『数億光年離れた遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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9章 不確実な記憶の世界で

1話 不確実な記憶の世界で

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あゆみとバイカルが車に飛び乗ると、砂糖さんは素早く車を走らせた。

「イエ―イ、スリルとサスペンスでございます!」

砂糖さんは叫ぶと、戒厳令下の首都をカーチェイスし始めた。


【スリル】はともかく【サスペンス】とは何ぞや?


なんて疑問を思っている暇など、あゆみにはなく

「砂糖さん!砂糖さん!誰も追ってこないから落ち着いて!厳戒態令下ですよ」

と叫んだ。


今は一般アンドロイドに過ぎない、ソフィーやデューカが追いかけてくる気配など全くないのだ。


「すべてわたくしにお任せください!」

そう言う砂糖さんの顔は完全にヒーローだった。

それはとても頼もしい顔つきではあるのだが、今、ヒーローである必要など全くなかった!



『安物は暴走しやすいって言うけど、さすが最安値だな』

助手席のバイカルが落ち着いた様子で言ったので、あゆみは

「お前!止めろよ!こんな所で目立ったら大変なんだぞ!」


バイカルが『解ったよ』って目をして、止めようとする寸前、

「ちょっと待って!ペットに過ぎない白虎が、最安値とは言え人型アンドロイドの動きを止めるのは、変だ。逆に暴走するペットと思われて、通報される!」


どうすれば?


あゆみは素早くキャンプ用の充電器のコードを引き抜き、砂糖さんの中央処理装置に電流を、バリバリと。

砂糖さんは静止し、バイカルは素早くハンドルを掴んだ。


バイカルは冷めた目で、


『お前、酷いな』

「砂糖さんには、とりあえず急に雷が落ちたってことに」

『お前、酷いな』


他にどうしろと?



何事もなく、駐車場に車を停めると、砂糖さんの修理を始めた。


シュガーコート177は壊れやすいので、あゆみはいつしか修理慣れしていた。

さらに壊れることを前提としたシステムなので、修理は簡単だ。


『大丈夫か?』

「ああ、多分、どこも壊れていない」

繊細さの欠片もない機体だけど、それはそれである意味良い機体だ。


「ほら」


「あれ?わたくしどうかしました?」

『急に雷が落ちてきて、びっくりしたよ』


あゆみの代わりにバイカルが答えた。

あゆみは、そんなバイカルが好きだ。


「申し訳ありません。皆さまを守るのがわたくしの使命にも関わらず」

砂糖さんに謝られると、ちょっと申し訳ない。


砂糖さんは、車のダッシュボードに置いてあった消しゴムサイズの外部記憶装置らしきものを取り、自分に接続しようとした。


あゆみもバイカルも知らない外部記憶装置だ。

「えっ何してるんですか!」

あゆみの言葉と同時にバイカルが止めた。

見ず知らずの外部記憶装置を簡単に接続するなんて、非常識にも程がある。


なぜそんなものが車のダッシュボードに置いてあるのか?

誰が置いたものなのか?

そしていつ置いたのか?

解らないことだらけだ。


「ちょっと見せて見ろ」

機械ネズミのアルバムさんが言った。

アルバムさんは、それをパソコンに接続し、

「あ~これは、シュガーコートの正規の更新プログラムだな」

「なんで正規の更新プログラムが、車のダッシュボートに置いてあるんだよ」

「誰かが置いたんだろう」

「誰が?」

「それは知らん」


あゆみは砂糖さんを見た。砂糖さんは、

「時々あるんです、身に覚えのない外部記憶装置が置かれていることが」

「どんなシステムだよ!メンテナンス企業としておかしいだろ!」


もしかすると、シュガーコート社は、秘密結社サイン コサイン タンジェントの類だろうか?


【秘密結社サイン コサイン タンジェント】


実質、あゆみもバイカルもそれらも事を、ほとんど知らない。


なのになぜあゆみとバイカルは、それらに属していると言えるのか、あゆみとバイカルにも解らなかった。


機械ネズミのアルバムさんは、機械猫たちを見つめると

「どこかで記憶が欠落しているのかも」

と自信満々に言った。

だが、この機械ネズミは自身の名前を忘れたことを知らない。



つづく




機械の猫たち



【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。


機械のネズミ

【アルバム】機械猫より賢そうだが、本体の記憶容量は少な目。


人型アンドロイド

【砂糖さん】シュガーコート177。あゆみとバイカルが買ったアンドロイド。

【シュガーコート001】もっともお手頃なお値段のアンドロイド。


【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド

【デューカ】ソフィーの相方


【猫】黒猫と白猫
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