「その手をもう1度繋ぐことができたなら」

愛理

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第1話「感じの悪い人」

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 4月といえば多くの人が新しい環境の中で生活をスタートさせる時期だ。
 私、戸田綾美(とだあやみ)22歳もその中の1人で、この4月から、新社会人としてスタートを切った。
 4月1日に入社式があり、早速、翌日からは会社に出社して、3ヶ月の研修を受けることになっていた。
 私が入った会社はIT関係で、IT関係のものを販売していたり、IT関係のシステムのトラブル対応をしていたりする会社だった。
 そして、私の配属先は営業部門で、営業サポートの仕事だった。
 でも、まずはIT関係の知識を身につけろということで、私はシステム部で、まずは3ヶ月研修を受けることになっていた。
 実は私はIT関係には全く詳しくなく、大学も文系に行っていたくらいで、正直、何故、この会社で採用されたのかは謎だった。
 でも、IT関係なら、今の世の中、需要は大きいだろうし、給料もまあまあだったので、この会社に入社することに決めた。

「戸田綾美です。正直、IT関係には詳しくありませんが、一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します」
 今、私はシステム部で自己紹介をしていた。
 システム部は現在のところ、12人で、男性が8人、女性が4人だった。
 年齢は20代から50代までの人がいるようだった。
「澤野有希です。一応、大学でIT関係の勉強をしていましたが、実践するのは別だと思いますので、色々と教えていただけたらと思います。どうぞよろしくお願い致します」
 この澤野さんは元々、この部署に配属されたようだった。
 でも、さっき、少し話して、感じが良くて、仲良くなれそうだったので、嬉しいなと思っていた。
「橋川郁人(はしかわいくと)です。よろしくお願いします」
 このシステム部で研修を受けるのはどうやら、私と澤野さんとこの橋川って人の3人らしかった。
 ただ、この橋川って人、何故だか解らないけど、何処かで会ったことのあるような気がしていた。
 また、何となく愛想のよくない人だなとも思っていた。

「ああ、疲れたね」
 澤野さんが言った。
 今は定時後で、私と澤野さんは初日の勤務を終えて、2人で会社から帰っていた。
 ちなみに2人とも電車通勤らしく、方向も一緒なので、これからは都合が合えば一緒に帰ろうということになった。
「うん、でも、澤野さんは大学で勉強してただけあって、私より、うんと呑み込み早かったよ」
「そうかもだけど、時期に戸田さんも慣れるよ」
 澤野さんは笑顔でそう言ってくれた。
 でも、私はやっぱり、詳しくないことを覚えるのって大変だなと思っていた。
 すると後ろから、
「そうかな。戸田さんはIT関係の仕事向いてないんじゃない?」
 と声がした。
 私と澤野さんが後ろを振り返るとそこには橋川さんがいた。
「橋川さん」
 私は思わず名前を呼んだ。
「今日、教えてもらったこと覚えてる? あれくらいのことで、疲れてたら、絶対にこの仕事向いてないと思うけど」
 橋川さんが言った。
 すると澤野さんが、
「ちょっと、何であなた、そんなに失礼なのよ」
 と橋川さんに向かって言った。
 すると橋川さんはくすっと笑って、
「本当のこと言ってあげただけだよ。向いてなかったら、戸田さんが辛いだけだと思って」
 そう言い、私達を追い抜き、足早に駅の方へ向かって行ってしまった。
「何あの感じ悪いの。戸田さん、気にすることないからね」
「うん、ありがとう」
 澤野さんはそう言ってくれたけど、私は内心、何故、橋川さんが初対面の私に対して、あんなに冷たい感じなのか気になっていた。
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