RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第一篇第二章 拳術道場の女

マーシャルとポアラ

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「へぇ、一人で切り盛りしてんのか。スゲーな」


「あたしね、今21なんだけど8歳の頃に戦争で親を亡くしてね。其れ以来父親の友人だったマーシャルさんに世話して貰ってるの」



時折、寂しげな表情を浮かべながら
ポアラは過去について語り始める。



「それで18になった頃、マーシャルさんは道場と別にこの団子屋の経営も始めてね。ここを作った理由は、あたしに仕事をさせられて生活費を稼げるようにって優しさなの」


「成る程」



シャーレが相槌を打つと、ポアラは
緩りとまた口を開いて続ける。



「でも郊外にあって賑わってる訳でも無いからさ、マーシャルさんに少しでも利益が行く様にと思って一人でやってるんだ。働く人を増やしたらそれだけ出費になるでしょ?」


「なーんか良い話だなあ」



染み染みとロードが腕組みをして
話に耳を傾ける。



「まあ、お金はそのまま受け取って貰えないからご飯作って持ってくとかしか出来てないんだけどね」



ポアラが気恥ずかしそうに舌を出して
照れ笑いを浮かべる。



「私も、幼い頃に戦争に依って家族を失っている。其の時に私も周りの人間に支えられた、気持ちは痛い程に解るよ」



シャーレの言葉にロードは唇を噛む。

戦争、そして自国内紛争が続く此の国では
シャーレやポアラの様な人間は山程居る。

悲しい事だが、其れが現実であった。

多少の笑顔を見せながらも互いの過去を
思い出す様に暗い表情を浮かべる二人を
気遣ってか、ロードが口を開く。



「ありがとうよ。辛い事話してくれて、てかよ、ポアラ、アンタ俺より歳上だったんだな」


「え?どう見てもあたしの方が歳上でしょ、ロードってまだ18ぐらいじゃ無いの?」



「バカ言えッ!俺は20歳だ!」



其の言葉にポアラは口に手を当てて
驚きの表情を浮かべる。



「うっそ、驚いたあ。一個しか変わんないんだ?」


「何方にしても私が一番上だな」


「そういや、シャーレは幾つなんだ?」


「23だ」



ロードの発言が転機となり重苦しい
雰囲気から、笑い声が混じり合う会話へと
変わり、してやったりの笑みを浮かべる。



「へっ、幾ら年長でも中身がずっとポアラの尻や胸を追いかけてるスケベじゃあな」



ニヤニヤしながら、ロードがシャーレを
突いていると、ポアラは胸を手で覆う様に
して恥ずかしそうにしていた。



「馬鹿め、ロード。胸や尻だけではない。確り素敵で可憐な顔もチェックしているさ、当然であろう!!」



何やら真顔のまま立ち上がり、必死に
大きな声を発したシャーレ。

其れを見て、反射でポアラの平手打ちが
シャーレの頬を捉え、軽く吹き飛ばされた。



「…結局、スケベ…!」



回し蹴りの時と同様に嬉しそうな表情を
浮かべて転がるシャーレを見てロードが
声を出して笑い始める。

其れを見たポアラは釣られる様に
ふふっ、と口に手を当てて笑顔を見せた。
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