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第四編第一章 護国の旗を掲げる男
神出鬼没の探し人
しおりを挟む「なにッ!?ランス…だと?」
エルヴィスの言葉に不意に立ち上がり
驚愕とも取れる表情を浮かべたロード。
「知ってるのか?」
「…あ…い、いや名前だけな…」
エルヴィスからの問い掛けに何かを覆い隠し
取り繕うかの様に頬を掻いて誤魔化そうと
するロードの真意は漏れてしまっている。
だが、エルヴィスとウィルフィンは其れを
見た上で一度口を噤み、本来口に出したい
筈の言葉を飲み込んだ上で再度口を開く。
「なあ、ロード。お前ウチのガルダと一緒にランスを探しに行っちゃあくれねぇか?」
「何で俺が…?」
「俺とウィルフィンはまだ別にやる事があってよ…手ェ貸して貰いたいんだが無理なら、まあ…構わねぇよ?」
ロードは心の中でほんの少し平静を保つ
ゆとりを持とうと心境を整理する。
ロードにとってランスとは二年前に別れる
迄は共に居た存在で両親を探す為に不可欠な
存在なのだが、何故追われているのかが
未だ不明であり反乱軍の意図が解らない。
政府を出し抜く為にランスを探す?
今のランスの立場に理解が及ばず混乱を
続けるロードだったが一度息を吐き出すと
進むしか無いという答えに辿り着く。
「…わかった…行ってくる…!」
「…ッ!…助かるぜ…!」
ロードは踵を返すと足速にアジトの出口へと
走り出し、ランスへの想いに耽っていた。
そして、ロードが去った一室の中で
エルヴィスはドサッ、とソファに腰を下ろし
背もたれに両肘を乗せると天井を見上げる。
「なあ、ウィルフィン…あの反応は間違いねぇよな?」
「ああ…何かを知っていた。其れは事実だと断言して良いものだと感じるな」
「ロード・ヘヴンリー…か。悪いがウィルフィン、アンタはコイツの事を調べて欲しい…」
「解った…」
其の場から一度去ろうとしたウィルフィンに
言い忘れて居たとばかりに声が飛ぶ。
「ああ、そういや。帝国軍のヨハネに負けたんだってな…ちゃんとチカラは使ったのか?」
其の言葉にピタリと立ち止まるウィルフィン
はほんの少し拳を固めて口を開いて行く。
「あのチカラか…。使ったさ…ギフトの其の先を使って叩き伏せられた…」
「…はっ…次は勝てよ?」
「…当然だ…!」
「頼むぜ?アンタは俺の懐刀なんだから」
会話を終えたウィルフィンがエルヴィスの
前から姿を消すと天井を見上げたままの
エルヴィスは一人、思案に耽るのだった。
そしてアジト出口へと着いたロードの
視界の先には複数の反乱軍兵士達が
ランス捜索の任の為に隊列を成していた。
「(ランス…まさかこんな所で名前を訊くとはよ…アンタには訊きたい事が山程あるんだ…居なくならずにそこで待ってろ…!)」
ロードは一人、腹を括り覚悟を心の内側で
言葉にすると反乱軍と同行しランス捜索の
為に隊列に合流しようと走り出す。
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