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第十一篇第一章 月明かりに照らされる真実
運命の出逢いの引き金
しおりを挟む「ちょっと待て…話はわかったけどよ…このままじゃ…親父も母さんも…危ねえ立場なんじゃねぇか…」
俯いていたロードが静かに口を開くと周りの
人間達が其の苦悩を察して顔をしかめる。
だが、ロードの放った言葉には一つ間違いが
孕んでいる事をロード以外は気付いていた。
危ない立場なのはロードもなのだ。
鎖国体制の中で生まれたプレジアとバルモア
の血を引く言わば鬼の子である。
其の存在が知れ渡れば罪を裁く断頭台へ其の
身を上げざるを得ない事は事実なのだ。
「ロード様…」
頭を抱えて顔を引き攣らせていたロードへと
満を持して声を掛けたのはシェリーだった。
ロードは静かに顔を上げるが火の街の一件で
吹っ切れた筈だった青年には酷過ぎる重たい
事実が背負わされ其の表情は暗さを帯びる。
しかし、シェリーが発したのは単なる慰めの
言葉では無かった事で驚くロード。
「覚えていらっしゃいますか?私達が出逢ったあの日の事…」
「……ああ。覚えてる…追われてた俺をシェリーが…“きまぐれ”だったか?救けてくれたんだよな…」
「ええ。気紛れでした…レザノフも覚えているでしょう?私があの時…ロード様を手助けしたいと言った理由を…」
シェリーの言葉の中でレザノフは思い出した
様に笑みを浮かべて静かに頷く。
「理由…なんてあったのか?」
「はい。お母様と…とても仲の良かったサーラ様…私もとても良くして頂きました…サーラ様はすごくあったかくて…まるで太陽の様な方なのです…」
微笑みを浮かべながら懐かしそうに話して
いたシェリーは記憶の中でサーラの表情を
思い返して更に続ける。
「私は…このプレジアに来て当時…ほんの少しですけど…ホームシックになっていました…そんな時です…ロード様に出逢ったのは…」
「そう…だったのか…」
「初めて見た時にとても驚いて胸がざわめいたのを覚えています…だってこんなに素敵なサーラ様と同じ真紅の髪は見た事ありませんでしたからっ…!」
シェリーが見せた微笑みにロードは少しだけ
表情を緩ませて頬を赤らめさせた。
あの時の少女の気紛れは、繋がっていた。
「まさか…本当に…サーラ様の血縁の方とは思いませんでした…。でも心のどこかで…もしかしたらと思ってたんです…ヘヴンリーという名をロード様が名乗られた時に…!」
思い返せばロード・ヘヴンリーという名を
聞いて反応を見せたシェリーが持っていた
違和感、此処が綺麗に繋がりを見せる。
「……だったら…なんで…言わなかったんだよ?」
「そういうのは…本人が話したい時に話すモノでしょうっ?」
「……シェリー…!」
ロードは火の街の一件と合わせて触れて来た
仲間達の暖かさに胸の中を刺激されている。
どんな不安定なモノを抱え込んで居たとして
此の仲間達は裏切る事はしない。
何故か、そう断言出来る自信が付いた。
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