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case16_私の居ないところで事態は動くみたいです(別視点)
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私の名は捌海・サリエット=リゼンス。
『魔女』としてはセルトニティ・ロジルマータという名前を持っているの。
”白焔”の異名を賜る魔女。
『ピュアパール』という『魔導士協会』内の一派、その筆頭格でもある、白い魔女服――裏地は赤い――姿の私は、所属する派閥の対極に位置する『クリムゾンルビー』という一派の監視を行い、組織全体の調和の一端を担っています。
故あって今は、仕事の傍ら、知人の娘のお世話もしているの。
忙しい日々を送っているのだけれど、私のささやかな贈り物で彼女も健やかに送れているようで、なかなか充実した毎日になっているわ。
白い部屋の中、中央に配置された丸い机を囲む内の一つの椅子に座って、大きく背伸びをすると、こちらに向かう足音が聞こえてきます。
出てきたのは、二人の美少女。
私の可愛い部下、五人居る内の二人。
「セルト姉、待ったか?」
そう朗らかに声をかけるのは、肩の辺りまで伸びた赤い髪と、中学生ながらグラマーボディが際立つ、黒い薄着と赤いショートジャケットと赤紫のジーンズを履いた姿の少女。
名前を亜真香 悠那。『魔法少女』としては氷を操る魔法少女、ルミナフェルクを名乗っているわ。
私程では無いけど、体の主張が強く、露出も多いかも? まあ、許容範囲ではあるけれど。
使い古した黒いスニーカーの足を止め、『魔女』としての名の愛称で呼びつつ、黄色くクリアな瞳を向けて、私に手を軽く振ります。
「先程来たところよ。それで、収穫はあった?」
彼女の背後から現れたのは、こちらも中学生の、半透明な質感の緑髪のすらっとした少女。
名前を翠川 江麗。『魔法少女』としては雷を操る魔法少女、パースグレンナと名乗っているわ。
深緑のブラウジングブラウスと黒のスイングスカート、それから履いている黒のブーツがよく似合っているわね。
「今日スティングレイの尖兵と、『曰く付き』…ネルベノゥルレネーに会った」
あらあら。今回は多歌羅市の巡回を頼んでいたのだけど、巡り合わせってものはあり得るのね。
無傷で帰ってこれたのは奇跡だわ。まずはこの子の話を聞きましょう。
「そう。…どうだった? 彼女は」
「…強すぎ。魔法に対する理解も知識も乏しい段階の筈なのに『黒変異体』に張り合えるとか」
『黒変異体』。それは『歪曲獣』の中から時折出現する、進化した強い個体の別称。
数多の魔導士と戦ったからとか、食べたものの掛け合わせが進化を促したとか、『黒変異体』同士の配合により生まれたとか、進化の経緯は色々ある厄介の存在の一つ。
それを聞いた瞬間、悠那ちゃんは口元に笑みを浮かべて、私の向かい側の席に座っていた少年少女三人は個人差はあれど驚きに身を震わせました。
江麗ちゃんの言葉に、悠那ちゃんが加わります。
「予想だと撃破スコアは既に3あるらしいぜ」
「何の?」
江麗ちゃんの当然とも言える問いに対して、悠那ちゃんは口角の上がり具合を強めて、不敵に笑います。
「そいつが倒した『黒変異体』の数だよ」
今回が初めてでは無かったのね。ネルベノゥルレネー、とんでもない強さの子。
江麗ちゃんは諦め気味に大きくため息を吐き、その情報の更新をします。
「…今回で5。一人だけでスティングレイタイプ二体も倒すとか……」
「万が一、お前が敵意を剥き出しにしてたらやばかったなぁ、ははっ!」
そうね。ひょっとしなくても、他の派閥の皆も喉から手が出る程欲しい逸材になるわ。
『シャドウオニキス』や『スカイサファイア』はまだ良識的な判断を取るかも知れないけれど…『ワイルドエメラルド』と『アルカナアメジスト』はどう動くかしら。
今後の課題にネルベノゥルレネー、改めレネーちゃんの『ピュアパール』主導での保護を加えた方が良さそうね。
…それにしても、レネーって、何処かで聞き覚えのある響きのような……まあ、それはさておき。
「…その子の話はそれくらいにしましょう。悠那は何か持ち帰れたの?」
「おう」
今度は悠那ちゃんに報告を促すと、彼女は表情を少しだけ変え――不敵な笑みはあまり変わっていない気がするけれど――、報告を始めたわ。
「『クリムゾンルビー』に動きがあった。どうやらその『曰く付き』に逃げられたらしいな。今は誰の責任かをはっきりさせる為に内輪揉め起こしてるよ」
あら、江麗ちゃんの続きのような形になるのね。
『クリムゾンルビー』の面々も思うように事が運ばず苛立っている、と。
江麗ちゃんは、心当たりのある素振りで呟きます。
「あの再試験の紙はやっぱり罠だったのか……」
今日は再試験なんて予定は無かったはずだけど、最初の試験で合格出来なかったレネーちゃんは本物と思い込んでしまって来てしまったのね。
すると、悠那ちゃんが隣の江麗ちゃんを肘で突っつきます。
「何だよ江麗。何か知ってるなら先に言えって~」
「普通報告の内容が被ってるなんて思わない。ましてや、私自身が遭遇した事に関わりがあるなんて」
それもそうね。江麗ちゃんと悠那ちゃんにはそれぞれ別の任務を与えていたもの。
江麗ちゃんには妙な魔力反応があるから確かめに向かって欲しいと頼み、悠那ちゃんには『クリムゾンルビー』に怪しい動きがあるから調べて欲しいと頼んでいたの。
普通、それらが繋がるなんて予想出来ないわよね。
ここは、江麗ちゃんに事情を説明してもらいましょうか。
「江麗ちゃん、何があったのか、詳しく教えてくれる?」
「実は――」
江麗ちゃんはありのままに見聞きした事を教えてくれたわ。
スティングレイタイプとの遭遇、その現場でのレネーちゃんの観測、そして共闘。
戦いを終え、レネーちゃん宛に来た再試験の知らせが『クリムゾンルビー』の仕業だと分かり、彼女を護衛する事に。
聞き終えた瞬間、悠那ちゃんはお腹を抱えて笑い出したわ。
「――だっはっはっはっ! あいつらもスティングレイが来るなんて想定して無かったのか、あっはっはっ!!」
「再試験と偽ってレネーちゃんを誘い込もうとしてたのね…」
スティングレイタイプの出現は向こうにとっても想定外だったのかしら。
まあ、『クリムゾンルビー』の計画通りに事が進まなくて良かったわね。
もし、知らずの内にそんな事になっていたらと思うと……ゾッとするわ。
「スティングレイの尖兵を倒した後、私が自宅まで護衛しました。…まさかあの人と彼女が関わりを持ってるとは思わなかったけど……」
「あの人?」
「『シャドウオニキス』の英雄。護衛の件を相談したら、私だと手に余るから仲間に伝えて帰れ、って」
悠那ちゃんが何気なく問うた事で出てきたフレーズに、私は驚き焦ります。
…まあ、それはほんの一瞬だけで、他の誰にも悟られないよう取り繕ったのだけれど。
まさかとは思うけど……あの子じゃないわよね……。
偶然と思えないくらい共通点が多い気がするけれど。
「まあ、あの人はあの人で何か事情があるみたいだし? 報告はこれくらいにしましょう。今日はもう疲れただろうし、皆、ゆっくりお休みなさい」
「……おう。じゃあ、また明日なセルト姉」
私の発言は怪しいものだったかしら。
悠那ちゃんの怪しむ素振りを何とか掻い潜り、私は各々の部屋へ戻っていく彼女らの後ろ姿が見えなくなって、安堵します。
「あの人に連絡しておくべきかしら…でも、何かあってからじゃ、迷惑がられるだけだし……うーん………」
結局、その日に連絡出来ずに私は頭を悩ませながら、自室に戻って眠りに付いたわ。
『ピュアパール』所属、セルトニティ様の配下である、私達に使用が許可されている寝室内にて。
「隠し事してるな、多分」
翠川 江麗――以下、私は三段ベッドの一番上、私の一段上の布団に潜り込んだ青髪の彼――坂崎 太一の言葉に驚いた。
私達のグループの唯一の男にして、主に『歪曲獣』関連の人命救助を優先して行う土の『魔導士』、ベルティゲンでもある彼はセルトニティ様の様子の違和感を少しの材料だけで見抜いたようで。
「それって、『シャドウオニキス』の英雄が言ったように、私達の手に余るって事っすよね」
そこに加わるのは三段ベッドの向こう側に配置された二段ベッドの一段目に潜るメルダトゥーノ――索敵、被害の修復を担当する『魔法少女』を務める、茶髪の少女、雨城 遥華。
彼女もそうだが、この寝室に居る誰もが上司であるセルトニティ様を疑っていなかった。
「だろうな。セルト姉が隠し事する時は決まってそういう時だ」
更に、三段ベッドの一段目に居る悠那が顔を出して加わる。
余談だが、実の姉のように慕っているセルトニティ様をこのような愛称で呼ぶのは悠那と、メンバー内で末っ子のような扱いである九酒 花恋だけ。
本来は様付けしなければならないが、セルトニティ様からの受けが良いという事で黙認されていた。
「無条件で信じられる程、僕達はまだ強くは無いと。あの人はそう言いたい訳だ」
「まだまだ鍛錬がいる。アタシらが信頼を勝ち得る為にはな」
「そういう事っすね」
太一の発言から始まった就寝前のやり取りだけど、どうにか穏便な方向で纏まりそう。
私が加わる必要は最初から無かったようで安心。
そう言えば、花恋が会話に混ざっていないな、と思い花恋の寝る、二段ベッドの上段を見ると…。
「すぅ…すぅ……」
銀髪の幼い少女は、布団を掛けて既に就寝中だった。
難しそうな話だったから、子守唄になってしまったようだ。
まあ、寝る子は育つと言うし、私達も彼女に倣って眠るとしよう。
明日以降は、忙しくなる。そんな気がする。
私もまた、静かになった寝室の中で、眠気に身を委ねていく。
(そう言えば、セルトニティ様にレネーの本名を伝えてなかったな……)
それはそれで何かトラブルが起きそうな気がして。結局言えなかった。
あの場で言えていたら、何か変わった気がする。
そんな後悔を抱えつつも、私もまた眠りの世界へ落ちていく。
『魔女』としてはセルトニティ・ロジルマータという名前を持っているの。
”白焔”の異名を賜る魔女。
『ピュアパール』という『魔導士協会』内の一派、その筆頭格でもある、白い魔女服――裏地は赤い――姿の私は、所属する派閥の対極に位置する『クリムゾンルビー』という一派の監視を行い、組織全体の調和の一端を担っています。
故あって今は、仕事の傍ら、知人の娘のお世話もしているの。
忙しい日々を送っているのだけれど、私のささやかな贈り物で彼女も健やかに送れているようで、なかなか充実した毎日になっているわ。
白い部屋の中、中央に配置された丸い机を囲む内の一つの椅子に座って、大きく背伸びをすると、こちらに向かう足音が聞こえてきます。
出てきたのは、二人の美少女。
私の可愛い部下、五人居る内の二人。
「セルト姉、待ったか?」
そう朗らかに声をかけるのは、肩の辺りまで伸びた赤い髪と、中学生ながらグラマーボディが際立つ、黒い薄着と赤いショートジャケットと赤紫のジーンズを履いた姿の少女。
名前を亜真香 悠那。『魔法少女』としては氷を操る魔法少女、ルミナフェルクを名乗っているわ。
私程では無いけど、体の主張が強く、露出も多いかも? まあ、許容範囲ではあるけれど。
使い古した黒いスニーカーの足を止め、『魔女』としての名の愛称で呼びつつ、黄色くクリアな瞳を向けて、私に手を軽く振ります。
「先程来たところよ。それで、収穫はあった?」
彼女の背後から現れたのは、こちらも中学生の、半透明な質感の緑髪のすらっとした少女。
名前を翠川 江麗。『魔法少女』としては雷を操る魔法少女、パースグレンナと名乗っているわ。
深緑のブラウジングブラウスと黒のスイングスカート、それから履いている黒のブーツがよく似合っているわね。
「今日スティングレイの尖兵と、『曰く付き』…ネルベノゥルレネーに会った」
あらあら。今回は多歌羅市の巡回を頼んでいたのだけど、巡り合わせってものはあり得るのね。
無傷で帰ってこれたのは奇跡だわ。まずはこの子の話を聞きましょう。
「そう。…どうだった? 彼女は」
「…強すぎ。魔法に対する理解も知識も乏しい段階の筈なのに『黒変異体』に張り合えるとか」
『黒変異体』。それは『歪曲獣』の中から時折出現する、進化した強い個体の別称。
数多の魔導士と戦ったからとか、食べたものの掛け合わせが進化を促したとか、『黒変異体』同士の配合により生まれたとか、進化の経緯は色々ある厄介の存在の一つ。
それを聞いた瞬間、悠那ちゃんは口元に笑みを浮かべて、私の向かい側の席に座っていた少年少女三人は個人差はあれど驚きに身を震わせました。
江麗ちゃんの言葉に、悠那ちゃんが加わります。
「予想だと撃破スコアは既に3あるらしいぜ」
「何の?」
江麗ちゃんの当然とも言える問いに対して、悠那ちゃんは口角の上がり具合を強めて、不敵に笑います。
「そいつが倒した『黒変異体』の数だよ」
今回が初めてでは無かったのね。ネルベノゥルレネー、とんでもない強さの子。
江麗ちゃんは諦め気味に大きくため息を吐き、その情報の更新をします。
「…今回で5。一人だけでスティングレイタイプ二体も倒すとか……」
「万が一、お前が敵意を剥き出しにしてたらやばかったなぁ、ははっ!」
そうね。ひょっとしなくても、他の派閥の皆も喉から手が出る程欲しい逸材になるわ。
『シャドウオニキス』や『スカイサファイア』はまだ良識的な判断を取るかも知れないけれど…『ワイルドエメラルド』と『アルカナアメジスト』はどう動くかしら。
今後の課題にネルベノゥルレネー、改めレネーちゃんの『ピュアパール』主導での保護を加えた方が良さそうね。
…それにしても、レネーって、何処かで聞き覚えのある響きのような……まあ、それはさておき。
「…その子の話はそれくらいにしましょう。悠那は何か持ち帰れたの?」
「おう」
今度は悠那ちゃんに報告を促すと、彼女は表情を少しだけ変え――不敵な笑みはあまり変わっていない気がするけれど――、報告を始めたわ。
「『クリムゾンルビー』に動きがあった。どうやらその『曰く付き』に逃げられたらしいな。今は誰の責任かをはっきりさせる為に内輪揉め起こしてるよ」
あら、江麗ちゃんの続きのような形になるのね。
『クリムゾンルビー』の面々も思うように事が運ばず苛立っている、と。
江麗ちゃんは、心当たりのある素振りで呟きます。
「あの再試験の紙はやっぱり罠だったのか……」
今日は再試験なんて予定は無かったはずだけど、最初の試験で合格出来なかったレネーちゃんは本物と思い込んでしまって来てしまったのね。
すると、悠那ちゃんが隣の江麗ちゃんを肘で突っつきます。
「何だよ江麗。何か知ってるなら先に言えって~」
「普通報告の内容が被ってるなんて思わない。ましてや、私自身が遭遇した事に関わりがあるなんて」
それもそうね。江麗ちゃんと悠那ちゃんにはそれぞれ別の任務を与えていたもの。
江麗ちゃんには妙な魔力反応があるから確かめに向かって欲しいと頼み、悠那ちゃんには『クリムゾンルビー』に怪しい動きがあるから調べて欲しいと頼んでいたの。
普通、それらが繋がるなんて予想出来ないわよね。
ここは、江麗ちゃんに事情を説明してもらいましょうか。
「江麗ちゃん、何があったのか、詳しく教えてくれる?」
「実は――」
江麗ちゃんはありのままに見聞きした事を教えてくれたわ。
スティングレイタイプとの遭遇、その現場でのレネーちゃんの観測、そして共闘。
戦いを終え、レネーちゃん宛に来た再試験の知らせが『クリムゾンルビー』の仕業だと分かり、彼女を護衛する事に。
聞き終えた瞬間、悠那ちゃんはお腹を抱えて笑い出したわ。
「――だっはっはっはっ! あいつらもスティングレイが来るなんて想定して無かったのか、あっはっはっ!!」
「再試験と偽ってレネーちゃんを誘い込もうとしてたのね…」
スティングレイタイプの出現は向こうにとっても想定外だったのかしら。
まあ、『クリムゾンルビー』の計画通りに事が進まなくて良かったわね。
もし、知らずの内にそんな事になっていたらと思うと……ゾッとするわ。
「スティングレイの尖兵を倒した後、私が自宅まで護衛しました。…まさかあの人と彼女が関わりを持ってるとは思わなかったけど……」
「あの人?」
「『シャドウオニキス』の英雄。護衛の件を相談したら、私だと手に余るから仲間に伝えて帰れ、って」
悠那ちゃんが何気なく問うた事で出てきたフレーズに、私は驚き焦ります。
…まあ、それはほんの一瞬だけで、他の誰にも悟られないよう取り繕ったのだけれど。
まさかとは思うけど……あの子じゃないわよね……。
偶然と思えないくらい共通点が多い気がするけれど。
「まあ、あの人はあの人で何か事情があるみたいだし? 報告はこれくらいにしましょう。今日はもう疲れただろうし、皆、ゆっくりお休みなさい」
「……おう。じゃあ、また明日なセルト姉」
私の発言は怪しいものだったかしら。
悠那ちゃんの怪しむ素振りを何とか掻い潜り、私は各々の部屋へ戻っていく彼女らの後ろ姿が見えなくなって、安堵します。
「あの人に連絡しておくべきかしら…でも、何かあってからじゃ、迷惑がられるだけだし……うーん………」
結局、その日に連絡出来ずに私は頭を悩ませながら、自室に戻って眠りに付いたわ。
『ピュアパール』所属、セルトニティ様の配下である、私達に使用が許可されている寝室内にて。
「隠し事してるな、多分」
翠川 江麗――以下、私は三段ベッドの一番上、私の一段上の布団に潜り込んだ青髪の彼――坂崎 太一の言葉に驚いた。
私達のグループの唯一の男にして、主に『歪曲獣』関連の人命救助を優先して行う土の『魔導士』、ベルティゲンでもある彼はセルトニティ様の様子の違和感を少しの材料だけで見抜いたようで。
「それって、『シャドウオニキス』の英雄が言ったように、私達の手に余るって事っすよね」
そこに加わるのは三段ベッドの向こう側に配置された二段ベッドの一段目に潜るメルダトゥーノ――索敵、被害の修復を担当する『魔法少女』を務める、茶髪の少女、雨城 遥華。
彼女もそうだが、この寝室に居る誰もが上司であるセルトニティ様を疑っていなかった。
「だろうな。セルト姉が隠し事する時は決まってそういう時だ」
更に、三段ベッドの一段目に居る悠那が顔を出して加わる。
余談だが、実の姉のように慕っているセルトニティ様をこのような愛称で呼ぶのは悠那と、メンバー内で末っ子のような扱いである九酒 花恋だけ。
本来は様付けしなければならないが、セルトニティ様からの受けが良いという事で黙認されていた。
「無条件で信じられる程、僕達はまだ強くは無いと。あの人はそう言いたい訳だ」
「まだまだ鍛錬がいる。アタシらが信頼を勝ち得る為にはな」
「そういう事っすね」
太一の発言から始まった就寝前のやり取りだけど、どうにか穏便な方向で纏まりそう。
私が加わる必要は最初から無かったようで安心。
そう言えば、花恋が会話に混ざっていないな、と思い花恋の寝る、二段ベッドの上段を見ると…。
「すぅ…すぅ……」
銀髪の幼い少女は、布団を掛けて既に就寝中だった。
難しそうな話だったから、子守唄になってしまったようだ。
まあ、寝る子は育つと言うし、私達も彼女に倣って眠るとしよう。
明日以降は、忙しくなる。そんな気がする。
私もまた、静かになった寝室の中で、眠気に身を委ねていく。
(そう言えば、セルトニティ様にレネーの本名を伝えてなかったな……)
それはそれで何かトラブルが起きそうな気がして。結局言えなかった。
あの場で言えていたら、何か変わった気がする。
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