RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
630 / 954
第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者

感恩戴徳の日々 “斡旋”

しおりを挟む






「万屋……か…」


「おっ?何だオマエ…万屋家業に興味でもあんのかッ?」


「………いや、ちょっと訳アリでな。あんな事言ったが…俺も仕事探さねぇとな…ってよ」



ストラーダの言葉にアラネアは首を傾げる。



「オマエ……仕事探す意味あんのかよッ?裕福の頂点にいんだろッ…オマエは」



アラネアの言葉にストラーダは悪寒が走る。

そして、恐る恐る言葉を探して訊き返す。



「……今、なんて言った…?」


「だーかーら……オマエ。ストラーダってケーニッヒ王家の皇子だろうが……仕事なんて探す意味ねぇだろッ……ってよ」



胡座を掻いたまま話したアラネアに自分自身
の事を言い当てられたストラーダは慌て驚き
立ち上がると背後へと跳び距離を保つ。



「知ってやがったのか…ッ!」


「当然だろッ?有名人中の有名人じゃねぇかオマエ」


「コンニャロ…ッ……!」


「だが、なんか勘違いしてやしねぇかッ?オマエ……オレはオマエをどうこうしようなんて思っちゃいねぇよ…」


「………信用できねぇ…」


「そうだろうけどよ…?人間なら誰しも自分の立ち位置に悩むコトぐらいあらァな…オレはねぇけど」



ストラーダからほんの少し力が抜ける。

其れは自分自身で捨てて来ていた人間という
呼び名で呼ばれたからであった。

人権差別の頂点に居るケーニッヒ王家からも
飛び出して来てしまったのは自分達が生まれ
ながらに人間とはかけ離れているという罪を
感じてしまったから。

だが、目の前の男は、王族をも平気で人間と
呼称している事に違和感と多少の安堵感をも
感じさせてくれていた。



「正体も顔も隠して仕事探すのは大変だろ。救けてくれたお礼として……もしオマエにその気があんなら…オレがそういう仕事を回してやる…どだ?悪い話じゃねぇだろ」



いつの間にか距離を取って身構えていた筈の
ストラーダは吸い込まれる様に其の豪胆さを
持つアラネアの前に腰を下ろしていた。



「…………いいのか?厄介モンを抱え込むのと一緒だぞ……?」


「ワーッハハハハ…そんな細かいコト気にして生きるようならよ…こんなド派手な刺青なんて彫っちゃあいねぇっての…!」


「………ハッ…それもそうか。アンタ…天下御免の傾奇者だもんな…」



そう言い残すと突然立ち上がったアラネアは
ストラーダにこう言い残して背を向ける。



「まあ、明日になっても気が変わらなかったらよ……花町の西側にある“大蜘蛛”って万屋に尋ねてきな……明日の昼頃なら絶対にオレはいるからよ…ほんじゃな」



こうして片手を上げて歩き出したアラネアの
背中を目で追うストラーダだったが何故かは
解らないがアラネアが立ち止まる。



「つか、花町ってどっちだ?」


「………ホント、締まらねぇヤツ……」



こうして、ストラーダはアラネアの提案から
万屋で日銭を稼ぐ毎日が始まった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...