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第一篇第二章 拳術道場の女
目指すは南西カントの町
しおりを挟むたった一人で二年間旅を続けて来た
ロードの旅に新たな仲間が加わった。
青い髪を靡かせ青龍刀を腰に差して
山道の獣道を二人は抜けて行く。
「取り敢えず此処から始まりの街を南西の方角に向かえば市場の有る町に出る、其処で旅の身支度を整えるとしよう」
「へぇ。そういや何で此処は始まりの街って名前なんだ?」
「今からもう千年以上も昔、海を彷徨い流れ着いた人間達が当時唯の島であった此の国を創り上げて行ったと。言い伝えられて居るな」
此の国は、括りとして十六の地域に
分けられて居り、十五の大きな街と
一つの都がある。
始まりの街は此の国プレジアの
最東端に位置して居りシャーレが居た
長屋町はオーシュウという呼び名も有る。
そして、二人は此れから始まりの街
コミンチャーレを南西に進み、其処にある
大きな市場町カントを目指す事となった。
「ししし、なんかよ。笑いながら旅したの初めてだ」
「急にどうしたのだ?」
突如、声を上げて笑い始めたロードに
驚いたシャーレが声を掛ける。
「いや、一人でずっと旅してたし、町の奴等と関わる事もあんましなかったからよ。何かこーゆうの久しぶりでよ」
「先の見えない旅になるかもしれないんだろう?なら良い事なんじゃないか?」
「へへ、かもな」
「そう言えば、ずっと思ってたんだが。其の刀見事な代物だな」
シャーレが指差したのは、ロードが背中に
差して居た刀だった。
ロードは刀の柄に触れながら口を開く。
「ああ。此れか?親父に子供の頃に貰ったんだ、名前は鳳炎。一応、最上大業物らしい」
「一応って。此の国に現在七工しか定められて居ない刀だぞ。いやしかし、ロードの父上は大金持ちか?其の刀を渡すなど」
シャーレの言葉に笑って頭を掻いたロード。
気にはなるが、余り踏み込まない様に
シャーレは口を閉じる。
そして自分の青龍刀を指して話を逸らす。
「私の刀も水明燦雅という名前が有る。君の刀には劣るが此れも名の有る名工が打った良業物さ」
「そういう形の物もあるんだな。業物ってのは」
「業物ってのは、刀だけじゃないぞ?刃が付いている物なら槍や斧でも其の名前が付くのさ」
へぇ、と学びのある話を聞いたロードは
その後もシャーレと会話を交わしながら
軽々と山道の獣道を抜けて行く。
そしていつの間にやら、獣道が段々と
平坦な草原へと出た。
「おお、抜けた」
「此の平原迄来れば市場町カントももうじき見えてくるだろう」
「にしても此処は、なーんもない場所だな」
風が緩りと吹き抜ける平原を二人は
着々と歩を進めて突き進んで行く。
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