「忘れられない人」

愛理

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第29話「あなたからの言葉で」

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  長原さんがカフェを出ていって、暫くしてから私もカフェを出た。
  そして、私は真っ直ぐに家に帰った。
  本当は知咲と駅で分かれた後、何処かのお店にでも寄って、何か見ていこうかなとも思っていたけど今はもうそんな気力はなかった。
  ただ、自分の部屋のベッドで横になって、ゆっくりしたかった。
  知咲とランチをした時までの幸せな気持ちは何だか今は不安に変わっていた。
  勿論、陸人を好きだという気持ちは決して変わらない。
  この気持ちはこれからも変わらないって言い切れる自信はある。
  だけど……。
  私と陸人が一緒に生きていくことで、もしかするとかなりの人達が傷つくかもしれない。
  それに両親のことも悲しませるのは覚悟のうえだけど……。
  だけど、もし、この前みたいにお母さんの様子が変になってしまったら?
  もっと、凄いことになってしまったら?
  それに陸人が本当に色々な人から中傷を浴びせられて、傷つくばかりの人生になってしまったら?
  私はそんなことを思うと不安で堪らなくなっていた。

  家に帰ると私はすぐに自分の部屋のベッドに早速横になった。
  それからすぐに目を瞑った。
  陸人……。
  ごめんね。私、もう不安になってしまって。
  私が目を瞑りながら、そう思っているとスマートフォンでの電話が鳴った。
  私は枕元に置いていてスマートフォンを手に取って、画面を見る。
  するとそこには陸人の名前が表示されていた。
  だから、私は上半身を起こして、慌てて電話に出る。
「はい、もしもし?」
「俺だけど今、大丈夫?」
「うん」
  一体、急にどうしたんだろう?
  陸人がアメリカに行って、少し経つけど今まで陸人が電話をかけてきたのはアメリカに行ってから、すぐの時の1回だけだったのに。
  後はずっとメールでやり取りしてたし。
  そう思って、私はさっきまで考えていたことも重なって、また不安な気持ちが大きくなった。
  だけど、そんな私の気持ちに反比例して陸人は、
「うん、やっぱり、亜美の声だけでも聞きたくなってさ」
  そう言った。
「陸人」
  私は陸人のその言葉に胸がぎゅっとなった。
  そして、更に陸人は、
「亜美、俺、本当にちゃんと頑張ってるから。だって、早く亜美と一緒にいれるようになりたいから」
  そう言った。
  私は陸人のその言葉にまた胸がぎゅっとなって、その後、少し涙が零れた。
  だから、私は何も言い返すことができなかった。
  そんな私に気づいたのか、
「もしかして、亜美、泣いてる? どうした? 辛いことでもあった?」
  陸人がそう聞いた。
  だから、私は、
「ううん、大丈夫。ごめんね、陸人」
「何が?」
「ううん、何でもないの」
「なら、いいけど。でも、何かあったら、話だけでも聞かせて。今、俺、アメリカだから、すぐには駆けつけられないけど、もしもの時は絶対に亜美のところに戻るから。だって、俺はそれだけ亜美のことが大事だから」
  陸人が今、言ってくれる言葉に私は胸がぎゅっとなってばかりだった。
  そして、私は、そんな陸人の言葉を受けて、本当にごめんね、陸人。
  陸人はこんなにも私のことを想ってくれてるのに私は誰かに陸人とのことを言われただけで、急に大きな不安を抱えてしまって。
  だけど、私、もう、そんな不安は抱えないよ。
  誰に何を言われても陸人と一緒に生きていくって言い切るよ。
  だって、私は―。
  やっぱり、陸人のことが好きで堪らないから。
  陸人と電話で話しながら、心の中でそう思った。
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