「君としか恋はしたくない」

愛理

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第36話「観覧車の中で」

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   観覧車はわりと空いていて、俺と綾香はすぐに乗ることができた。
  そして、俺達は並んで座った。
  彼氏と彼女になる前も俺達の距離はもの凄く近かったけど、それは幼馴染という関係の時のもので……俺は今、さっき、実から耳打ちされた言葉のこともあって綾香とのこの距離に緊張していた。
  気のせいかもしれないけど綾香もいつもより少しだけ大人しい気がする。
  もし気のせいじゃなかったら、綾香も俺と同じように緊張してるってことなんだろうか?
  俺は少しの間、そう思っていたけど、でも、観覧車が回る時間は限られているよなと思い、俺は綾香の手を取った。
  綾香はそんな俺の顔をじっと見る。
「綾香、俺が何で観覧車に乗ろうって言ったか解る?」
  綾香は俺のその質問に少しだけ目を潤ませた。
  そんな綾香を見て、観覧車に恋人同士で乗るイメージはきっと俺と同じなんだと思った。
  だから、
「観覧車って、恋人同士で乗るとてっぺんに来た時にキスしたら、そのカップルはずっと幸せでいられるとか、そういうのがあったりするじゃん。だから、俺、綾香と観覧車に乗りたかったんだ」
  俺がそう言うと綾香はますます目を潤ませた。
  俺はそんな綾香が愛しくて思わず綾香の頭をぐいっと自分の方に抱き寄せた。
  少しの間、綾香は俺の肩に頭を寄せたまま何も言わなかった。
  だから、俺も何も言わなかった。
  でも……。
  後、少しで観覧車の一番上に来そうなところで綾香が、
「もうすぐてっぺんだね」
  そう言った。
  そして、その後、
「私達もずっと幸せでいられるようにさっき涼一が言ったことしたいな」
  そう言ったから、俺は今度は綾香と向かい合わせになるようにした。
  綾香の目は相変わらず潤んでいて、俺はまた綾香が愛しくて堪らなくなった。
  だから、俺は綾香をぎゅっと抱きしめた後、
「好きだよ、綾香」
  そう言い観覧車がてっぺんに丁度、来た時に綾香にキスをした。
  キスをした後、さっき綾香が自分でしたいと言ってくれたけど、正直、どんな感じになるか少し不安だった。
  だけど、キスをした後に見た綾香は凄く嬉しそうだった。
  そして、今までで一番可愛い笑顔を俺に向けてもくれた。
  俺はそんな綾香を見て、もう絶対に綾香以外を好きになれないだろうし、好きになるつもりもないし、絶対に離さないとも思って、また綾香をぎゅっと抱きしめた。
  そして、俺はこの日から観覧車はテーマパークの乗り物の中で一番好きな乗り物になった。
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