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第十三篇第五章 生まれながらの枷
互いの苦悩
しおりを挟む王都リオプレジアに在る帝国軍本部から逃げ
おおせる事に成功したノアとシルヴァ。
王都の中心を暗黒に染め上げていた帝国軍の
元帥ロストの波動が届かなくなった位置まで
辿り着くと、とある草原の一本杉の下で一息
を着く為に足を止めていた。
一本杉に背中を預けられ座り込む形でノアを
見上げているシルヴァは動転する気持ちだけ
が脳内を支配し、言葉を失っていた。
シルヴァは、ノアが駆け付けてくれた理由を
全くと言っていい程理解出来ていない。
其れも其の筈、シルヴァは革命軍に対し其の
内部を疑心暗鬼の底に落とした張本人。
時にはシルヴァも耳にしていた。
内通者とは、誰なのか、本人からすれば自分
以外の何者でも無いというのに他の無実の誰
かが疑われたりした事を知っている。
だからこそ、シルヴァはノア達を政府に売り
続けていた自分は革命軍の一員等ではなく只
の敵であるという認識をしていたし、ノア達
に顔向け出来る立場で無い事も心の底の深く
まで理解していたつもりだった。
だから、革命軍の誰かに何を言われようとも
どんな仕返しが待っていようとも受け入れる
覚悟は最近では無く、ずっと前から己の心の
中に確りと出来上がっていた。
しかし、此のパターンは理解が及ばない。
そんな自分を助けに来たノアの存在から目を
逸らす事すら出来ないシルヴァはやっとの事
で一つの可能性を掴み取った。
「………そうか。何処の誰か、では無く……自分自身の手で裏切り者を始末しに来たか……やっと理解が及んだ……其れなら筋が通るというモノだ……」
吐血しながら、ノアを見上げて死の淵で話す
言葉をきいて、ノアがしゃがみ込んで座する
シルヴァの目線に合わせた。
「……俺はただ…シルヴァ、お前を救けに来ただけだ……だが遅くなってしまった。本当に済まない……」
ノアの言葉に目を丸くしたシルヴァは額に手
を置いて動揺をまたしても引き戻す。
「…理解不能だ。何故……何故だ…ノア。貴様にとって…革命軍にとって我はッ……裏切り者だろう……?」
ノアにとっても初めて見せるシルヴァの動揺
した声に表情、ノアは胸を痛めながら其の声
に静かに返答をして行く。
「もう四年の付き合いだ…だがそんなお前を見た事が無かった……仲間だと言って置きながら…俺は、本当のお前を理解出来ていなかった。知っていた…つもりになってしまっていた………」
「……そんなの当然だ……我は影……本当の自分など貴様等の前では……隠していたのだから……」
「俺達は…四年前のあの日から…今も変わらず仲間だ……仲間が苦しんでいるというのに……俺は大馬鹿者だな……総長を称しておきながら……情けない………」
震えるノアの声にシルヴァの平静や情緒等が
一斉に崩れ落ちて行くのが解った。
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