RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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最終篇第六章 “導かれる魂”

八岐の皇帝

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終幕の刻は、近い。

国王直下帝国軍元帥ロスト・ヘルウェイドが
遂に覚醒のチカラを解放した。

黒き鎧に身を包み、般若の様な鬼の面を其の
顔に被せ、光を鎖す姿を見せる。

そして、身体に宿した闇の中から闇龍の鱗を
纏いし八本の首が出現する。

モチーフは、八岐大蛇。

八本の首の先から凶暴な龍蛇の口が獲物へと
狙いを定め叫びと共にうねり動き始めた。



「…ッ……何だ此の…重たい空気は……」


「総てを押し潰す様な迄の威圧……此れがロスト殿の……暗黒のギフトの覚醒……」


「っ……いったいっ……頭の奥まで灼き切れるんじゃないかってぐらいの…痛みが…っ…」


「バカげすぎやろッ!!なんやッ、なんやッ……このバケモンはァァ!!」



ロストの覚醒が齎す、威圧、そして重圧。

特性“暗転”に依り視界は奪われ、其の姿すら
目に映す事は叶わずとも其の異様さ、異質さ
を理解するには充分な程のチカラ。

闇にたじろぎ、惑うシャーレ達の背後で必死
にロードに回復の特性を充てがうシェリーの
身体もブルブルと震え始める。



「無に還れ…」



ロストの言葉と共に、遂に闇の中から其の首
を伸ばし涎を垂らしながら命令を待っていた
蛇龍達が堰を切った様に動き出す。

動きに推進力を加え、加速した蛇龍達は其の
脳天でシャーレ達の身体に頭突きを始める。

其れは、一度で留まる事を知らない。

二頭ずつの蛇龍が一人を囲い、輪を描く様に
頭突きの連撃を始めたのだ。

しかも、シャーレ達は揃って覚醒のチカラも
ギフトのチカラも奪われ、更には其の視界に
映す景色等、今は無いのだ。

ただ、一方的にやられ続けるシャーレ達の声
は途端に悲鳴や呻きへと変わる。

其の痛々しい声が背後で膝を着いてロードの
回復に努めていたシェリーの手を鈍らせる。



「ロスト様っ!!も、もう……お止めになってくださいっ!!」



シェリーの瞳にも光は消えた。

何も見えない中でも、シャーレ達の其の声に
既に命の灯が消え入りそうなのを感じた。

そして、叫ぶ。

だが、ロストの攻勢は止まらない。

悲鳴や呻き、シェリーの耳をつん裂く悲痛な
声が次第に止んで行くのを感じた。

其れは、ロストの攻勢が止んだからでは無く
叫ぶ気力を皆が失い掛けて居たからだ。



「運が悪かったんだよ…テメェ等はな…」



冷たいロストの声が闇に溶けて行く。

王女は涙ながらに声を涸らして叫ぶ。

もう、為す術は無い。

シェリーの掌からも治癒の光が段々と薄れて
消えて行くのが脈々と感じられた。



「そ、そんな……結局、私は……何もできないままで終わるのですか…イヤ……イヤですっ!!そんなのはっっ!!」



シェリーの願いは、闇の中に掻き消される。

そう、思った瞬間、だった。

暗黒の球体に包まれた天空天守に鳴り響くは
六つの足音、其の足音は先陣の者の音を頼り
にロストへと真っ直ぐに向かうー。
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