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第七篇第四章 進展と進化
イザベラの過去
しおりを挟む「あ、やべ…イザベラさん…中の写真見ちまいました…アレって旦那さんッスよね…?」
狙ってやった事じゃ無いからこそロードは
イザベラに対して申し訳無さそうに謝る。
するとイザベラは一つの問い掛けをする。
「ねぇ、アンタ。知り合った人間の中に異国の人間が居たらアンタならどうする?」
「……えっ?別にどうする事も…無いかなって…」
「プレジアが今…鎖国中でもかい?」
「……んーと…その人自身は生まれを気にするかもしんねぇけど…俺はそこだけで判断したくは無いッスよ…」
意図の見えないイザベラからの問い掛けに心
の内のあるがままを話して行くロードの表情
を見てイザベラは意を決した様に話す。
「……今から話す事は多言無用で頼むよ…。アタシの本当の名前はイザベラじゃ無い。其れは此の国に来て生きづらいだろうからと旦那が偽って作り上げた身分の名前なんだ…」
「偽り…身分…此の国に来てってまさか…」
「お嬢ちゃんの予想通りだよ。アタシはねバルモアの出身で…バルモア軍隊に所属してたんだ…」
イザベラは続ける。
戦争の為に此の国に送り込まれたイザベラの
所属していた隊は苛烈な戦闘の中で散り散り
となり母国との連絡手段を失ってしまった。
所謂、残留兵である。
其の時に親身になってくれたのが旦那である
此の氷の街で氷像造形師を営む男だった。
そして其の男は五年前に病死したがプレジア
国民として身分を偽ったイザベラは旦那から
教えて貰った造形技術を糧に職を継いだ。
「…はわわわわっ…驚きましたっ…あ、あの…イザベラさんっ…!」
「なんだい?お嬢ちゃん…」
「プレジアとバルモアのお二人が結ばれた訳ですよね…?障害は無かったんですか…?」
「気になるかい?障害か。言葉にすればあったんだろうね…身分を偽ったりして生きてるワケだし。だけど…結局は人と人だったワケさ。話せば折り合いも着くし…何より心は伝わるんだよ…」
シェリーは笑顔を見せるとグッと胸の前で拳
を握って決心を固めた様な表情を浮かべる。
「素敵だと思いますっ…私も今やるべきかやめるべきか悩んでいた事がありましたっ。でも話せば変わる事もありますよねっ…イザベラさんっ…私頑張ってみますっ!」
「ははっ、そうかいそうかい。なんだか解らないが力になれたみたいで何よりだ」
「……そういえばなんでこんな大事な話を私達にしてくれたんですかっ?」
シェリーの最もな問い掛けにイザベラは困り
顔を見せながら頬を掻いて口を開いた。
「……さあ。何でだろうね。強いて言えば十年程前か…一度お見掛けする事が出来たバルモアの王妃様にお嬢ちゃんが似てたから、かもしれないな」
其のイザベラの言葉にシェリーをグッと歓び
が身体の中から湧いて出て来るのを感じた。
それはそうだろう。
其の王妃はシェリーのお母さんなのだから。
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