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第七篇第一章 雪降る氷山地帯の再会
音の無い剣閃
しおりを挟むシルヴァは左手に携えた小刀に疾風のギフト
の風を纏わせ足音を消して目の前の裏帝軍の
細身の大男に向けて向かって行く。
月白色(月の光の様な薄い青みの白)の風を
逆巻く様に身体を包みながら体勢を低くして
駆けて行く様は正に忍者そのもの。
そしてシルヴァの持つ疾風のギフトの特性は
静寂であり足音を消して走る事が出来る。
素早い動きで裏帝軍の大男の周りを足の裏で
踏み締めた雪の上にサークルを描くかの如く
円状に走ると敵を撹乱し始める。
裏帝軍の男と右見ては左と其の速度を目だけ
で追いかけ続ける事は不可能だった。
そして音を消したシルヴァは裏帝軍の男の目
が自分を完全に失った瞬間を見逃さず円状に
走っていた身体を一歩で方向転換させた。
裏帝軍の男の背後から腕を畳んで構えた小刀
を突き刺す様に剣先を放つと裏帝軍の男は
何故か諦めた様に瞳を閉じた。
だが其の瞬間身体から溢れ出したのは大男の
鉄鏡のギフトのオーラであった。
京紫色(赤みがかった紫色)のオーラを身体
から噴き上げる様に垂れ流した裏帝軍の男が
目を見開くと同時にシルヴァの身体が背後に
向けて重力を失ったかの様に飛ばされる。
裏帝軍の男は反乱軍エゼルと同じく得意な
特性は磁力でありシルヴァの身体を反発させ
危機をいとも簡単に脱して見せた。
飛ばされたシルヴァも波動のチカラで特性を
破りふわりと雪の大地に両足を落とした。
「世知辛いな。名ぐらい名乗り合ってからでもいいだろうよ?なあ…革命軍の忍びくん」
「生憎、人の名等に興味が湧かなくてな」
「そうか…。陰気な者だな…だったら覚えようが覚えまいが構わない。此方が気分が悪いんでな…一応言わせて貰うぞ…?政府直下裏帝軍幹部アノン・ヴィルヘルムだ…。あの世への通行切符にはならないが…片道切符は私自ら渡してやろう…!」
名乗りを終えたアノンは大剣を持たない左手
の手のひらを前へと突き出すと磁力のチカラ
を発揮させシルヴァの身体を引き寄せる。
そして近付いて来たシルヴァの身体目掛けて
右手で握った大剣を軽々と振り上げ一刀両断
を狙うかの如く一気に振り下ろす。
だが、シルヴァは直前でまた波動のチカラで
磁力の特性を打ち破るとひらりと身体を捻り
アノンの背後に一歩で跳び距離を保つ。
「……惜しかったな?もう少しで…あの世逝きだったというのに…」
「…良く喋る男だな…主は…」
背中を向けて雪の大地に降り立ったシルヴァ
はすっくと立ち上がるとひらりと振り返って
小刀を身体の正面から見て真横に構える。
「…我は影だ…使命を全うする迄は死ねぬのでな…御免…!」
ニヤリと笑みを浮かべていたアノンのほんの
少し見せた隙を見逃さずシルヴァは音も無く
雪の大地を蹴ると小刀でアノンの肩元を一気
に斬り裂くと真っ白な大地に真紅の鮮血が
迸る様に肩口から噴き出して行った。
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