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10.ティホーク砦
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「……ってわけで、魔法と剣技の融合で、ばったばったと敵を倒していったのさ」
ブリーツが、ティホーク砦の石造りの廊下を歩きながら、自慢そうに言った。
「凄ーい!」
ブリーツの右隣を歩いているマリーが大きめの声で驚いた。彼女は紫色のショートヘアに、眼鏡をかけた容姿をしている。マリーは眼鏡のせいで一見おとなしそうに見えるが、かなり活発な性格で、声色も幼い。
「いやあ、今日から俺もエースだなぁ」
「あんたさ、闇雲に魔法を打って、敵の注意を惹いてただけでしょ。倒したのは殆ど私じゃない」
ブリーツの左隣を歩きながら、サフィーが不機嫌そうに言った。
「ありゃ、そうだったか?」
「ナイトウィザードも、結局、大掛かりな修理をしないと使い物にならなくなっちゃったし。あんた、乗った機体を壊す趣味でもあるわけ?」
「いや、特に趣味というわけじゃないが……面白そうだし始めてみるか」
「始めるな!」
サフィーが無意識のうちに突っ込みを入れる。
「あはは! 面白い人だね、ブリーツさん」
マリーが体を仰け反らせて笑った。
「とんでもない。こいつと一緒に居ても疲れるだけよ。敵機を撃墜したのも、私やマクスン副師団長の方が断然多いんだから」
サフィーは口を尖らせてじとりとした目をブリーツに向けている。
「いや、エースクラスと比べられてもな」
「あら、今日からエースじゃなかったの?」
サフィーの言葉を聞いたブリーツは、沈黙した。
「……ところで、最近何か面白いこととかないのかい?」
少しの沈黙の後、口を開いたブリーツの声は、とても軽やかだ。
「しれっと話題を変えるな!」
サフィーが眉毛をピクピクさせて苛立っている。
「面白いことか……そういえば、不思議なことなんだけどね。私達がこの砦に来てから、鼠とか、カラスとか、蝙蝠とかの……えーと、つまり、ここを住処にしてる獣がが少なくなってるみたいなの」
マリーが顎に人差し指を当てて、思い起こしながら言った。
「マングースでも放したのか?」
「それ、なんか違う!」
サフィーは適当に突っ込みを入れたが、そのまま話し始めた。
「でも、確かに不思議ね、それ。私達が来る前にも駐留部隊は居たわけだから、人から逃げて減ったってのも違うでしょ?」
「んー……それもあるかもしれないけど、今も段々見かけなくなってるし、違うよねえ」
マリーは相変わらず人差し指を顎に当てながら話している。
「そうよね……うーん……段々減ってるってのも、良く分からないし……あ、私の部屋、ここだから」
サフィーが扉の前で立ち止まった。
「うん、じゃあね、サフィー」
マリーがサフィーに手を振りながら、引き続き歩みを進めた。
「奇遇だな、俺の部屋もこの辺なんだ」
ブリーツも立ち止まって、そう言った。
「そうなんだ。それじゃ、ブリーツさんもじゃあね!」
マリーはブリーツにも手を振りながら歩いていった。
「……何であんた、私の近くの部屋なのよ」
サフィーが凄く不機嫌そうに、うんざりしたような声を上げた。性格もわけが分からなければ、行動もわけが分からない。こんな変な奴には出来るだけ関わらないようにしたいと、サフィーは心底思っていた。
「いやあ、すまないな、こればっかりは自分で決められないからな」
「分かってるけど……まあいいわ。それじゃあね、ブリーツ」
「おう!」
ブリーツの、やけに元気な声を聞いて、更にうんざりして、半ば項垂れながら、サフィーは寄りかかるようにドアを開けて自室に入り、ブリーツもそれに続いた。
「……って、何であんたが入ってくるのよ!」
「何でって、俺の部屋だから」
「ここは私の部屋よ!」
「そうだけど、俺の部屋でもある」
ブリーツは、ローブのポケットから一枚の紙を取り出し、サフィーに見せた。その紙には、確かにこの部屋の番号が書いてある。
「うそ……ほんと……?」
サフィーが放心状態で言った。今にも倒れそうだ。
「まあ、くつろいでくれって。サフィーは俺の命の恩人だからな。悪いようにはしねえよ」
「なによそれ! てか、何で女のあたしの部屋に、男のあんたが来んのよ!」
この砦の部屋は、大体が男だけの部屋か女だけの部屋だ。サフィーはてっきり、女のルームメイトが来るものだと思っていた。
「おっと、いきなり男と女の関係を所望かい?」
「や……やだ! やめてよ! 冗談になってない!」
サフィーは顔を真っ赤にすると、急いでベッドに潜り込み、布団をかぶった。その日、サフィーは努めてブリーツと顔を合わせないようにして、一日を過ごしたのだった。
ブリーツが、ティホーク砦の石造りの廊下を歩きながら、自慢そうに言った。
「凄ーい!」
ブリーツの右隣を歩いているマリーが大きめの声で驚いた。彼女は紫色のショートヘアに、眼鏡をかけた容姿をしている。マリーは眼鏡のせいで一見おとなしそうに見えるが、かなり活発な性格で、声色も幼い。
「いやあ、今日から俺もエースだなぁ」
「あんたさ、闇雲に魔法を打って、敵の注意を惹いてただけでしょ。倒したのは殆ど私じゃない」
ブリーツの左隣を歩きながら、サフィーが不機嫌そうに言った。
「ありゃ、そうだったか?」
「ナイトウィザードも、結局、大掛かりな修理をしないと使い物にならなくなっちゃったし。あんた、乗った機体を壊す趣味でもあるわけ?」
「いや、特に趣味というわけじゃないが……面白そうだし始めてみるか」
「始めるな!」
サフィーが無意識のうちに突っ込みを入れる。
「あはは! 面白い人だね、ブリーツさん」
マリーが体を仰け反らせて笑った。
「とんでもない。こいつと一緒に居ても疲れるだけよ。敵機を撃墜したのも、私やマクスン副師団長の方が断然多いんだから」
サフィーは口を尖らせてじとりとした目をブリーツに向けている。
「いや、エースクラスと比べられてもな」
「あら、今日からエースじゃなかったの?」
サフィーの言葉を聞いたブリーツは、沈黙した。
「……ところで、最近何か面白いこととかないのかい?」
少しの沈黙の後、口を開いたブリーツの声は、とても軽やかだ。
「しれっと話題を変えるな!」
サフィーが眉毛をピクピクさせて苛立っている。
「面白いことか……そういえば、不思議なことなんだけどね。私達がこの砦に来てから、鼠とか、カラスとか、蝙蝠とかの……えーと、つまり、ここを住処にしてる獣がが少なくなってるみたいなの」
マリーが顎に人差し指を当てて、思い起こしながら言った。
「マングースでも放したのか?」
「それ、なんか違う!」
サフィーは適当に突っ込みを入れたが、そのまま話し始めた。
「でも、確かに不思議ね、それ。私達が来る前にも駐留部隊は居たわけだから、人から逃げて減ったってのも違うでしょ?」
「んー……それもあるかもしれないけど、今も段々見かけなくなってるし、違うよねえ」
マリーは相変わらず人差し指を顎に当てながら話している。
「そうよね……うーん……段々減ってるってのも、良く分からないし……あ、私の部屋、ここだから」
サフィーが扉の前で立ち止まった。
「うん、じゃあね、サフィー」
マリーがサフィーに手を振りながら、引き続き歩みを進めた。
「奇遇だな、俺の部屋もこの辺なんだ」
ブリーツも立ち止まって、そう言った。
「そうなんだ。それじゃ、ブリーツさんもじゃあね!」
マリーはブリーツにも手を振りながら歩いていった。
「……何であんた、私の近くの部屋なのよ」
サフィーが凄く不機嫌そうに、うんざりしたような声を上げた。性格もわけが分からなければ、行動もわけが分からない。こんな変な奴には出来るだけ関わらないようにしたいと、サフィーは心底思っていた。
「いやあ、すまないな、こればっかりは自分で決められないからな」
「分かってるけど……まあいいわ。それじゃあね、ブリーツ」
「おう!」
ブリーツの、やけに元気な声を聞いて、更にうんざりして、半ば項垂れながら、サフィーは寄りかかるようにドアを開けて自室に入り、ブリーツもそれに続いた。
「……って、何であんたが入ってくるのよ!」
「何でって、俺の部屋だから」
「ここは私の部屋よ!」
「そうだけど、俺の部屋でもある」
ブリーツは、ローブのポケットから一枚の紙を取り出し、サフィーに見せた。その紙には、確かにこの部屋の番号が書いてある。
「うそ……ほんと……?」
サフィーが放心状態で言った。今にも倒れそうだ。
「まあ、くつろいでくれって。サフィーは俺の命の恩人だからな。悪いようにはしねえよ」
「なによそれ! てか、何で女のあたしの部屋に、男のあんたが来んのよ!」
この砦の部屋は、大体が男だけの部屋か女だけの部屋だ。サフィーはてっきり、女のルームメイトが来るものだと思っていた。
「おっと、いきなり男と女の関係を所望かい?」
「や……やだ! やめてよ! 冗談になってない!」
サフィーは顔を真っ赤にすると、急いでベッドに潜り込み、布団をかぶった。その日、サフィーは努めてブリーツと顔を合わせないようにして、一日を過ごしたのだった。
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