625 / 954
第十四篇第一章 追憶の遭逢
運命の岐路 “嘆願”
しおりを挟む怯えながら身体を震わす其の女性はチラリと
向けた視線の先にとあるモノを見つける。
そして、窓の外に干された其の羽織の紋様に
目を奪われ、一気に立とうと動き出す。
が、足を痛めておりベッドの下に落ちた所で
身動きが取れなくなってしまった。
「オイッ!アンタ、大丈夫かッ!!」
「来ないでッ!!!!」
ストラーダは其の女性の声にピタリと足を
止めて固まってしまった。
其の声には怒気とも恐怖とも取れる畏怖の念
が盛大に盛り込まれていたからだ。
そして、彼女の口から驚愕の言葉が飛ぶ。
「お前はプレジアの人間……しかもあの紋様は王族でしょうッ……何故、助けるのかすら意味が解らない……だからもう近寄らないでッ!!」
ストラーダは其の言葉から真実を見つけ出し
此の女性が何者なのかを悟った。
恐らく、此の女性は戦争の為に連れ出された
バルモア側の女性であると。
だからこそ王家の紋様を、見て恐怖を覚えて
まるで死を目の前にした獣の様に威嚇を見せ
牙を立てている様にも見えた。
しかし、ストラーダにとって其処は問題では
無く心の底からの想いを伝える。
「怖がらせて済まねェ。だけどアンタ…其の足じゃ…生きてくのは大変だ……だから頼む…命を粗末にしないでくれ……!」
「何をして…………」
其の女性は眼前の光景に目を疑う。
恐らくプレジアの王家の人間であろうという
男が自分の目の前で土下座を始めた。
其れもとても、深くだ。
「生きてく為の飯の調達とか……治るまででいいんだ…俺に看病をさせてくれ……!それ以外の時は俺は外でなるべく過ごす……だから頼むッ!!!」
其の女性は言葉を失った。
だから、返答はしなかった。
だが、ストラーダは静かに顔を上げて女性が
目を逸らしている横顔を見て笑う。
「……拒否しねぇって事は…いいって事だよなッ!?」
其の女性は身体を使って何とかベッドの上に
痛みを堪えて這い上り、また窓の外から川辺
を眺めて口をつぐんでしまった。
「おしッ!!魚焼いて来てやっから待っとけよ……腹が満たされりゃ…少しぐらい気持ちが明るくなるかもしんねーからよ!」
ストラーダは外へと駆け出して行く。
其の女性はチラリと其の背中に視線を送ると
複雑な胸中で心を揺さぶられていた。
軍の給仕として駆り出され敗軍の列の中から
逸れてしまった其の女性は既に三日間、仲間
の救けを待ったが誰一人現れなかった。
だからこそ、心が痛んでいた。
そして、皮肉な事に、そんな自分を救けよう
と動いたのはプレジアの王族。
其の女性は自身の言葉を巻き戻すとバルモア
の人間であるという事を彼は悟ったのだろう
と考えついてしまった。
きっと、いつかは飽きて殺される。
そんな恐怖をも宿しながら困惑する胸中の中
で己の人生の終焉を考えていた。
50
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる