに。
「信じたの?」
前方から少女の声。ほら、やっぱり。本当のはずがない。
「意外と素直なんだ」
「悪かった。もう、いい……」
どんな気持ちで彼はあんなことを聞いたのだろう。もし、彼女の話が本当だったとしたら、彼は何を聞きたかったのだろう。
再び静寂がじわじわと這い寄ってくる。けれど私は、二人の存在を確かめられたおかげで、もうしばらく先へ進んでいけるような気分になっていた。なんて単純な私。
しかし、搔き回された静寂は、そう簡単には戻ってこなかった。
「……罪って」
どこか思い詰めたような少年の声。表情が見えないからそう聞こえるだけだろうか。
「人を死なせた罪って、許されるんだろうか」
「それは、誰に聞いてるの」
そんなもの、私に聞いているはずはないのだから、あなたに聞いているのだろうに。
「悪い。何か……、どうかしちゃったみたいだ」
消え入りそうな声。私の足は線路を探り続けている。次の一歩を置く場所を確かめて、けれどその一歩を踏み出すのをためらっている。私は自分の位置を探っていた。先にいるはずの少女を追い抜きたくはなかったし、後ろから来る少年を置き去りにしたくもなかった。
「罪を許すのって、誰なんだろうね」
しばらくの沈黙の後、少女は言った。
「私は神様でも裁判官でもないからね、君がどんな罪を犯していようと、それを裁く権利はないよ」
私は必死に二人の気配を探っている。
「誰かが許すと言えば、それで罪は許されるの? それで君は満足なの?」
少年の反応はない。
「きっと私の一部は、弟が死んだときに、一緒に死んだんだ。どうせならちゃんと最後まで道連れにしてくれればよかったのに、それなのに私がまだ生きているのは、きっと、それが罰だからなんだ。私が一番苦しむにはどうすればいいか、アイツはわかってるんだよ。私が生きていることに意味なんてものがあるのなら、私の死は、それを証明するものでなくちゃならない。その時にはきっと、弟も許してくれたってことだろうから」
彼女にとって、死は「許し」なのか。ホームに腰かけていた少女の姿が思い浮かんだ。私はまだ生きている? そう問い掛けてきた少女の姿が。
彼女は、生きていることを確かめたかったんじゃない、自分が許されたのかを知りたかったんだ。彼女はその時を待っていたのだ、「死」という名の「許し」が迎えてくれるのを。
だとしたら、彼女にとって生きていることの証明とは、自らの罪を確認すること、なのだろうか。この旅は、彼女にとって、許しを乞う旅、なのだろうか。
そんなのは悲し過ぎる。どうしてそんなことをするのだろう。
「私にとっては、生きることは罰だった。君にとっては、どうだったのかな」
ふん、と少年が鼻を鳴らすのが聞こえた。
「俺にとっては、死が罰か」
なんて分かりやすい罰だと、少年が自嘲する。
「でも、それなら俺は……」
その声は小さ過ぎてよく聞き取れなかったけれど、受け入れられる、そう言ったように聞こえた。
運命に抗った少年が、それを受け入れた――。それは、望ましいこと、だろうか。私は無責任に、この旅が無意味なものとは限らない、なんて言って彼を道連れにしたことを思い出す。今、彼の旅は意味を持った、のか?
そうなら喜んで受け入れるべきことのはずなのに、そうするのはなぜだか苦い薬を飲むみたいに酷く飲み込み辛かった。
すっかり気分が沈んでしまい、私は存在ごと周囲の闇に溶けて消えてしまいそうだった。
私の頭の中には何の言葉もなく、二人の会話は私の頭上を飛び越えて交わされていた。私がここにいることなんて何の意味もないような、いや、実際に存在していないようなものじゃないか。そうだ、この暗闇の中、私の姿は二人に見えない。会話に加わる言葉もない。今の私は、二人にとって存在していないのと同じだ。
空恐ろしくなって、自分の両腕を抱いた。
「なあ」
その声が今度は自分に向けられているらしいことに気づいて、はっとした。それからすぐにほっとした。私はまだ、ここにいる。
「あの黒ずくめが本当に天使なのか、俺にはわからないけど、アンタが俺を迎えに来た天使だっていうなら、信じるよ」
思いがけない少年の言葉に、私は唖然としてしまった。どんな思考の迷路に迷い込んだらそんな言葉が出てくるのだろう。私が天使? 私が本当に天使なら、もし、天使だったら――、あなたをこんなところに連れて来たりしない。
しばらくして我に返り、少年の言葉に何も返していなかったことに気づく。今さら何か言おうにも格好がつかないし、やはり私の中には言うべき言葉が見つからなかった。せっかく声を掛けてくれたのに。消えかけていた私の存在を示すことができたかもしれないのに。このまま私の存在は、闇と同化して消えてしまうのだろうか。
何か言わなければ、と思うものの、声が出ない。一度壊れた静寂は、一層深くなって還ってくるようだった。もう、物音ひとつ立てることができないような気がした。
私の喉はすっかり機能せず、もう目も耳も何の役にも立たなかった。瞳は暗闇しか映さないし、鼓膜は静寂しか捉えない。
本当に、静かだ……。そういえば、自分だけでなく二人の足音も消えている。
……私はいつの間に足を止めたのだったか。……本当に、いつ、足を止めたっけ。
……あれ、足……? 私の足は、どこへ行った?
とうとう私の体はみんなすっかり闇に溶けてしまったのだろうか。意識だけが暗闇の中を漂っているなんて、これではまるで、幽霊みたいじゃないか――。
それは思いのほか恐ろしいことのように思えた。
私はどうやってこの暗闇を抜け出したらいいのだろう。ただ一つの頼りである線路も見失い、闇はどこまで行っても闇だった。私と闇との境は、もう完全に溶けて消えてしまったらしい。
このまま私は永遠にこの闇の中を漂っているしかないのだろうか。
まさか、本当に私は存在しないものになってしまうのか。
そんなのは嫌だ。
誰か。
誰か、助けて――。
私たちは恐る恐るその暗闇の中へと歩を進めていく。いや、恐れているのは私だけだろうか。他の二人の様子は全く見えない。線路を探りながら歩く音に耳を澄まし、二人の気配に意識を集中する。
幸い雨が降り出してすぐに逃げ込むことができたから、あまり濡れずには済んだけれど、わずかに濡れた服から冷たい雨が体の中にまでゆっくりと染み込んできているような気がした。それは、このトンネルの中を満たす湿った冷気のせいかもしれない。
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足元に落ち葉がなくなり、足で線路を探る作業はやり易くなったものの、歩みは相変わらず遅い。さっきまでよりも遅くなっているかもしれなかった。今、二人とはどれくらいの距離にいるのだろう。少年は私を追い抜いてはいないだろうし、私が少女を追い抜いてもいないと思う。同じ線路の上を歩いているのだから。たぶん、二人ともそんなに離れてはいないのだろう。
そんなこと、声を出して確かめてみればいいだけなのに、なぜだろう、どうしてだかそうすることができずにいた。この暗闇の静寂を破ってはいけない、そんな気がした。今までの私たちがおしゃべり過ぎたのだ。そうだ、本来この旅に賑やかなのは似合わない。他の二人もそう感じているから黙っているのだろうか。それとも、実はもう、私は二人からはぐれてしまっているのだろうか。
もう慣れてしまった作業のように、足の裏が線路を探り、のろのろと進んでいく。酷く静かだ。
「なあ……」
背後から呼びかける声に、私はどきりとした。まさか少年がこの静寂を破るとは思っていなかった。いや、むしろ彼だからできたのか。この旅が望んだものでないのは、彼だけなのだ。
「なあ、さっきの話、本当なのか」
その声は少し震えていた。もしかして、彼も怖かったのだろうか。私と同じで?
「あの、お前が……」
少年は言い難そうに続けた。
「お前が弟を殺したって」
のんきな思考が一瞬で吹っ飛んだ。その話はこんな風に蒸し返したりしてもいいものなのだろうか。そんなのは嘘に決まっている、そう思いながらも、どこかで本当だったらどうしようと考えている。そんなこと、はっきりと確かめない方が良いに決まっているのに。
「信じたの?」
前方から少女の声。ほら、やっぱり。本当のはずがない。
「意外と素直なんだ」
「悪かった。もう、いい……」
どんな気持ちで彼はあんなことを聞いたのだろう。もし、彼女の話が本当だったとしたら、彼は何を聞きたかったのだろう。
再び静寂がじわじわと這い寄ってくる。けれど私は、二人の存在を確かめられたおかげで、もうしばらく先へ進んでいけるような気分になっていた。なんて単純な私。
しかし、搔き回された静寂は、そう簡単には戻ってこなかった。
「……罪って」
どこか思い詰めたような少年の声。表情が見えないからそう聞こえるだけだろうか。
「人を死なせた罪って、許されるんだろうか」
「それは、誰に聞いてるの」
そんなもの、私に聞いているはずはないのだから、あなたに聞いているのだろうに。
「悪い。何か……、どうかしちゃったみたいだ」
消え入りそうな声。私の足は線路を探り続けている。次の一歩を置く場所を確かめて、けれどその一歩を踏み出すのをためらっている。私は自分の位置を探っていた。先にいるはずの少女を追い抜きたくはなかったし、後ろから来る少年を置き去りにしたくもなかった。
「罪を許すのって、誰なんだろうね」
しばらくの沈黙の後、少女は言った。
「私は神様でも裁判官でもないからね、君がどんな罪を犯していようと、それを裁く権利はないよ」
私は必死に二人の気配を探っている。
「誰かが許すと言えば、それで罪は許されるの? それで君は満足なの?」
少年の反応はない。
「きっと私の一部は、弟が死んだときに、一緒に死んだんだ。どうせならちゃんと最後まで道連れにしてくれればよかったのに、それなのに私がまだ生きているのは、きっと、それが罰だからなんだ。私が一番苦しむにはどうすればいいか、アイツはわかってるんだよ。私が生きていることに意味なんてものがあるのなら、私の死は、それを証明するものでなくちゃならない。その時にはきっと、弟も許してくれたってことだろうから」
彼女にとって、死は「許し」なのか。ホームに腰かけていた少女の姿が思い浮かんだ。私はまだ生きている? そう問い掛けてきた少女の姿が。
彼女は、生きていることを確かめたかったんじゃない、自分が許されたのかを知りたかったんだ。彼女はその時を待っていたのだ、「死」という名の「許し」が迎えてくれるのを。
だとしたら、彼女にとって生きていることの証明とは、自らの罪を確認すること、なのだろうか。この旅は、彼女にとって、許しを乞う旅、なのだろうか。
そんなのは悲し過ぎる。どうしてそんなことをするのだろう。
「私にとっては、生きることは罰だった。君にとっては、どうだったのかな」
ふん、と少年が鼻を鳴らすのが聞こえた。
「俺にとっては、死が罰か」
なんて分かりやすい罰だと、少年が自嘲する。
「でも、それなら俺は……」
その声は小さ過ぎてよく聞き取れなかったけれど、受け入れられる、そう言ったように聞こえた。
運命に抗った少年が、それを受け入れた――。それは、望ましいこと、だろうか。私は無責任に、この旅が無意味なものとは限らない、なんて言って彼を道連れにしたことを思い出す。今、彼の旅は意味を持った、のか?
そうなら喜んで受け入れるべきことのはずなのに、そうするのはなぜだか苦い薬を飲むみたいに酷く飲み込み辛かった。
すっかり気分が沈んでしまい、私は存在ごと周囲の闇に溶けて消えてしまいそうだった。
私の頭の中には何の言葉もなく、二人の会話は私の頭上を飛び越えて交わされていた。私がここにいることなんて何の意味もないような、いや、実際に存在していないようなものじゃないか。そうだ、この暗闇の中、私の姿は二人に見えない。会話に加わる言葉もない。今の私は、二人にとって存在していないのと同じだ。
空恐ろしくなって、自分の両腕を抱いた。
「なあ」
その声が今度は自分に向けられているらしいことに気づいて、はっとした。それからすぐにほっとした。私はまだ、ここにいる。
「あの黒ずくめが本当に天使なのか、俺にはわからないけど、アンタが俺を迎えに来た天使だっていうなら、信じるよ」
思いがけない少年の言葉に、私は唖然としてしまった。どんな思考の迷路に迷い込んだらそんな言葉が出てくるのだろう。私が天使? 私が本当に天使なら、もし、天使だったら――、あなたをこんなところに連れて来たりしない。
しばらくして我に返り、少年の言葉に何も返していなかったことに気づく。今さら何か言おうにも格好がつかないし、やはり私の中には言うべき言葉が見つからなかった。せっかく声を掛けてくれたのに。消えかけていた私の存在を示すことができたかもしれないのに。このまま私の存在は、闇と同化して消えてしまうのだろうか。
何か言わなければ、と思うものの、声が出ない。一度壊れた静寂は、一層深くなって還ってくるようだった。もう、物音ひとつ立てることができないような気がした。
私の喉はすっかり機能せず、もう目も耳も何の役にも立たなかった。瞳は暗闇しか映さないし、鼓膜は静寂しか捉えない。
本当に、静かだ……。そういえば、自分だけでなく二人の足音も消えている。
……私はいつの間に足を止めたのだったか。……本当に、いつ、足を止めたっけ。
……あれ、足……? 私の足は、どこへ行った?
とうとう私の体はみんなすっかり闇に溶けてしまったのだろうか。意識だけが暗闇の中を漂っているなんて、これではまるで、幽霊みたいじゃないか――。
それは思いのほか恐ろしいことのように思えた。
私はどうやってこの暗闇を抜け出したらいいのだろう。ただ一つの頼りである線路も見失い、闇はどこまで行っても闇だった。私と闇との境は、もう完全に溶けて消えてしまったらしい。
このまま私は永遠にこの闇の中を漂っているしかないのだろうか。
まさか、本当に私は存在しないものになってしまうのか。
そんなのは嫌だ。
誰か。
誰か、助けて――。
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