2 / 23
芸術的な夜と雑な朝
しおりを挟む
夜は深い青。
朝になると昨日の夜が嘘だったかのように、気持ちも変わる。
頭の中で語る言葉も、夜はどこか飾られていて、自然と美しさを求める。
朝は深くなくて、言葉が着地せずに宙を素早く飛んで、少し雑な感じ。
言葉を飾る余裕はなく、深い青はどこにもない。
僕はそんな生活を心から望み、そして愛していた。
夜さえ美しければ、生きていられた。
芸術的な夜さえあれば、僕は創作を繰り返し、想像は無限なはずだった。
その夜に終わりが見えたのが、偶然なのか、宿命なのかは分からない。
作曲に行き詰まっているタイミングではあった。
恋人に別れを切り出したい時期でもあった。
深い青の夜の繰り返しを望んでいた僕は、心のどこかでは変化を求めていたのかもしれない。
偶然に見た、僕のファンが書いていたブログ。
アルバムの感想やライブの感想、僕が雑誌の取材で話した好きな本の話。
時々その人が好きなドラマについてや、作った料理の写真も載っていた。
色鮮やかな料理やお弁当。
たまに、空の写真。
過去のブログから読み進めていた僕は最新のページに辿り着いた。
その日付は一年半前。
最新が一年半前だと分かり、なんとなく嫌な予感はした。
この著者は、もう僕のファンではないという予感。
そこに書かれていたのは僕が、一年半と少し前に発売したアルバムの中の一曲について。
その曲が、あるバンドの曲に似ていると書かれていたのだ。
内容としては、三年ほど前にそのバンドがライブで初披露していた曲という事、ボーカルの人が高校の時に書いた曲だという事、意図していなくても似てしまう事はあると思う、とも書かれていた。
そのバンド名を僕は知らなかった。
僕がその曲を作ったのは、せいぜい二年半前だ。
僕が作った曲よりも先にこの世にあったという曲。
さらに読み進めると、そのバンドはブログ最終更新日の数日前に解散したという。
解散したという事実だけを語り、そのブログはそれ以上更新するのをやめている。
おそらくブログの著者は、バンドと近い関係にあったのだろう。
僕の体は段々、暑いような寒いような変な感覚になっていった。
調べてみたが、バンドメンバーの誰の現状も知る事はできなかった。
そもそも検索してヒットする情報があまりない。
ただ、確実に彼らのものだと断定はできないが、写真だけは少しあり、一枚は客席との距離が物凄く近いライブハウスでのライブ中の写真。
もう一枚はアーティスト写真なのだろうか。
白黒でバンドメンバーが横一列になり、全員が恥ずかしそうに笑っている写真だった。
さらにもう一枚は、ライブか練習の帰り道と思われる写真で、楽しそうにジャンプしてブレている二人と、それを見て笑っている二人が写っていた。
僕は彼らを傷つけた可能性がある。
音源も探してみたが、間違いなく彼らのものと判断できるものが見つからず、意思を持ち沢山の情報を消していると思えるほど情報が少なすぎた。
これほど情報が出ないというのは、知名度がなかったのか、自ら情報を発信しなかった事くらいしか考えられない。
それでも僕は、かつて無いほどの不安感を覚え、ひどく悲しい気分になっていった。
その日の夜に、深い青は存在しなかった。
僕は僕の曲に似ているという曲を探し続け、変な汗をかき、喉をすぐに渇かせた。
逃げ道は一つもなくて、眠る事もできない。
結局その曲の音源も動画も見つからず、朝まで一睡もできなかった。
朝になると昨日の夜が嘘だったかのように、気持ちも変わる。
頭の中で語る言葉も、夜はどこか飾られていて、自然と美しさを求める。
朝は深くなくて、言葉が着地せずに宙を素早く飛んで、少し雑な感じ。
言葉を飾る余裕はなく、深い青はどこにもない。
僕はそんな生活を心から望み、そして愛していた。
夜さえ美しければ、生きていられた。
芸術的な夜さえあれば、僕は創作を繰り返し、想像は無限なはずだった。
その夜に終わりが見えたのが、偶然なのか、宿命なのかは分からない。
作曲に行き詰まっているタイミングではあった。
恋人に別れを切り出したい時期でもあった。
深い青の夜の繰り返しを望んでいた僕は、心のどこかでは変化を求めていたのかもしれない。
偶然に見た、僕のファンが書いていたブログ。
アルバムの感想やライブの感想、僕が雑誌の取材で話した好きな本の話。
時々その人が好きなドラマについてや、作った料理の写真も載っていた。
色鮮やかな料理やお弁当。
たまに、空の写真。
過去のブログから読み進めていた僕は最新のページに辿り着いた。
その日付は一年半前。
最新が一年半前だと分かり、なんとなく嫌な予感はした。
この著者は、もう僕のファンではないという予感。
そこに書かれていたのは僕が、一年半と少し前に発売したアルバムの中の一曲について。
その曲が、あるバンドの曲に似ていると書かれていたのだ。
内容としては、三年ほど前にそのバンドがライブで初披露していた曲という事、ボーカルの人が高校の時に書いた曲だという事、意図していなくても似てしまう事はあると思う、とも書かれていた。
そのバンド名を僕は知らなかった。
僕がその曲を作ったのは、せいぜい二年半前だ。
僕が作った曲よりも先にこの世にあったという曲。
さらに読み進めると、そのバンドはブログ最終更新日の数日前に解散したという。
解散したという事実だけを語り、そのブログはそれ以上更新するのをやめている。
おそらくブログの著者は、バンドと近い関係にあったのだろう。
僕の体は段々、暑いような寒いような変な感覚になっていった。
調べてみたが、バンドメンバーの誰の現状も知る事はできなかった。
そもそも検索してヒットする情報があまりない。
ただ、確実に彼らのものだと断定はできないが、写真だけは少しあり、一枚は客席との距離が物凄く近いライブハウスでのライブ中の写真。
もう一枚はアーティスト写真なのだろうか。
白黒でバンドメンバーが横一列になり、全員が恥ずかしそうに笑っている写真だった。
さらにもう一枚は、ライブか練習の帰り道と思われる写真で、楽しそうにジャンプしてブレている二人と、それを見て笑っている二人が写っていた。
僕は彼らを傷つけた可能性がある。
音源も探してみたが、間違いなく彼らのものと判断できるものが見つからず、意思を持ち沢山の情報を消していると思えるほど情報が少なすぎた。
これほど情報が出ないというのは、知名度がなかったのか、自ら情報を発信しなかった事くらいしか考えられない。
それでも僕は、かつて無いほどの不安感を覚え、ひどく悲しい気分になっていった。
その日の夜に、深い青は存在しなかった。
僕は僕の曲に似ているという曲を探し続け、変な汗をかき、喉をすぐに渇かせた。
逃げ道は一つもなくて、眠る事もできない。
結局その曲の音源も動画も見つからず、朝まで一睡もできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる