RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第十章 天下分け目の大戦・玖

地獄の番犬

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「業火覚醒…“ 地獄喰獣ヘルケルベロス”…ッ!!」



覚醒を遂げ、姿を変えたマッド。

其の姿を見て、シャーレは一言、呟く。



「地獄の番犬…ケルベロス。随分と荒々しくなったモノだ…」


「恐れ慄くがいいわ…貴様は此処で終いだからな」


「フッ…無表情だった以前よりは幾らかマシになったな…人間味が増した様にも見えるぞ。マッド・ゲルティーノ…」


「気味の悪い冗談だ…」



総てを凌駕し焼き焦がさんとする柳色の凄絶
なマグマがシャーレに向けて放たれる。

すると、息を吐いたシャーレは自身の身体を
透明化させて行き、其の攻撃が自身へと届く
間だけ其の存在を無にして見せた。



「(透明化してからの移動の速さに疑問があったが…此れならば納得だ…攻撃すらすり抜けるのだな…貴様の固有特性は…)」



透明化になっていて、理解し切れて居らずに
いた部分である移動の速さの疑問点。

其処に、合点が行ったマッド。

シャーレの透明化は攻撃すらすり抜ける。

言わば、物質もだ。

其処から導き出される答えは、一つ。

シャーレは攻撃をすり抜け、ただひたすらに
真っ直ぐ直進をして距離を詰めていた。



「(だが、攻撃をすり抜けるだけで透明化を解いた辺り…チカラのコントロールはし切れておらず…其の時間の制限は余りに多い…ならば…消耗戦と行こうか…)」



マッドは唸る両腕のファングからマグマの熱
を放出し、シャーレを狙う。

しかも、其の攻撃は一点で終わらない。

ひたすらに何度も攻撃を繰り返した。

透明化になっては、解除を繰り返し其の攻撃
の波をやり過ごすシャーレだったが、連撃の
せいで間合いを詰められない。

体内の波動が段々と荒れて行くのが解る。



「(しまった…判断が異様に早い。やはり、此の男…単騎でも圧倒的な強さ…正面から正々堂々では…私がつけ込む隙は無いか…)」



シャーレも其の意図に気付いていた。

マッドとの消耗戦では部が悪い事も正面から
ぶつかる事での打開策の無さもだ。

目覚めた固有特性に依り、反撃の糸口を漸く
見出したシャーレだったが、一瞬にして形勢
は振り出しへと戻る事となった。



「どうした…回避だけでは私を打ち倒せぬぞ?」


「言われずとも…解っている……ッ」



焦りが、表情に浮かび始める。

固有特性は通常よりもギフトのチカラと波動
を消耗する事を今、肌身で感じたからだ。

時間の消耗は、シャーレにとって部が悪い事
を改めて自認した彼は、此処で行動に出た。

青龍刀を舞わせ、次縹色の激流を生み出した
シャーレは迫り来るマグマの中を身を透明化
させ一気に潜り抜けた。

更に、此処でまた一刀。

マッドの眼前で更なる激流を生み出す。

そして、マッドが其の激流ごと呑み込もうと
マグマの濁流を放った瞬間だった。

激流と共にシャーレの身体が水へと変化。

此処で特性“泡沫”を用いたのだ。


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