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薬草採取と昼食会
しおりを挟む「ふぅ、このくらいで大丈夫かな」
「こっちもたくさん採れたわ」
「んー、ちょっと採り過ぎたな……」
しばらくの間黙々とダミソウを採取し、ある程度いっぱいになったところで集合する。
「……ソフィーさん……ちょっと量が多くないですか?」
「久しぶりの採取依頼だからな。張り切ってしまって、近くにダミソウが見当たらなくなってしまった……」
抱え切れない程のダミソウを持って来たソフィーさん。
ソフィーさんはCランクだから、薬草採取の依頼はあまり受けないのだろう。
初心者用の依頼っぽいからね。
ちなみにダミソウの見た目はやっぱり前の世界で写真を見たドクダミとそっくりだった。
「さすがにその量は持って運べないですよ?」
「すまない、そこまで考えてなかった。一度採取を始めると夢中になってしまったんだ。どうしよう……」
「ダミソウって食べたらおいしいのかな?」
大量のダミソウを持って困っていたら、モニカさんが提案した。
……けど、このダミソウがドクダミと同じ物なら……おいしくないよね……多分。
いや、確かにドクダミ茶ってのは聞いた事があるから不味いわけじゃないかもしれないけど……採取したばかりだと匂いが……量もあるから結構きつい。
「食べ物なのだわ? 食べるのだわ!」
「起きたのかエルサ」
「エルサちゃん、食べてみる?」
食いしん坊ドラゴンが今まで寝ていたはずなのに、急に起きた。
キューの事ばかりかと思ってたけど、それだけじゃなく食べ物全般というか、完全に食欲優先だな。
「変な匂いなのだわ。食べられるのだわ?」
「毒は無いはずよ。薬草だし、そのまま食べても良いんじゃないかしら」
「ダミソウは煎じて薬にする物だが、ダミソウ自体に毒は無い。食べても問題ないはずだ」
二人が完全にエルサに味見させようとしてる……。
薬草だからって毒が無いわけじゃないんだよモニカさん。
煎じたりといった加工をして薬になる毒もあるらしいから。
「食べてみるのだわ……モシャ……モシャ……」
「どうかしら?」
「……不味いのだわ……不味いのだわー!」
よっぽど不味かったのか、エルサが俺の頭にくっついたまま叫んでる。
それを見た二人は無言で余分なダミソウを地面に置き、小さな穴を掘って埋め始めた。
取り過ぎたダミソウは食べるのを諦め、適当に肥料とするようだ。
「不味いのがまだ残ってるのだわ……キューを要求するのだわー」
「はいはい」
俺は持って来ていた鞄からキューを1本取り出し、頭の上へ持って行ってエルサにあげる。
「やっぱキューが一番おいしいのだわー」
口直しにエルサがキューを食べてる最中、俺達三人はいらないダミソウを埋め、必要な分を布に包んで鞄へとしまった。
「よし、これで薬草採取の依頼は達成だね」
「そうね」
「今度は採り過ぎないように気を付けねば……」
「それじゃエルサ、大きくなって俺達を乗せてくれ」
「……モキュモキュ……ゴク……わかったのだわ」
キューを飲み込んだエルサが俺の頭から離れ、地面にフワリと着地をすると同時に光を放って体を大きくさせた。
その体のモフモフを堪能しつつ、エルサの背中に皆で乗り、全身をモフモフの中に沈める。
あー、やっぱりこのモフモフの感触は良い物だー。
「何かエルサちゃん、前よりも毛がフワフワしてない?」
「そうだな、以前より優しい感触になってるな」
二人がエルサのモフモフに包まれながら以前との違いに首を傾げてる。
昨日のあれかな? ドライヤーでしっかり乾かしてブラッシングしたからかな?
「リクのおかげなのだわー。昨日の夜は気持ち良くされたのだわー」
「……夜……気持ち良く……ツヤツヤのモフモフ……」
「……エルサは女だったな……まさかリク……獣か……」
「それ以上は言っちゃいけない!」
俺は慌ててソフィーさんの言葉を遮った。
何て事を言いかけるんだこの人は!
女性がそんな言葉をというのもあるが、俺がそんな事するわけない。
まあ、せいぜいモフモフを堪能するだけだ。
「エルサ、変な言い方するな。昨日は魔法の練習がてらエルサの毛を乾かしてあげただけだよ」
「魔法で乾かす?」
「それでこんなモフモフ向上になるのか?」
んー、ドライヤーの説明は……出来ないな。
えっと。
「魔法で弱い風を出してね、その風の温度を暖かくして、それをエルサに当てながらブラッシングしたんだ」
「あれは気持ち良かったのだわー。気付いたら寝てて朝になってたのだわー」
「昨日エルサちゃんが私とお風呂に入らずリクさんの所に行ったと思ったら、そんな事をしてたのね」
「それは……どんなものなんだ?」
ソフィーさんは想像が出来ないようだ。
まぁ、ドライヤーが存在しないから温風に当てて髪や毛を乾かすってのは想像しづらいか。
「まあここで話しててもなんだし、とりあえず次の目的地に行こう」
「そうね。次はどっちに行くの?」
「野盗探しは簡単だけど、まずは西に行って戦場跡を調べよう。お昼もそこで食べればいいんじゃないかな」
「ふむ。野盗はセンテ近くの森にいるだろうからな。西側の戦場跡の方が森の中より安心して食事も取れるか」
「わかったわ、次は西ね」
「それじゃあエルサ、以前ゴブリンと戦った西に向かってくれ。街の外側を飛んで人には見られないようにするんだぞ」
「わかったのだわー」
エルサがゆっくりと地面から離れ、高度を上げていく。
ある程度の高度になったら、街から離れた場所を迂回するように移動し始める。
ものの2、3分で西側戦場跡地、以前は林のあった場所に着いた。
相変わらず飛ぶスピードが早いな……歩いたら1時間じゃすまない距離なんだけど。
まあ楽だからいいか。
モフモフに埋もれて幸せだったし、短い時間だったけど。
「それじゃあまずはお昼を食べようか」
「そうね」
「うむ、獅子亭の料理が楽しみだ」
「キューを食べるのだわー。料理も食べるのだわー」
エルサが地面に降り、背中から皆が降りて昼食の準備を始める。
とは言っても、地面に敷物を広げてその上に座って獅子亭で作った料理を鞄から出すだけだ。
今日の昼食は、以前センテの街に行く途中で食べたパンだ。
色々な具材と一緒に煮込まれた肉が載っていて食欲をそそる。
……相変わらず大きいけど、今回は人数分に合わせて作ってもらったから、残す事は無いと思う。
エルサにもパンとキューをあげて、皆で食べ始めた。
「以前にリクからもらった物と同じ物だな」
「そうですね。あの時はいきなり獅子亭のパンをくれって言われて驚きました」
「獅子亭に行きそびれて後悔してた時だったからな。つい勢いのままねだってしまった」
「確か、リクさんとソフィーさんが初めて会った時の話よね?」
「……モキュ……モキュ……おいしいのだわー……モキュモキュ」
エルサ、お前さっき1本キューを食べたばかりだろうに、パンより先にキューを食べるのか……。
「そうだな。あの時がリクと初めて会ったのだったな」
「そうですね」
「不思議なものだ、私は一人で冒険者をしてるのが性に合ってると考えていたのが、今ではリク達と一緒に行動してる」
「人の出会いは不思議なものですねー」
「私とリクさんが初めて会った時も今考えれば不思議ね。リクさん何も持たずに獅子亭に駆け込んできたから」
「ははは、あの時はお腹が空いたのと途方に暮れてたので必死だったんですよ」
「モキュモキュ……モキュ……」
エルサは食べる事に夢中で話には加わらないが、それを見ながら俺達も談笑をしつつ食事をする。
いつか、ソフィーさんがソロで活動してた話も聞いてみるのも良いかもしれないな。
そんな事も考えつつ、昼食を終えた俺達は荷物をしまって依頼のために調査を開始した。
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