RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
252 / 954
第七篇第一章 雪降る氷山地帯の再会

雪の郷ウルジムスルク

しおりを挟む



降り注ぐ雪に歓迎されるかの様にロード達は
氷の街ケベルアイスにある雪で覆われた純白
の郷ウルジムスルクへと辿り着いた。

桟橋から足を進めて雪の郷へと足を向ける
三人の目には煉瓦造りで三角屋根の家屋が
立ち並ぶ景色を目にする。

其処で暮らす人々はコートのフードを目深に
被り分厚い手袋に長靴など雪国の生活様式を
存分に見せ付けてくれていた。

そして入り口のウルジムスルクの看板の前に
郷の子供が作ったのだろうか、多少不揃いな
形の愛くるしい雪だるまが出迎えてくれた。



「はわわわわっ…可愛いですっ」



パタパタと雪だるまに掛け寄ると膝を包む様
に腰を落としたシェリーが笑顔を見せる。



「……っ…ぅぅ…。なんやかんや寒うなってきてんな…オイ、氷の街っちゅうんはいつもこんぐらいの寒さなんか?敵わんわ…」



漸く寒さを実感してきたシグマは鎧の上に
コートを羽織っている為、ロードとシェリー
よりは暖かい筈なのだが身体を震わせる。



「いや?氷の街に関しては俺も初めて来たからな…知らねぇよ」


「なんや使えへんやんけ。唯一のプレジア国民なら直ぐにあったかいトコへ案内せんかァ…ボケがァ…!」


「んだとッ?鎧まで着込んで一人だけヒィヒィ言ってんじゃねぇよ。忍耐力って言葉知らねぇのか?軍平のくせしやがって…!」


「黙って聞いとりゃ言いたい放題かましやがってからに…舐めとんのか、此のボケ、いんや此の大ボケがァ!」


「なにが黙って聞いてりゃだ…ニャロウめ…テメェから始めたんだろうがッ!!」



雪の浄化は一瞬の物だった様でまたしても面
を突き合わせて喧嘩腰になった二人を察した
シェリーが立ち上がるとパンと手を叩く。



「ん?シェリー…?」


「なんや?姫様…」



緩りと振り返ったシェリーはいつもとは違う
表情で二人を見遣ると腰に手を当てる。



「もうっ!いつまで喧嘩してるんですかっ。仲良くしないならお二人とも私は嫌いですっ…せっかく綺麗な所なのに台無しにしないでくださいっ」



そう言い切るとぷいっと頬を膨らませてへそ
を曲げた様にそっぽを向いたシェリーを見て
二人はほんの少しの沈黙の後にガーンッ、と
絶大なショックを受けておどおど、とした姿
を見せながら慌ててシェリーに駆け寄る。



「わ、悪かったってシェリー…!」


「姫様えろうすんまへんでした…そない臍曲げんでや?」


「そ、そうだ。ほ、ほら。俺ら実は仲良いんだッ?な、なっ?」


「お、おう。せ、せやな?ほれ見てみい姫様…け、喧嘩するほど仲がいい言うてな」



引き攣った表情でシェリーの機嫌を取り戻す
様にして肩を組んだロードとシグマを見て
そっとシェリーが微笑んだ。



「(なんかお二人の取り扱い方がわかってきたかもしれませんっ)」



嬉しそうに心の中で呟いたシェリーだった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...