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第1章
Day①「キッカケ(4)」
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「あんまり種類がないでしょ?」
一言そう答えた。
私は何でですか、と矢継ぎ早にせっついた。
「ここの店長ね…ちょっと味が分からないんだ…」
え、と私は目を丸くした。
味が…
分からない…?
クリームプラス。唯の美味しい味だったケーキが、更に一味美味しいケーキになりますように。
店長は、この店を開店させる際、そう願いを込めてこの店名を作ったという。
開店当時、売れ行きは上々だった。評判が評判を呼び、店員の彼、三添も、その当時の味を知っていた。とにかく濃厚でしかし甘過ぎず、飽きの来ない絶妙な味付けと、フルーツと洋酒を使ったバランスのいい味わいを前面に出したケーキは絶品だったらしい。その頃はお客もひっきりなしに来ていたという。しかし、4年ほど前の事。突然味が変わった。ちょうど、仕入れ先のバターや牛乳等、要となる材料の仕入れ値がガクッと変わり、新しい仕入れ先を探さねばならなくなった頃だった。そしてその頃は偶然にも、店長と三添にとって多忙のストレスと経営の見直しを考えていた頃と同時期で。徐々に徐々に店長の味覚は狂っていった。
店長に待っていたのは、苦労の連続だった。何度もクリームの作成を試し、様々なバターや洋酒の味を、店長は試したと言う。そして、店員である三添さんもまた協力したものの、やはり以前に似た味付けには戻らなかった。当時のレシピを見ても、何の参考にもならない。新しい仕入れ先の材料の味が、正しく店長の味覚に届かないためだ。味が正確に分からないため、思うような味のケーキが作れない。店長は、ただ「待ってほしい」と客に申し入れた。
元の味にきっと戻して、提供できるようにする―――と。
しかし、3年経った今も、味覚は戻ることは無かった。徐々に店を訪れる客は減って行き、注文の予約を入れる客もここ1年は来ていない。
一言そう答えた。
私は何でですか、と矢継ぎ早にせっついた。
「ここの店長ね…ちょっと味が分からないんだ…」
え、と私は目を丸くした。
味が…
分からない…?
クリームプラス。唯の美味しい味だったケーキが、更に一味美味しいケーキになりますように。
店長は、この店を開店させる際、そう願いを込めてこの店名を作ったという。
開店当時、売れ行きは上々だった。評判が評判を呼び、店員の彼、三添も、その当時の味を知っていた。とにかく濃厚でしかし甘過ぎず、飽きの来ない絶妙な味付けと、フルーツと洋酒を使ったバランスのいい味わいを前面に出したケーキは絶品だったらしい。その頃はお客もひっきりなしに来ていたという。しかし、4年ほど前の事。突然味が変わった。ちょうど、仕入れ先のバターや牛乳等、要となる材料の仕入れ値がガクッと変わり、新しい仕入れ先を探さねばならなくなった頃だった。そしてその頃は偶然にも、店長と三添にとって多忙のストレスと経営の見直しを考えていた頃と同時期で。徐々に徐々に店長の味覚は狂っていった。
店長に待っていたのは、苦労の連続だった。何度もクリームの作成を試し、様々なバターや洋酒の味を、店長は試したと言う。そして、店員である三添さんもまた協力したものの、やはり以前に似た味付けには戻らなかった。当時のレシピを見ても、何の参考にもならない。新しい仕入れ先の材料の味が、正しく店長の味覚に届かないためだ。味が正確に分からないため、思うような味のケーキが作れない。店長は、ただ「待ってほしい」と客に申し入れた。
元の味にきっと戻して、提供できるようにする―――と。
しかし、3年経った今も、味覚は戻ることは無かった。徐々に店を訪れる客は減って行き、注文の予約を入れる客もここ1年は来ていない。
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