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第16話 残念な奴とはザックのことだと思う
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食べられなかった高級肉に心の中で血涙を流していると、やけに静かなギルド内に明るい声が響いた。
「今日も元気に稼ぎましょー!…って、なにこの重い空気!」
振り向くとそこには20歳前後くらいの女の子が立っていた。真っ赤なポニテが揺れている。
「あ、二人とも紹介するね。彼女はライラ。受付の職員だよ。受付は僕とライラの他にも何人かいるから、機会があったら紹介するね。」
「どーもー、ライラです!新人くんだね?新人は最初の4週が勝負だよ!いっぱい稼いでギルドを潤してくれたまえよ!」
なんかすごい元気な女の子が来た。おじさんテンションについていけないよ…。
ライラは16時くらいから受付に入るそうだ。なるほど、混んでいない時間帯は人数を減らしているのか。冒険者は個人事業主、ギルドは仲介業者って感じかな。業務委託と考えると、うーん、手数料とか税金とかどうなってるんだろう。
サラリーマンだったから面倒な諸々は天引きであんま気にしてなかった。自分で計算して後払いとかできる気がしない。
「レイモンドさん、冒険者が払う税とかあるんですか?」
「いや、そういうのはないよ。というか、あそこに依頼として出ている金額はギルドの仲介料を引いた金額なんだ。解体とかをギルドでやる場合は素材によってお金がかかる場合があるけど。」
よし、とりあえずは受け取った金額でやりくりしていけばいいんだな。一人暮らしが長かったから、ひとまず生きていくのはやれそうかもしれない。そうこうしているとちらほらと人が増えてきた。
壁際の丸いテーブルについてディヒトとしゃべりながらその様子を眺める。高校生くらいの子ども、いや、この世界ではもう大人だったわ。若者が多い。簡単な依頼を朝から受けて、達成して戻ってくるのがこのくらいの時間なのかな。早めに仕事に入ったライラと、受付に戻ったレイモンドさんを見ていると、俺達を呼ぶ声が聞こえた。
「ディヒトー!アラター!いるかー?」
「おっちゃん!ここだここ!ルーク、久しぶりだな!」
ディヒトが大きく手を振るとザックはすぐに気付いて、一緒に来た男と二人、空いている席に腰をおろした。なるほど、これが噂のルーク君。顔の上半分は完全にザックだ。
「ディヒト、久しぶり。いつの間に俺よりでかくなってたんだ。それと初めましてだな、アラタ。俺はルーク。銀級の冒険者だ。よろしくな。」
目の前にサッと差し出された手を思わず握り返す。握手の文化あるんか。
「アラタです。よろしくお願いします。」
「冒険者登録は済んだんだってな。父さんから少しだけ聞いたが、お前たちからも直接話を聞きたい。まだ夕飯って時間でもないし、うちのパーティで借りてる家に移動して話そうか。」
***
ザックはルークを俺たちに引き合わせるとすぐに帰った。「先輩に色々教えてもらえ」と言い残して。
移動しながら、ルークはザックの事や自分のことを色々話してくれた。ザックは元金級冒険者らしい。家業を弟に譲って冒険者となり、あっという間に高ランクとなり、せっせと依頼をこなしてある日突然引退した。それを聞いたライゴウ様が引退には早すぎるとなんとか説得してギルド長として引き留めたのだが、それもほんの少しの時間稼ぎにしかならず、次を育てて結局ギルドをやめてしまった。
実際のところザックは遊んで暮らせるくらいの金が貯まったのでやめただけらしい。ギルドをやめてきた父親に、母親がブチ切れているのを見てしまったルークには同情を禁じ得ない。でもザックのやり方にはちょっと憧れるわ。俺も働かなくて済むなら働きたくない。
人生何があるかわからないから、とルークの母親は週3日ほど近所の食堂で働き始め、妻が働いているのに家でダラダラゴロゴロしているのに所在なさを感じたザックは同じく週3日でライゴウ様のところで槍術の指導と門番の仕事を始めたそうだ。ザック…真面目なんだか不真面目なんだかよくわからん奴だ。
なんだかんだ、強い父親に憧れ子どもの頃は棒切れを振り回していたルーク少年は当然のように冒険者になった。お母さんは反対はしなかったが、冒険者なりに堅実に生きるように今でもうるさいらしい。ルークたちのパーティ名は『銀翼』というそうだ。そのうち由来とかも聞いてみよう。なんかこう…そこはかとなく黒歴史のニオイがする。
ルークがリーダーを務める『銀翼』は盾役を務めるエデル、治癒師のオスカー、魔法使いのフォンゾがそのメンバーだ。俺達が到着した時、エデルとオスカーは出かけていて、フォンゾがソファに横になってくつろいでいた。のだが。
「ねえルーク、新人の世話を頼まれたから連れてくるかもとは聞いてたし、いいよとは言ったけど。こんなのとは思わないじゃん。草原の民の子は、まあいいとして。そっちの子は一体何者?」
ソファからフォンゾの姿が消えた!と思ったら、俺の目の前に雷をまとったようにバチバチしている…これは杖だろうか。近い近い。ルーク助けてお前の仲間だろ。そしてディヒトは俺の仲間でしょ助けて。
「へえ、やっぱやばいの?フォンゾに見てもらえば何かわかるかなーと思ったんだけど、当たりかな。」
ルーク!やっぱりって何?!
「この辺がモヤモヤしないから危なくはないんだろうが、アラタがビビってる。その杖を収めてくれないか。」
ディヒト!鳩尾のあたりに手ぇ当ててるけど、危ないかどうか勘で判断してんの?!
嫌なタイミングでディヒトの脳筋っぷりを再確認してしまった。
「詳しく話を聞かせてもらおうか。もしかして三日前のでっかい魔力の歪みと関係あったりするのかな?」
ゆっくりと杖のバチバチが消えていき、しかし油断なく俺を観察する目が一層鋭くなる。勘の良い奴はキライだよォ!!!!
「今日も元気に稼ぎましょー!…って、なにこの重い空気!」
振り向くとそこには20歳前後くらいの女の子が立っていた。真っ赤なポニテが揺れている。
「あ、二人とも紹介するね。彼女はライラ。受付の職員だよ。受付は僕とライラの他にも何人かいるから、機会があったら紹介するね。」
「どーもー、ライラです!新人くんだね?新人は最初の4週が勝負だよ!いっぱい稼いでギルドを潤してくれたまえよ!」
なんかすごい元気な女の子が来た。おじさんテンションについていけないよ…。
ライラは16時くらいから受付に入るそうだ。なるほど、混んでいない時間帯は人数を減らしているのか。冒険者は個人事業主、ギルドは仲介業者って感じかな。業務委託と考えると、うーん、手数料とか税金とかどうなってるんだろう。
サラリーマンだったから面倒な諸々は天引きであんま気にしてなかった。自分で計算して後払いとかできる気がしない。
「レイモンドさん、冒険者が払う税とかあるんですか?」
「いや、そういうのはないよ。というか、あそこに依頼として出ている金額はギルドの仲介料を引いた金額なんだ。解体とかをギルドでやる場合は素材によってお金がかかる場合があるけど。」
よし、とりあえずは受け取った金額でやりくりしていけばいいんだな。一人暮らしが長かったから、ひとまず生きていくのはやれそうかもしれない。そうこうしているとちらほらと人が増えてきた。
壁際の丸いテーブルについてディヒトとしゃべりながらその様子を眺める。高校生くらいの子ども、いや、この世界ではもう大人だったわ。若者が多い。簡単な依頼を朝から受けて、達成して戻ってくるのがこのくらいの時間なのかな。早めに仕事に入ったライラと、受付に戻ったレイモンドさんを見ていると、俺達を呼ぶ声が聞こえた。
「ディヒトー!アラター!いるかー?」
「おっちゃん!ここだここ!ルーク、久しぶりだな!」
ディヒトが大きく手を振るとザックはすぐに気付いて、一緒に来た男と二人、空いている席に腰をおろした。なるほど、これが噂のルーク君。顔の上半分は完全にザックだ。
「ディヒト、久しぶり。いつの間に俺よりでかくなってたんだ。それと初めましてだな、アラタ。俺はルーク。銀級の冒険者だ。よろしくな。」
目の前にサッと差し出された手を思わず握り返す。握手の文化あるんか。
「アラタです。よろしくお願いします。」
「冒険者登録は済んだんだってな。父さんから少しだけ聞いたが、お前たちからも直接話を聞きたい。まだ夕飯って時間でもないし、うちのパーティで借りてる家に移動して話そうか。」
***
ザックはルークを俺たちに引き合わせるとすぐに帰った。「先輩に色々教えてもらえ」と言い残して。
移動しながら、ルークはザックの事や自分のことを色々話してくれた。ザックは元金級冒険者らしい。家業を弟に譲って冒険者となり、あっという間に高ランクとなり、せっせと依頼をこなしてある日突然引退した。それを聞いたライゴウ様が引退には早すぎるとなんとか説得してギルド長として引き留めたのだが、それもほんの少しの時間稼ぎにしかならず、次を育てて結局ギルドをやめてしまった。
実際のところザックは遊んで暮らせるくらいの金が貯まったのでやめただけらしい。ギルドをやめてきた父親に、母親がブチ切れているのを見てしまったルークには同情を禁じ得ない。でもザックのやり方にはちょっと憧れるわ。俺も働かなくて済むなら働きたくない。
人生何があるかわからないから、とルークの母親は週3日ほど近所の食堂で働き始め、妻が働いているのに家でダラダラゴロゴロしているのに所在なさを感じたザックは同じく週3日でライゴウ様のところで槍術の指導と門番の仕事を始めたそうだ。ザック…真面目なんだか不真面目なんだかよくわからん奴だ。
なんだかんだ、強い父親に憧れ子どもの頃は棒切れを振り回していたルーク少年は当然のように冒険者になった。お母さんは反対はしなかったが、冒険者なりに堅実に生きるように今でもうるさいらしい。ルークたちのパーティ名は『銀翼』というそうだ。そのうち由来とかも聞いてみよう。なんかこう…そこはかとなく黒歴史のニオイがする。
ルークがリーダーを務める『銀翼』は盾役を務めるエデル、治癒師のオスカー、魔法使いのフォンゾがそのメンバーだ。俺達が到着した時、エデルとオスカーは出かけていて、フォンゾがソファに横になってくつろいでいた。のだが。
「ねえルーク、新人の世話を頼まれたから連れてくるかもとは聞いてたし、いいよとは言ったけど。こんなのとは思わないじゃん。草原の民の子は、まあいいとして。そっちの子は一体何者?」
ソファからフォンゾの姿が消えた!と思ったら、俺の目の前に雷をまとったようにバチバチしている…これは杖だろうか。近い近い。ルーク助けてお前の仲間だろ。そしてディヒトは俺の仲間でしょ助けて。
「へえ、やっぱやばいの?フォンゾに見てもらえば何かわかるかなーと思ったんだけど、当たりかな。」
ルーク!やっぱりって何?!
「この辺がモヤモヤしないから危なくはないんだろうが、アラタがビビってる。その杖を収めてくれないか。」
ディヒト!鳩尾のあたりに手ぇ当ててるけど、危ないかどうか勘で判断してんの?!
嫌なタイミングでディヒトの脳筋っぷりを再確認してしまった。
「詳しく話を聞かせてもらおうか。もしかして三日前のでっかい魔力の歪みと関係あったりするのかな?」
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