RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第二編第二章 狙われた姫の命

シャーレの記憶“捕虜”

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「此のバカは敢えて生かした!だからこそ我々は此処に辿り着いた。己の不運を呪え!恨めッ!!!」



バルモア兵に担ぎ出された兄はバルモア兵の
嘲笑の中、シャーレの目の前に投げ飛ばされ
痛みで呻きながらも悔恨の涙を溢す。



「父さん、シャーレ…村の皆さん…ごめんなさい…私のせいで…こんな…っ…」



兄ルイスの姿と言葉に村の民はもう
逃げれないと心の底から痛感してしまった。

其れからシャーレの壮絶なる捕虜生活の
日々が容赦無く襲い掛かってくる。

ろくに食事も取れず、薬も買えない。

土塁の壁が高く積み上がって行く程に
民の中から死者が出始めた。

バルモア兵は其れを意に介さない。

まるで、働き蟻か何かの様に動けなく
なった人間をただ、切り捨て村の外に
無造作に捨てて来る。

そして、半年が経った頃、シャーレに
とって初めての家族の中から死者が出た。

食料も医療道具も全て息子二人に
渡していた、父が遂に栄養失調と病気で
絶命の刻を迎えてしまったのだ。



「父さんっ!父さんっ!」



父の亡き骸に涙を溢しながら抱き付く
シャーレの後ろで痩せ細ったルイスが
拳を握り締めると、掌から血が滴り落ちる。



「全部…全部、私のせいだ…」


「兄さん…?」


「クソックソックソッ!!!!」



ルイスは叫びながら壁を殴り続け
吹き出した血が部屋中に飛び散る。

其の悲惨な光景にシャーレは怯えたまま
腰を抜かして動けなくなってしまう。



「シャーレ、此処から出るなよ?」



ルイスは近くにあった木の棒を手に取ると
身体を揺らしながら緩りと小屋から姿を
夜の闇に同化させ、消えて行った。



「ま、待って!兄さんっ!!」



何とか身体を動かして手を伸ばしたが
シャーレの声にルイスは立ち止まらず
虚しくシャーレの声だけが響いていた。

シャーレは父の死と、兄の狂気じみた
行動に動けなくなってしまった。

部屋の隅で膝を抱えて泣き咽ぶしか
出来なかったのだ。

シャーレにとっては、其の翌日の朝に
悲しき事実が畳み掛けて来る。

朝の点呼に呼ばれシャーレは其処に出向く。

其処にはシャーレの心を折るには
充分過ぎる程の光景が待っていた。



「そ、そんな…に、兄さん…」



本来なら点呼の列を崩す事は厳禁だが
シャーレには我慢が出来なかった。



「コイツは昨日、我々に背いた。相応の処罰を与えてやった迄だ」



バルモア兵が指差した先には木の十字架に
括られ、無残な姿に変わったルイスの姿が
見せしめに掲げられて居た。

血も乾き、完全に命を奪われた姿でも
まだ、見せしめとして使われる。

兄の前で身体を地面に臥せて涙を
流すシャーレの髪を引っ張って
バルモア兵が言葉を放つ。



「今見て来たが、兄も父も死んだなあ?母しか残って無いぞ?お前には…お前が働くのを止めたら母も見せしめに殺す。会いたいよな…っ…?」


「あ、会いたいッ!!」



シャーレに選択肢は残されて居なかった。
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