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45話「白い館の外では」
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「もういっちょ! 地を走る大火炎、それは大山をも切り裂き、大岩をも燃やすだろう……ブレイズスラッシュ!」
ブリーツの放った刃のような炎の波が、数匹のブラッディガーゴイルを襲う。
「ブリーツさん、凄いですね」
ブリーツの後ろでサポートするドドが感嘆する。
「うん?」
「なんていうか、凄く効率的に魔法使ってますよね。位置取りも凄くいいし」
「無駄に面倒なのが嫌いなだけだよ。楽なのがいいだろ何事も。楽なのが。楽したいだけなのよ、何事もな」
「そうなんですか? ……いえ、楽したいだけでも、結果として凄いですよ。僕なんて、いつもポチを危険に晒してるだけですから」
ドドが後ろを振り返った。後ろにはポチが居た。
ポチはブラッディガーゴイルの攻撃をひらりひらりとかわし、研ぎ澄まされた自身の爪と牙で、ブラッディガーゴイルにダメージを与え続けている。
「……サフィーさんから逃げた時だって、ポチは僕を庇ってくれた。いつもそうなんです。僕はポチをサポートするべきなのに、ポチに庇われてばかりで……」
「運がいいじゃねーか。楽が出来て」
ブリーツが即答する。
「その楽が、ポチの犠牲の下に成り立ってるんですよ……」
「じゃあ尚更運がいいじゃねーか。ポチが色々と引き受けてくれてるんだろ?」
「だから、それじゃあ駄目なんですよ。僕が……もっと、強くならないと……」
「ああ。なんとなく分かってるよ。だから、やっぱり運がいいなって言ってるんだよ。ああ、ちょっと意味を取り違えてるみてーだなー……鉄をも砕く雷の塊よ、立ち塞がる全てを滅せよ……ブリッツストライク!」
ブリーツが、魔法を唱えながら拳を前に突き出した。突き出した拳の先から、拳よりも一回り大きな光る球体が飛び出した。
球体は周りに稲光を帯びていて、それは真っ直ぐにブラッディガーゴイルへと向かっていく。ブラッディガーゴイルの方は、ブリッツストライクに向かって火球を放った。火球はブリッツストライクに触れると、反発しあいながら消えていった。
ブリッツストライクは、やや勢いを殺したものの弾速は早く、そのまま火球を放ったブラッディガーゴイルへと着弾し、ブラッディガーゴイルを貫いた。
「凄い威力だ……ブラッディガーゴイルのファイアーボールを掻き消した上に、本体を貫くなんて……」
「いや、俺、雷属性の魔法は、どっちかというと苦手なんだけどな。威力が高いのは、ブリッツストライクは、威力が高い代わりに弾速は遅いって魔法だからだろうな。でも、このシチュエーションだと、敢えてこれを使うのもアリなわけよ。まあ、魔法範囲の調節だな。強過ぎず、弱過ぎず、そして甘すぎず辛過ぎず……」
「周りを巻き込まないために魔法の範囲を調節したんですか……なるほど、そういうのもあるんですね……魔法もまだまだ習いたてみたいなものなので、知ってる魔法も少ないんです。すいません」
「ん……おぉ……」
こいつはスルータイプか! などと思いつつ、ブリーツは会話を続けた。
「いや、謝る必要はねーけど……さっきの話だけどな、最初から、自分が庇われる一方になるくらい強力な魔獣が使役されてるわけだろ。だから、運がいいなって言ったんだよ。ポチが守ってくれれば、心置きなく魔法の練習が、実戦で出来るってもんだ」
「ブリーツさん……はっ……もしかして、ポチ……」
ドドがポチの方を見る。ポチはブラッディガーゴイルの攻撃をかわしながら、一旦立ち止まってドドの目を見つめた。
「そうなんだね、ポチ……分かった。僕、がんばるから!」
ドドがポチに向かって手をかざす。
「行くよ、ポチ……光を掻き消し全てのの色を染める黒木闇の力を汝に授けん……ステュクサルフォース!」
ドドが前にかざした手から、黒いオーラが発射された。黒いオーラはポチの方へと飛んでいき、ブラッディガーゴイルの集団を相手しているポチの体を包み込んだ。
「やった! 成功した!」
「うわっ、早えな、なんだありゃ!」
ドドがステュクサルフォースを詠唱する様子を見ていたブリーツだったが、そのステュクサルフォースがかけられたポチを見て驚愕した。ポチの動きが、更に機敏になったからだ。ポチは今までも素早く敵に対応していたが、今の速さはそれに輪をかけて、見違えるほど早い。ブラッディガーゴイルの殲滅速度は更に早くなっている。
「ステュクサルフォースって、スピードアップじゃなくてパワーアップだよな」
ブリーツの認識では、物理攻撃を強力にするのがステュクサルフォースの効果のはずだ。
「はい。だからポチは、その分踏み込みを浅くして、より早くブラッディガーゴイルを倒すつもりなんでしょう。へぇ……こういう動きをするようになるんですね」
「なるほど、そっちかー。しかし、こりゃ、だいぶ楽になったな」
即座に戦い方を変えたポチは縦横無尽に動き回り、次から次へとブラッディガーゴイルに深い傷を与えている。ブラッディガーゴイルの数も段々少なくなってきた。
「鉄をも砕く雷の塊よ、立ち塞がる全てを滅せよ……ブリッツストライク!」
余裕が出てきたので、ブリーツは適当に、残りは手近なブラッディガーゴイルへ呪文をぶつける感じで流すことにした。
「いやぁ、ポチはやるなぁ」
ポチの動きをまじまじと見る余裕まで出てきた。ポチは相変わらず、次々と手早くブラッディガーゴイルを倒している。
「いや、惚れ惚れするね……って!」
ポチが、接近してきたブラッディガーゴイルの攻撃をひらりと避けると、特に何もせずに後ろのガーゴイルに攻撃を仕掛け始めた。
スルーされたブラッディガーゴイルが、丁度、前に居たブリーツを睨む。
「おっおっ……! ぶ、ブレイズスラッシュ!」
ブリーツが、ファストキャストでブレイズスラッシュを唱える。結構な近距離でブレイズスラッシュを喰らったブラッディガーゴイルは、怯んでバックステップをした。が、多段で襲いかかる、刃のような炎の波は、バックステップした先でも、タイミング良くブラッディガーゴイルに当たった。つまり、合計で二回、ブラッディガーゴイルに命中したことになる。
勿論、その事も、ブリーツは認識している。
「おっ! お得!」
ちょっとしたラッキーヒットに、ブリーツが喜んだ。
「しかし、油断のならない犬だぜぇー……」
ブリーツがちらりとポチの方に視線をずらした。ポチは何事も無かったように、ブラッディガーゴイルとの戦闘を繰り広げている。……意図的かは分からないが、ちょっと離れた所に位置取っているような気がすると、ブリーツは少し不審に思ったが、文句を言ったところで、そっぽを向かれるのがオチだろう。ブリーツは仕方なく、自分でブラッディガーゴイルを掃討することにした。
「ま、ぼちぼちやるしかないでしょ。地を走る大火炎、それは大山をも切り裂き、大岩をも燃やすだろう……ブレイズスラッシュ!」
いい感じにブラッディガーゴイルが直線上に並んでいたのを見たので、ブリーツはすかさずブレイズスラッシュを唱えた。
「闇に堕ちし力たちよ、仇なす全ての存在への、大いなる枷となれ……シャドウムボフ!」
ブレイズスラッシュを唱え終わったブリーツが、ドドの声を背後に聞いた。
ブリーツの前のブラッディガーゴイル達が、途端に足を重そうに引きずるようになる。シャドウムボフは相手の足の動きを抑制し、鈍足にする闇属性の呪文だ。
「お、鈍足効果か。助かるぜドド。か弱い魔法使いが、あんな化け物に接近されたら目も当てられないからな」
「いえ、これくらいやらないと。ポチもブリーツさんも、凄く頑張ってますから」
「闇属性、得意そうだな」
「ああ、さっきから使ってるからですね。多分、そうなんでしょうね。他の呪文に比べて、なんか、スムーズにいくっていうか、魔力が出しやすい感じなんで、まずは闇属性から幅を広げてみようと思って……今は闇属性を一番勉強してるんですよ」
「そうなのか。そう感じるんなら、そうなんだろうな。見かけによらず、いかつい属性が得意なんだなぁ」
ブリーツの放った刃のような炎の波が、数匹のブラッディガーゴイルを襲う。
「ブリーツさん、凄いですね」
ブリーツの後ろでサポートするドドが感嘆する。
「うん?」
「なんていうか、凄く効率的に魔法使ってますよね。位置取りも凄くいいし」
「無駄に面倒なのが嫌いなだけだよ。楽なのがいいだろ何事も。楽なのが。楽したいだけなのよ、何事もな」
「そうなんですか? ……いえ、楽したいだけでも、結果として凄いですよ。僕なんて、いつもポチを危険に晒してるだけですから」
ドドが後ろを振り返った。後ろにはポチが居た。
ポチはブラッディガーゴイルの攻撃をひらりひらりとかわし、研ぎ澄まされた自身の爪と牙で、ブラッディガーゴイルにダメージを与え続けている。
「……サフィーさんから逃げた時だって、ポチは僕を庇ってくれた。いつもそうなんです。僕はポチをサポートするべきなのに、ポチに庇われてばかりで……」
「運がいいじゃねーか。楽が出来て」
ブリーツが即答する。
「その楽が、ポチの犠牲の下に成り立ってるんですよ……」
「じゃあ尚更運がいいじゃねーか。ポチが色々と引き受けてくれてるんだろ?」
「だから、それじゃあ駄目なんですよ。僕が……もっと、強くならないと……」
「ああ。なんとなく分かってるよ。だから、やっぱり運がいいなって言ってるんだよ。ああ、ちょっと意味を取り違えてるみてーだなー……鉄をも砕く雷の塊よ、立ち塞がる全てを滅せよ……ブリッツストライク!」
ブリーツが、魔法を唱えながら拳を前に突き出した。突き出した拳の先から、拳よりも一回り大きな光る球体が飛び出した。
球体は周りに稲光を帯びていて、それは真っ直ぐにブラッディガーゴイルへと向かっていく。ブラッディガーゴイルの方は、ブリッツストライクに向かって火球を放った。火球はブリッツストライクに触れると、反発しあいながら消えていった。
ブリッツストライクは、やや勢いを殺したものの弾速は早く、そのまま火球を放ったブラッディガーゴイルへと着弾し、ブラッディガーゴイルを貫いた。
「凄い威力だ……ブラッディガーゴイルのファイアーボールを掻き消した上に、本体を貫くなんて……」
「いや、俺、雷属性の魔法は、どっちかというと苦手なんだけどな。威力が高いのは、ブリッツストライクは、威力が高い代わりに弾速は遅いって魔法だからだろうな。でも、このシチュエーションだと、敢えてこれを使うのもアリなわけよ。まあ、魔法範囲の調節だな。強過ぎず、弱過ぎず、そして甘すぎず辛過ぎず……」
「周りを巻き込まないために魔法の範囲を調節したんですか……なるほど、そういうのもあるんですね……魔法もまだまだ習いたてみたいなものなので、知ってる魔法も少ないんです。すいません」
「ん……おぉ……」
こいつはスルータイプか! などと思いつつ、ブリーツは会話を続けた。
「いや、謝る必要はねーけど……さっきの話だけどな、最初から、自分が庇われる一方になるくらい強力な魔獣が使役されてるわけだろ。だから、運がいいなって言ったんだよ。ポチが守ってくれれば、心置きなく魔法の練習が、実戦で出来るってもんだ」
「ブリーツさん……はっ……もしかして、ポチ……」
ドドがポチの方を見る。ポチはブラッディガーゴイルの攻撃をかわしながら、一旦立ち止まってドドの目を見つめた。
「そうなんだね、ポチ……分かった。僕、がんばるから!」
ドドがポチに向かって手をかざす。
「行くよ、ポチ……光を掻き消し全てのの色を染める黒木闇の力を汝に授けん……ステュクサルフォース!」
ドドが前にかざした手から、黒いオーラが発射された。黒いオーラはポチの方へと飛んでいき、ブラッディガーゴイルの集団を相手しているポチの体を包み込んだ。
「やった! 成功した!」
「うわっ、早えな、なんだありゃ!」
ドドがステュクサルフォースを詠唱する様子を見ていたブリーツだったが、そのステュクサルフォースがかけられたポチを見て驚愕した。ポチの動きが、更に機敏になったからだ。ポチは今までも素早く敵に対応していたが、今の速さはそれに輪をかけて、見違えるほど早い。ブラッディガーゴイルの殲滅速度は更に早くなっている。
「ステュクサルフォースって、スピードアップじゃなくてパワーアップだよな」
ブリーツの認識では、物理攻撃を強力にするのがステュクサルフォースの効果のはずだ。
「はい。だからポチは、その分踏み込みを浅くして、より早くブラッディガーゴイルを倒すつもりなんでしょう。へぇ……こういう動きをするようになるんですね」
「なるほど、そっちかー。しかし、こりゃ、だいぶ楽になったな」
即座に戦い方を変えたポチは縦横無尽に動き回り、次から次へとブラッディガーゴイルに深い傷を与えている。ブラッディガーゴイルの数も段々少なくなってきた。
「鉄をも砕く雷の塊よ、立ち塞がる全てを滅せよ……ブリッツストライク!」
余裕が出てきたので、ブリーツは適当に、残りは手近なブラッディガーゴイルへ呪文をぶつける感じで流すことにした。
「いやぁ、ポチはやるなぁ」
ポチの動きをまじまじと見る余裕まで出てきた。ポチは相変わらず、次々と手早くブラッディガーゴイルを倒している。
「いや、惚れ惚れするね……って!」
ポチが、接近してきたブラッディガーゴイルの攻撃をひらりと避けると、特に何もせずに後ろのガーゴイルに攻撃を仕掛け始めた。
スルーされたブラッディガーゴイルが、丁度、前に居たブリーツを睨む。
「おっおっ……! ぶ、ブレイズスラッシュ!」
ブリーツが、ファストキャストでブレイズスラッシュを唱える。結構な近距離でブレイズスラッシュを喰らったブラッディガーゴイルは、怯んでバックステップをした。が、多段で襲いかかる、刃のような炎の波は、バックステップした先でも、タイミング良くブラッディガーゴイルに当たった。つまり、合計で二回、ブラッディガーゴイルに命中したことになる。
勿論、その事も、ブリーツは認識している。
「おっ! お得!」
ちょっとしたラッキーヒットに、ブリーツが喜んだ。
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ブリーツがちらりとポチの方に視線をずらした。ポチは何事も無かったように、ブラッディガーゴイルとの戦闘を繰り広げている。……意図的かは分からないが、ちょっと離れた所に位置取っているような気がすると、ブリーツは少し不審に思ったが、文句を言ったところで、そっぽを向かれるのがオチだろう。ブリーツは仕方なく、自分でブラッディガーゴイルを掃討することにした。
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ブリーツの前のブラッディガーゴイル達が、途端に足を重そうに引きずるようになる。シャドウムボフは相手の足の動きを抑制し、鈍足にする闇属性の呪文だ。
「お、鈍足効果か。助かるぜドド。か弱い魔法使いが、あんな化け物に接近されたら目も当てられないからな」
「いえ、これくらいやらないと。ポチもブリーツさんも、凄く頑張ってますから」
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