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目が覚めるとそこにいたのは……

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 その後、マリーさんの持って来た食事を取ろうとしたところで、気持ちが逸ってしまっていたモニカさんとソフィーさんが部屋から出て来た。
 少しだけ恥ずかしそうにしながら、三人とエルサで遅めの昼食を頂いた。
 ……マリーさんは簡単な物って言ってたけど、獅子亭の料理はそれでも美味しかった。
 待たされた腹いせなのか、それ程お腹が空いてたのか、エルサは昼食の他にキューを10本以上、普段の倍は食べてた。
 そんなに食べて、腹を壊しても知らないぞ……ドラゴンがお腹を壊すなんて事があるのかわからないけど。


 夜、風呂にも入ってあとは寝るだけという時に髪が濡れたままのモニカさんとソフィーさんに部屋を襲撃された。

「ドライヤーというものを試しに来たわ」
「どんなものなのか教えてくれ」
「……はいはい」
「騒がしいのだわ……」

 濡れた髪が色っぽい二人に少しドキドキしたのは内緒。
 なんとか心を落ち着かせて、エルサ、モニカさん、ソフィーさんを並べて、全員に温風が行くように魔法を使う。
 モニカさんとソフィーさんは自分で髪を解いてもらい、俺はエルサのモフモフを丁寧にブラッシングする。

「これは……気持ち良いわね」
「癖になるな」
「今日も気持ち良いのだわー」

 皆気持ち良さそうにしてくれて良かったけど、モニカさんとソフィーさんはこのまま寝ちゃ駄目だ。
 目がトロンとして来てるけど、さすがに俺の部屋で女性が二人寝るのは色々まずいと思う。

「……モニカさんとソフィーさん。寝るなら部屋にちゃんと帰って下さいねー」
「もちろんだ」
「わかってるわ……さすがにエルサちゃんもソフィーさんもいたらね……」

 ソフィーさんはすぐに返事を返してくれたけど、モニカさんは返事をした後何か口ごもったようにブツブツ言ってた。
 何だろう?
 しばらくそのまま温風に当たり、しっかり髪を乾かした二人は目が半分閉じたような状態で部屋に戻って行った。
 ほとんど寝てるような状態だったけど、ちゃんと部屋まで辿り着くかな?
 それよりモニカさんの顔が少し赤くなってたな……温風が熱かったりしたのかな?

「あ」

 そんな事を考えていたらいつの間にかエルサがコテンと横に倒れて寝てしまった。
 もうモフモフはしっかり乾いてるし、大丈夫だね。
 気持ち良さそうに寝てるエルサを抱き上げて、今日も同じベッドに入ってモフモフを堪能しながら幸せな睡眠に入った。
 1か月後に王都で謁見かぁ。
 女王様に失礼な事をしないように気を付けないと……。

――――――――――――――――――――

「リク……起きて……」
「……ん」

 朝か?
 声が聞こえた気がした。
 目を開ける。
 部屋の中はまだ薄暗い。
 日が昇りきってないんだろう。
 こんな夜明け前に起きるなんて……二度寝するかな?

「リク! 寝なおさないで起きて!」
「……え?」

 また声が聞こえた。
 どこかで聞いた事のある声だけど、一緒に寝てるはずのエルサじゃない。
 というかエルサはまだ幸せそうな顔をして寝てる。
 もちろん、モニカさんやソフィーさんでもない。
 あの二人が起こしに来る事はそうそうないだろう。
 俺が寝坊したとかならともかく、今は夜明け前。
 こんな時間に起こしに来るはずが無い。

「……この声……は?」
「リク、私よ。ほら起きて」

 懐かしい気もする声だ。
 俺は体を起こし、声がする方を見た。

「え!?」
「おはよう、リク」

 俺とエルサが寝てるベッドの脇、俺を見下ろすように立ってはいるけど身長が足りないのか体を起こした俺と同じ目線になってる。
 その姿を見て、懐かしいのやら驚いたやらと色々な感情が溢れた。

「……あ……え? ……あれ?」
「もうリク。私を忘れたの?」

 色んな感情で中々意味のある言葉を出せ無かった俺に、その子は拗ねたような声を出し、頬を膨らませた。
 拗ねた顔は見た事が無かったけど、その愛らしい姿は良く覚えてる。
 話した時間はあまり多くは無いけど、忘れるなんて出来るわけがない。

「……忘れてないよ、ユノ」
「良かった。リク、久しぶり」

 俺がこの世界に来る事になった理由、というか原因。
 そして小学生くらいの女の子の見た目だけど、この世界の神様。
 でも結局は寂しそうだった女の子。
 最後に見た表情は泣き笑いだった女の子が今、目の前で溢れんばかりの笑顔で立っていた。

「……ユノ……一体どうして?」
「んー、まぁ一言で言うと、リクのせいね。おかげって言った方が良いかな?」
「俺の?」
「そう。リク私と会ってた時の最後、転移する直前に何かしようとしてたでしょ?」
「あー。何かしようとというか、ユノが泣きそうだったからただ手を伸ばして涙を拭ってやろうかと思っただけなんだけどな」
「そう……やっぱりリクは優しいね。そのおかげで私は少しだけ神の理からズレる事が出来たの」
「神の理?」
「ええとね、神にも色々制約があってね。その中で色々な事をしてるんだけど、その中に自分の世界に干渉は出来るけどその世界に入り込んじゃいけないってのがあるの」
「自分の世界なのに不便なんだな」
「そうね。それで、リクがあの時行動を起こそうとした事で神の理からズレた私は、この世界に直接入ることが出来るようになったの。まぁ、ちょっとだけ時間もかかったし、まだ少し不安定だけどね」
「それって、俺が原因なのか? 単に手を伸ばそうとしただけなんだけど。それに直接入るって事は、俺のいた世界にユノが来てたのと同じって事で良いのか?」
「リクの世界にいた時は完全な人間と同じ存在だったけど、ここでは少し違うの。それはそのうち話すね。それでリクのした事なんだけど、本来は何も影響を与える行動じゃなかったの。でも、リクの感情と魔力が作用してね」
「俺の魔力……」

 エルサがよく大量に魔力があるって言ってるやつだ。
 俺自身、自分の魔力がどれ程の量なのか全て把握してないけど、これまで魔法を使って来て、さすがにこの世界の平均は軽く越えてる事はわかってる。
 でも、その魔力が神に影響を与える事なんてあるんだろうか?

「俺の魔力ってすごく量が多いって事はわかるけど、これってこの世界に来る時にユノがくれた物だろ? それが神に影響するのか?」

 異世界に移動する時に貰える特殊能力、もしくはチート能力ってやつだろう。
 俺はこれまで深くは考えなかったけど、何となくこれはユノがくれたものだと思ってた

「それがね、リク。その魔力は私があげたものじゃないの。確かに私はリクに他にはない力をあげた。けどそれは魔力じゃないの」
「え? ユノからもらったものじゃない、のか? だったら俺の魔力って……」
「それは元々リクが持ってた魔力なの。リクが元々いた世界、地球ってところに住む人も大小個人差はあるけど、魔力は持ってるの」
「……地球じゃ魔法なんてないよな?」
「そうね。あちらに住む人間は魔力を持ってても、自然の魔力が存在しないから魔法は使えないの。ごく稀に異常な程魔力が高いせいで使える人がいたみたいだけど、一般的じゃ無かったね」
「異常な程魔力が高い……」
「そう、リクはそのうちの一人なの。こちらの世界の人間より地球に住む人間の方が保有魔力は高いのだけど、リクはその中でも特別に高い魔力を持ってたの」
「……」
「私を助けた時、妙に気にならなかった?」
「……そうだな。まぁ、学校の前だったから周りが学生ばかりでこんな小さい子が紛れ込んでたのは目立ってはいたけど、今考えるとユノの事を気にしてたのは俺だけだったな」
「それが魔力の高い証拠なの。あの時私は地球に存在するために完全な人間になっていたけど、本質は神。リクの他の人には無い程の多い魔力が私に反応してたの」
「そうだったのか……」
「あの時のリクは実際には本当に轢かれて死んじゃったんだけどね」
「え? 俺ってやっぱ死んだの?」

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