深い青を愛してる

あおなゆみ

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芸術的な夜と雑な朝

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 夜は深い青。
朝になると昨日の夜が嘘だったかのように、気持ちも変わる。
頭の中で語る言葉も、夜はどこか飾られていて、自然と美しさを求める。
朝は深くなくて、言葉が着地せずに宙を素早く飛んで、少し雑な感じ。
言葉を飾る余裕はなく、深い青はどこにもない。

 僕はそんな生活を心から望み、そして愛していた。
夜さえ美しければ、生きていられた。
芸術的な夜さえあれば、僕は創作を繰り返し、想像は無限なはずだった。

 その夜に終わりが見えたのが、偶然なのか、宿命なのかは分からない。
作曲に行き詰まっているタイミングではあった。
恋人に別れを切り出したい時期でもあった。
深い青の夜の繰り返しを望んでいた僕は、心のどこかでは変化を求めていたのかもしれない。


 偶然に見た、僕のファンが書いていたブログ。
アルバムの感想やライブの感想、僕が雑誌の取材で話した好きな本の話。
時々その人が好きなドラマについてや、作った料理の写真も載っていた。
色鮮やかな料理やお弁当。
たまに、空の写真。

 過去のブログから読み進めていた僕は最新のページに辿り着いた。
その日付は一年半前。
最新が一年半前だと分かり、なんとなく嫌な予感はした。
この著者は、もう僕のファンではないという予感。

 そこに書かれていたのは僕が、一年半と少し前に発売したアルバムの中の一曲について。
その曲が、あるバンドの曲に似ていると書かれていたのだ。
内容としては、三年ほど前にそのバンドがライブで初披露していた曲という事、ボーカルの人が高校の時に書いた曲だという事、意図していなくても似てしまう事はあると思う、とも書かれていた。
 そのバンド名を僕は知らなかった。
僕がその曲を作ったのは、せいぜい二年半前だ。
僕が作った曲よりも先にこの世にあったという曲。

 さらに読み進めると、そのバンドはブログ最終更新日の数日前に解散したという。
解散したという事実だけを語り、そのブログはそれ以上更新するのをやめている。
おそらくブログの著者は、バンドと近い関係にあったのだろう。
僕の体は段々、暑いような寒いような変な感覚になっていった。

 調べてみたが、バンドメンバーの誰の現状も知る事はできなかった。
そもそも検索してヒットする情報があまりない。
ただ、確実に彼らのものだと断定はできないが、写真だけは少しあり、一枚は客席との距離が物凄く近いライブハウスでのライブ中の写真。
もう一枚はアーティスト写真なのだろうか。
白黒でバンドメンバーが横一列になり、全員が恥ずかしそうに笑っている写真だった。
さらにもう一枚は、ライブか練習の帰り道と思われる写真で、楽しそうにジャンプしてブレている二人と、それを見て笑っている二人が写っていた。

 僕は彼らを傷つけた可能性がある。

 音源も探してみたが、間違いなく彼らのものと判断できるものが見つからず、意思を持ち沢山の情報を消していると思えるほど情報が少なすぎた。
 これほど情報が出ないというのは、知名度がなかったのか、自ら情報を発信しなかった事くらいしか考えられない。
それでも僕は、かつて無いほどの不安感を覚え、ひどく悲しい気分になっていった。


 その日の夜に、深い青は存在しなかった。
僕は僕の曲に似ているという曲を探し続け、変な汗をかき、喉をすぐに渇かせた。
逃げ道は一つもなくて、眠る事もできない。
結局その曲の音源も動画も見つからず、朝まで一睡もできなかった。
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