213 / 1,955
祝勝パレードも決定
しおりを挟む翌日、朝食後はゆっくりとユノやエルサと過ごす。
マックスさん達の見送りには、昼食を食べた後で間に合うだろうからね。
何かしら旅の準備をすると言っていたから、さすがに朝早くに王都を発ったりはしないはずだ。
「はい?」
「りっくん、私よ」
「姉さん?」
「どうぞ」
ソファーでまったりしていると、ノックの音が聞こえ、外から姉さんの声が聞こえた。
ヒルダさんがドアを開けてくれて、部屋の中に姉さんが入って来る。
「どうしたの姉さん。こんな朝に?」
「昨日りっくんに伝え忘れてた事があってね」
「伝え忘れた事?」
何だろう……?
姉さんが俺に伝える事といえば、多分昨日の会議の事なんだろうと思うけど、他に重要な事ってあったっけ?
「大通りが魔物に破壊されているのは知ってるわね?」
「うん、まぁね」
魔物達は、城を目指していたらしいから、被害自体は大きくないらしいけど、それでも屋台が壊されたりなどで、今はそれらの対処で封鎖されているはずだったね。
観光のために見ておきたかったんだけど……。
「その大通りの修繕が、数日で終わる見込みなのよ。そこから準備をして……今日からだとあと1週間くらいね」
「1週間後に何かあるの?」
「会議で決まった事だけど、りっくんの祝勝パレードをやる事になったわ」
「え……?」
祝勝パレードって何……?
いや、パレードは知ってる、うん。
祝勝と言うのも、この間魔物達が襲って来たのを倒したからだろうとは思うんだ。
まぁ、結構な危機だったから、それを祝うためにパレードを行う……というのも納得できる。
……でも、俺のって……何?
「何とぼけた顔をしてるの? りっくんがいたからこの王都……城は守れたのよ? それくらいやるのは当然でしょ?」
「城を守ったのは俺だけじゃないんだけど……。それよりも、何で俺がメインなの? 姉さんとかが出た方が良いんじゃない?」
「もちろん私も出るわよ、女王だしね。でも、今回はりっくんがメインなの。救国の英雄ってやつね」
「……一体何でそんな事に……」
会議で決まった事だって言ってたけど、重要な会議でなんで俺をメインにパレードをやるなんて決めてるの?
目立つ事はあまりしたくないんだけどなぁ……。
「会議ではほとんど満場一致だったわよ? もちろん私も賛成したしね」
「姉さんまで……止めてよ……」
「何を言ってるのよ。私の弟……りっくんを皆に自慢できるのよ? この機会を逃す事はできないわ!」
姉さんもそうだけど、この国の貴族達が参加した会議なんだから、貴族でも無い俺がメインのパレードを行う何て事、誰か反対する人はいなかったんだろうか……?
ほとんど満場一致と言ってるけど、こんな事に賛成する貴族と女王様……なんとなくこの国の行く末が心配だ。
「でも、皆俺が姉さんの弟だって知らないわけでしょ? 自慢しても……」
「まぁ、そこはね……広く知られるわけにはいかないと思うけど。それでも、りっくんがすごいんだって皆に認知されるのは良い事よ!」
「はぁ……」
昔もこんな事があったような気がするなぁ……。
何だっけ……あれは確か、俺が運動会の徒競走で1等になった時だ。
あの時はしばらく姉さんに連れられて、ご近所さんに自慢して回ってたっけなぁ……。
小さい時の事ながら、俺は恥ずかしかった思い出しかない。
……姉さんが喜んでくれるのは、嬉しいんだけどね。
「だから、基本的に自由に行動しても良いけど、1週間後……そうねぇ、準備もあるから……6日後から数日は予定を開けておいてね」
「……はぁ……わかったよ。……何でこんな事に……」
「それじゃ、りっくん。マックスさん達によろしくねー」
「……はいよ」
そう言って姉さんは笑いながら部屋を出て行った。
何度も言うようだけど……本当、何でこんな事に……。
「リク様、おめでとうございます。王都でパレードが開かれるとは……」
「はぁ……ありがとうございます。……ヒルダさん、この国では頻繁にパレードが行われるんですか?」
「いえ、多くとも数年に1度……以前は陛下の即位の時でしたか。民へのお披露目も兼ねて行われました」
「そう、ですか……女王様の即位とか、その時くらいしか行われないパレードなのに……良いのかな……」
姉さんが部屋を出て行った後、黙って話を聞いていたヒルダさんが、俺にお祝いの言葉を掛けてくれるが、俺としては気分的にあまりおめでたい事じゃない。
ヒルダさんによると、パレードは数年に1度行われる程度で、姉さんが即位した時に行われて以来らしい。
そんな重要というか、珍しい催しなのに俺がメインなんてなぁ。
それからしばらく呆然としながら、朝食を食べて満足気なエルサのモフモフを撫でて心の平穏を保ちながら過ごした。
ユノの方は、パレードがどんなものかあまり理解していないようで、とにかく楽しい事が行われると思ってワクワクしている様子だった。
「おいしかったのー」
「満足なのだわ」
「はぁ……昼を食べたらなんとか落ち着いたな」
何もする事なく、ただボーっとしたまま昼まで過ごし、ヒルダさんに用意してもらった昼食を頂く。
ここ数日、何かで動き回っていたから、たまにはこんな時間も悪くないね。
……パレードの事が無ければ……だけど。
「さて、落ち込んでても仕方ない。マックスさん達を見送りに行くか」
「私も行くの」
「当然、私もなのだわ」
いつまでもソファーでだらっとはしていられない。
立ち上がって用意をしている俺に、エルサが頭にコネクト。
ユノも一緒に来るようだ。
「それじゃ、ヒルダさん。行って来ます」
「行ってらっしゃいませ」
ヒルダさんに挨拶をし、部屋を出る。
城の中をエルサとユノを連れて歩き、外に出た。
途中、すれ違った兵士達からは、敬礼をされたりもしたけどそれにも少しは慣れた。
……見覚えのある顔も増えて来たなぁ。
「ええと、俺達が来た門は確か南門だから……あっちか」
城から町へと移動し、そこから門を目指す。
王都へ来た時は、衛兵の隊長さんに案内されたから、詳しい道順は覚えていない。
しかもあの時は大通りを通ったしね……今は通れないから、道順を辿る事は出来ない。
けど、前にマックスさんとマリーさんの案内で、王都の地理を教えてもらっていたから問題なく行けるだろう。
「こうして見ると、やっぱり人が多いなぁ。さすがは王都だね」
「皆忙しそうなの!」
「もっとのんびりすれば良いのにだわ」
「ははは、まぁ皆やる事があるからな」
人が集まればお金も物も集まる。
そうなれば、忙しく働く人も増えるのかもしれない。
あと、脇道のような場所にも人が多く行きかっているのは、大通りが通行不可になってるからかもしれない。
俺は忙しなく行きかう人達を眺めながら、散歩気分で南門へ向かって行った。
「お、あれはモニカさんかな」
地理をある程度知っていたおかげで、迷うことなく南門にたどり着けた。
近道なんかも教えてもらっていたから、考えていたよりも少し早く到着したくらいだ。
「おーい、モニカさーん」
「モニカー」
南門の内側、馬や馬車を止めるためだろう、広場のようになった場所に一人佇むモニカさん。
何やら誰かと話してる様子だけど、俺達が声を掛けるとこちらに気付いたみたいだ。
「リクさん! ユノちゃん! エルサちゃんも」
「……私はついでなのだわ?」
「俺とセットみたいな感じだからじゃないかな?」
「それなら仕方ないのだわ」
こちらを見て声を上げるモニカさん。
ついでのように名前を呼ばれたエルサが、少し引っかかったようだけど、もう定位置になってしまった俺の頭にずっといるからね。
エルサとしては、俺とセット扱いされるのは構わないらしいな。
11
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる