RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第一章 創痕癒す光の泉

洗い流される心

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部屋へと入ったロードとシャーレの二人。

シャーレは静かに椅子に座り込んだがロード
はさっさと風呂を堪能しようと無造作に上着
からどんどんと脱いで行く。

そんな折に背後からシャーレが神妙な話し方
でロードに言葉を飛ばした。



「なあ、ロード」


「ん、どした?」


「あの二人……いつも一緒に入ってたのかな、お風呂……」


「オメェの命日は…ポアラをガチギレさせた時だな、うん」



呆れた様に言い放ったロードの言葉に苦笑い
を浮かべたシャーレだったが其の言葉が前座
だったかの様に一言付け足される。



「兎にも角にも…無事で良かった。おかえり…ロード」


「………ああ。心配かけて悪かったよ」



そして、ロードはそう言い残すと風呂場へと
ほぼ裸のまま歩いて行った。

するとシャワーヘッドから大量に溢れ出た
お湯に頭から身体を突っ込んで行く。

瞳を閉じたロードは数日振りに落ち着きを
取り戻したかの様に此の数日を思い返す。

思えば、火の街メルフレアで知った驚愕の
事実がロードにはあった。

死蜘蛛狂天ディルが自身の守護を“アラネア”
という人物から依頼されていた事。

其の真意を訊く前に鋼の街レアメタリクスで
反乱軍と革命軍の大戦が起こった。

両軍に残された傷跡は大きくロード達が彼等
を止めに入れたのも最終盤。

両軍への心配を胸に抱え込んだロードが次に
目の当たりにしたのは自身のルーツ。

雷の街ヴォルテークで知る自身の母親サーラ
が何者であったかという事。

バルモアの出である母親とプレジアの国王と
なった父親から生まれた自身の血は此の時代
に於ける最大のタブーである混血。

ロードは、自身も政府から追われる身になる
事を此の時に理解したのだ。

しかし、理解した上で尚ロードはアドリーの
奪還を目指して政府の管理下にある大監獄へ
止まる事なく向かって行った。

此れは単なる正義感や使命感から来た行動と
呼ぶには理解が足りないのかもしれない。

自身の事、家族の事、仲間の事、友人の事
そして、繋がれて来た人間達の事、ロードの
脳内から身体へと伝播した全てが彼の体内の
器官をボロボロにしてしまっていた。



「……うし。行くか…!」



其れでも彼は止まらない。

洗い流した汗と血の塊、全てを綺麗に落とし
ロードは新たな気持ちで運命とぶつかる。

逃げる事を知らず、手を抜く事さえ知らない
不器用さがロードの足を引っ張る。

しかし、彼の長所は其処なのだ。

長所は短所、短所は長所、全ては表裏一体。

ロードは度重なる試練の連鎖に其の都度で
大きな覚悟を背負い成長を遂げている。

服に身を通したロードの前でシャーレが既に
扉の前へと立ち尽くしていた。



「行こうか」


「ああ…」



だが、ロードは既に一人では無い。

度重なる試練も恐らく持ち前の勇気のチカラ
で乗り越えて行けると気持ちは前を向いた。
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