RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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最終篇第一章 “氷天氷地を制す者”

王家陥落を目指す者

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「聞こえなかったか…?儂は王家をぶっ壊す為に総てを裏切り此処へ来た…」


「……解らぬ。だとするなら…宰相ガズナと目的を共にしているでは無いか…。戯れは止せ…貴様は…王家側の者……其の王家すら裏切っていたと言うのか……?」



動揺を隠せないアビスに向けてガルフは氷の
大地を蹴り軽く刀を振り下ろす。

其れを刃で受け止めたアビスは混乱した表情
を浮かべてガルフの顔を見詰めた。

そして、ガルフが口を開く。



「しゃらくせぇ……根本が間違ってんだよ。お前等はな……宰相ガズナ率いる政府はケーニッヒ王家陥落を目指し、国の統治権を自分等の手の中に収めようとする勢力だ…」


「……当然だ。鎖国を敷いた此の国の象徴でたる国王が他国の女との間に…子を作っていたのだからな……」


「まあ、待て。此処からがお前等の知らねェ真実の話だ…」



刃同士を鍔迫り合いさせながら、言葉を互い
に交わして行く親と子。



「今、此の地に……王家を護ろうとする者は誰一人として居ねェんだよ…」


「………何を、言っている…」


「儂等が国王ストラーダ・ケーニッヒを死守しなきゃいけなくなった背景の話だ…」


「何も見えて来ぬぞ…ッ!?貴様の言葉からは……」


「ケーニッヒ王家…第十五代国王ストラーダ・ケーニッヒを中心に…帝国制度…いや、王政をぶち壊すのが儂等の目的だ……」



アビスが完全に動きを止める。

均衡していた鍔迫り合いも解かれ、背後へと
一歩下がったアビスが刀をぶらんと降ろして
脱力した表情を見せた。



「儂等が此の戦いで得ようとしているモノとは…“新たな時代”というワケだ…アビスよ」



きっと、頭が追い付いていないのは目の前の
アビスだけでは無いだろう。

王政を壊す為に、国王を奪還する。

余りにも矛盾した話の様に聞こえたからだ。



「王政を壊し、国の統治権を一部の格差社会の上に立つ者達から引き剥がす。其の先に得た未来の話をして…死蜘蛛狂天ディルは護国師団反乱軍と独立師団革命軍を口説き落として勢力に加える事に成功した…」



開いた口の塞がらないアビスを前にしガルフ
はゆったりと説明を続けて行く。



「時代に血塗られて出来た今の格差社会を壊し“士農工商”に区分けされ、人の命の価値を分け隔てた悪しき“法”を無に還すんだよ…」


「……馬鹿な…。そんな事をすればどれだけの混乱を国に招くと思っている…ッ!?」


「しゃらくせぇ…混乱すんのは…格差社会に胡座を掻いて来た一部の権力者の豚共だけだッ!!奴隷と呼ばれる一族の罪を背負って来た者達や…低い地位で毎日に困窮している者達を救う事が出来る…」



漸く振り絞った声もガルフの言葉と其の覚悟
に気圧されてアビスは、また黙り込む。

そして、ガルフは此の目的を初めて知った日
を想起して、天を仰いだー。
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