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タバコの幽霊

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昔々、古い町にひとつの言い伝えが伝わっていました。その話によると、ある幽霊は毎晩、古びた路地を彷徨いながらタバコを吸っていたと言われていました。その幽霊は、生前の習慣を捨てられず、霧のような煙を絶え間なく吐き出していたというのです。

その町では、幽霊は通常、人々には見えず、姿も知覚されることはありませんでした。しかし、ある夜、その幽霊が自分の煙に覆われてしまい、途端に変化が起こったと言われています。

彼の周りに広がる煙は、どんどん濃密になり、やがて幽霊そのものを包み込みました。その後、煙は幽霊の周囲に広がり、町の空気を満たすまでになりました。そして、驚くべきことに、その煙の中にはかすかに生きている人間の姿が見えるようになったのです。

最初は誰も気づかなかったのですが、ある人が通り過ぎると、その人の周りに煙がぼんやりと絡みつき、その煙の中に生きている人間の姿が浮かび上がることがありました。それは、生者と幽霊の世界が交差してしまったような光景でした。

幽霊は煙に覆われている限り、その状態が続き、人々が驚愕し、恐れたものの、その幽霊は自らの行動を変えることはありませんでした。幽霊の煙が生きている人々にまで見えるようになったことで、町の人々は夜道でタバコを吸うことを避けるようになりました。彼らは、自分が煙に覆われることを恐れ、幽霊のようになることを避けるようになったのです。

この話は、人々に習慣や行動の影響を考えさせる警句として語り継がれてきました。生者も幽霊も、自らの行動が周囲に及ぼす影響を考えることが重要だという教訓が込められています。
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