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第1章>牝鹿の伝言[ハイスクール・マーダー]

Log.21 恥じる

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 二人目の容疑者、佐藤湊人みなと

 彼の部活は水泳部で、先に他の部員に聞いたところ今日も皆プールで泳いでいたらしい。プールから出るには更衣室の横に座っているマネージャーの前を通らなければならないので、覚えているはず。しかし、マネージャーは誰もプールから出てないと言っていた。

 プールの位置的には、学校内では三川の落下地点とは正反対にある。そのため、もしもマネージャーの目を盗んで抜け出せたとしても、走って7分はかかるのだ。往復で15分程かかるはずなのに、三川も落とさなければならないので、そんなに長い間新入部員がプールを空けていたら、さすがに誰か気づくだろう。

 つまり実のところ彼が犯人の可能性は極めて低い。だから早めに質問を済ませたかったのだ。

 「早速質問させてもらうぞ。15時40分から16時23分頃の間、自分が何してたか覚えてるか?」

 湊人は無言で頷いた。だが何してたのかは何も口にしない。

 「もしかして喋れないのか?」

 ブンブンと首を振る。どういう事だ?

 「じゃあ話してくれないか?自分の口で」

 「……う……」

 少し目をそらし、悩む様子を見せつつ、湊人はようやく口を開いた。

 「わ、笑うなよ……」

 その声を聞いた瞬間、納得した。彼が話さなかったわけを。


 彼の声は、とても男のものとは思えなかった。顔つきも整っているし、声を聞いた瞬間、ベリーショートの女の子にも見えてくるくらいだ。少し頬が緩んでしまう。

 「あっ!!てめぇ今笑ったな?!」

 とても可愛い声で怒鳴られた。

 「いや?わ、笑ってないぞ??じゃあ何してたか教えてくれる?」

 俺にジトっとした目を向けながらも、湊人はため息をついて話し出した。

 「はぁ……ずっとプールで泳いでたよ。先輩と競走とかもしたから聞けばわかると思うぞ」

 「ありがと。じゃあ砂糖かぶってた死体が見つかった事件知ってる?ダイイングメッセージとかで話題になった」

 こちらの質問には手応えはなかった。キョトンとした顔をする湊人。

 「なにそれ?知らないけど……俺あんまテレビ見ないからニュースとかも知らないこと多いんだよね。読書派です」

 だったら新聞でも読めばいいのに。

 「助かった。ありがとう。この質問の内容とかは全員終わるまで話さないでね……てか喋らないか」

 「お、おう」

 湊人はゆっくりと最後まで女らしい顔で保健室へと戻っていく。まあこんなものだろうか。怪しげな点はなかった……と思う。

 じゃあ次は……

 「佐藤よう!来てくれるか?」

 「あ、はい」

 ふんわりとした髪がなびく。彼女の身長や体格は美頼みたいなものだが、キリッとしたつり目が特徴的である。
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