260 / 1,966
他とは少し違う鎧
「元々こういった鎧は、一人で着られる物ではありませんからね」
「……そうなんですね」
慣れてる人でも、一人で着脱は出来ない物だったらしい……。
言われて考えてみると、確かにそうだ。
いや、工夫したら着れるかもしれないけど……俺はそんな工夫を頑張ろうという気にはなれないしね。
というか、この重い鎧を着たうえで、武器や盾を持って戦闘をするって、相手の強弱に関係なく相当な重労働だと思う。
……ヴェンツェルさんが筋肉隆々な理由の一端が、わかった気がした。
「兵士さん達は、皆これを着るんですか?」
「いえ、こういったフルプレートを着るのは、一部の者だけです。指揮官や騎士爵を持った方など……ですね」
「成る程……」
ヒルダさんに言われて思い出したけど、魔物達によって城を襲撃された時、俺と同じような鎧を着た人はあまりいなかった。
全くにいなかったわけじゃないけど、ほとんどが部分鎧で戦ってたのを覚えてる。
備える時間が無かったから……とも考えられるけど、全ての兵士がフルプレートというわけじゃないようだ。
指揮官や騎士爵……というと、守らなきゃいけない人が、実を守るために着るという事なんだろう。
……でも、ハーロルトさんも着てなかったような……?
時間が無かったからなのか、動きにくいからなのかはわからないけど、情報部隊と言っていたから、身軽な方が良いのかもしれないね。
「終わりました」
「ありがとうございます。それじゃ、次の鎧を着ますね」
「はい。私はまたカーテンの外で待機しておりますので、もしお手伝いが必要な事があれば、お声をおかけ下さい」
「はい。ありがとうございます」
鎧を外し終え、ギャンベゾンのみになった俺に言って、ヒルダさんはカーテンの外へと出る。
お礼を言って見送った後、別の鎧を着るために準備を始めた。
「さて、次の鎧は……と」
姉さんを楽しませる着せ替え人形になるつもりはないけど、折角用意された鎧なんだから、一応は全部着てみようと思う。
もしかしたら気に入る鎧があって、今後の冒険者活動の時に装備したい、と思える物もあるかもしれないからね。
……あまり気乗りはしないんだけどね。
「んー、あんまり似合う鎧が無いわねぇ……」
「リクさん、金属鎧があまり似合わないんですね……」
「勇ましく見える金属鎧は、俺には合ってないのかもしれないね」
時折、ヒルダさんに手伝ってもらいながら、用意されていた鎧を着て皆に見せて行く。
姉さんやモニカさんが言っている通り、今まで来た鎧の中で、似合ってる鎧は無かった。
金属でできた鎧自体が、着慣れないという事もあるのかもしれない。
ちょっと違うかもしれないけど、初めてスーツを着る人みたいな感じかな?
……スーツを着た事は無いけど。
「ん? これは……?」
少なくなって来た鎧を見て、ちょっと他と違う物を発見した。
それに触れてみると、金属でできているようなんだけど、少しだけ他と違う感触を感じた。
青みがかってる鎧……か。
「とりあえず、着てみるか」
他の鎧と違い、それは部分鎧になっていて、胸部分とスカート状に下へ伸びる部分……ブレストプレートとフォールズって言うんだっけ……。
それと、肘近くまでのガントレットと足からすねの鎧……サバトンとグリーブで作られた鎧だった。
これなら、他の全身を覆う鎧と違って動きやすそうだ。
「んー、思ったより軽い……かな?」
青みがかった鎧を着て、動きを確かめる。
全身鎧より軽いのは当然なんだけど、それでもさらに少しだけ軽い気がする。
鎧で覆ってない部分はギャンベゾンを着てる。
部分的な物だから、ヒルダさんに手伝ってもらう事なく、一人で着て動きを確かめながらカーテンの外に出た。
鎧で覆ってない部分はギャンベゾンを着てる。
「……どうですか?」
「とても似合っておいでですよ。それでは、皆様に見てもらいましょう」
「はい……」
ヒルダさんに見せた後、皆のところに行ってその鎧を見せる。
どうでも良いけど、俺が色々着替えて鎧を試してる間、皆くつろぎ過ぎじゃないかな?
お茶だけじゃなく、茶菓子っぽいものまで食べてるし……。
「へぇ~、それは似合ってるわね」
「リクさん、格好良いわね」
「ふむ……リクには部分鎧の方が良いのだろうな」
「皮の鎧から金属になっただけで、強そうに見えるわね」
「実際は、皮だろうが金属だろうが、関係無く強いのだがな……」
「リク、格好良いの!」
「今までで一番まともなのだわ」
青みがかった部分鎧は、皆に好評のようだ。
やっぱり動きづらい全身鎧よりも、部分鎧の方が良いみたいだ。
でも、皮の鎧も軽くて動きやすいから、結構好きなんだよなぁ。
「その鎧は……あれね」
「あれ? この鎧だけ、他とちょっと違う感じだけど……どんな鎧なの?」
「それはワイバーンの皮を加工した物を、混ぜ込んで作った鎧よ。貴重な物だけど、一応持って来させてたの」
「へぇー、これがワイバーンの皮で作った鎧……」
「全身鎧にしたかったのだけど、ワイバーンの皮は貴重だからね。部分鎧にしかできなかったようね。……まぁ、りっくんのおかげで皮は大量に入ったから、全身鎧もできるだろうけど」
ワイバーンの皮で作られた鎧って事は、火に強かったり、他の金属よりも丈夫だったりするんだろう。
もしかすると、青みがかってるのは、ワイバーンの皮の色が混じってるせいなのかもしれない。
……もう少し青を強くして、紋章とかを入れるとどこぞのゲームに出て来る鎧に近くなるだろうけど……それはさすがにね……。
「ワイバーンの皮……成る程ね……」
「気に入った?」
「んー、皮の鎧も軽くて動きやすいから、どうするか悩むけど……これも悪くないね」
まぁ、これはパレード用の鎧なだけだから、このまま着て冒険者活動ができるとは思ってないけど、金属製の鎧というのも考えておいても良いのかもしれない。
ワイバーンの皮は、多少持ってるから……それを使ってね。
珍しく、これだけは皆に好評なようだし、ね。
「さて、最後の鎧だね。……これだけ、他とちょっと違うような感じだ」
最後の鎧は、ワイバーンの皮で作られた部分鎧ではなく、今までと同じ全身鎧。
でも、他と違ってちょっと薄く作られていて、ちょっと軽い。
ただ、いたる所に装飾が施されていて、彫金されている部分もあり、見栄えは良さそうだ……俺に似合うかどうかはわからないけどね。
「えっと……すみません、ヒルダさん」
「畏まりました」
ヒルダさんにまた手伝ってもらって、その軽めの鎧を着る。
薄めの金属でできてるけど、これって戦闘に使うとなると、ちょっと薄すぎないかな?
軽いのは良いんだけど、ちょっと心もとない気がする。
「では、皆様に……」
「はい」
鎧を着終えてカーテンの外へ。
皆の所へ歩いてみてもらうために移動する。
「んー……似合ってないわけじゃないけど……」
「華やかな鎧なのね。でも、さっきの鎧の方が、リクさんには似合ってたかも……」
「それは……戦闘用じゃなく、儀礼用の鎧か。しかしリクにはあまり……」
等々……やっぱり全身鎧は皆に不評なようだ。
全身鎧で騎士のような姿で、格好よく戦う……というのは俺には合ってないようだね。
……ちょっと悔しかったりはしないよ、うん。
あなたにおすすめの小説
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
元構造解析研究者の異世界冒険譚
犬社護
ファンタジー
主人公は持水薫、女30歳、独身。趣味はあらゆる物質の立体構造を調べ眺めること、構造解析研究者であったが、地震で後輩を庇い命を落とす。魂となった彼女は女神と出会い、話をした結果、後輩を助けたこともあってスキル2つを持ってすぐに転生することになった。転生先は、地球からはるか遠く離れた惑星ガーランド、エルディア王国のある貴族の娘であった。前世の記憶を持ったまま、持水薫改めシャーロット・エルバランは誕生した。転生の際に選んだスキルは『構造解析』と『構造編集』。2つのスキルと持ち前の知能の高さを生かし、順調な異世界生活を送っていたが、とある女の子と出会った事で、人生が激変することになる。
果たして、シャーロットは新たな人生を生き抜くことが出来るのだろうか?
…………………
7歳序盤まではほのぼのとした話が続きますが、7歳中盤から未開の地へ転移されます。転移以降、物語はスローペースで進んでいきます。読者によっては、早くこの先を知りたいのに、話が進まないよと思う方もおられるかもしれません。のんびりした気持ちで読んで頂けると嬉しいです。
…………………
主人公シャーロットは、チートスキルを持っていますが、最弱スタートです。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
召喚失敗から始まる異世界生活
思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。
「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。
ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。
即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。