神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
342 / 1,955

子爵邸で遅めの昼食

しおりを挟む


「だから、エフライム達を救出するため、騎士団長に付けた。リロなら、どの者がバルテル配下の者か判断できるからな」
「成る程……それで、地下で会った時にあの二人だったのですね?」
「うむ。戦闘があった場合を考えると、他に適任がいたかもしれないが……エフライム達の捜索となれば、あ奴程の適任は他にいないだろう」

 人を探すだけなら、他にも適任がいたかもしれないけど、今回は攫われたエフライム達の捜索だからね。
 バルテル配下の者が、周囲にいる事は当然の事だ。
 顔や名前まで全て知ってるのかはわからないけど、そういった判断ができるのなら、バルテル配下の者達が固まってる場所を調べれば、エフライム達がいる場所がわかると考えたんだと思う。
 相手側に悟られちゃいけないため、大量の人を使っての人海戦術に出られない以上、少数行動とするなら、それが一番良かったのかもしれない。
 まぁ、実際は騎士団長さんやリロさんが、エフライム達の所へ辿り着くまでに、俺が助け出しちゃったんだけどね。

 魔法探査ってやっぱり便利だなぁ、今回はかなりの偶然だと思うけど。
 もう少し、色々な事がわかるように、慣れて行った方がいいかもしれない。

「まぁ、そういう訳でだ、街の事は騎士団長とリロに任せておけばいいだろう。ここ最近、何も動けなくて、騎士団の者達も鬱憤が溜まっていただろうしな。本当に今日中にバルテル配下の者は、街からいなくなってもおかしくないだろうな。当然、他の街や村でも同様の事が行われ、領内から排除、捕縛がされて行くだろう」
「バルテル配下は、騎士団の八つ当たり対象ですか、お爺様?」
「今まで、散々苦しませてくれたからな……直接何かをする事はほとんどなかったようだが……おかげで、街の治安も悪くなって来ているとの報告が来ている。この機会に、ならず者達の取り締まりもしなければな」

 この街を含めて、子爵領内にいるバルテル配下の者は、徹底的に追われる事になるんだろう。
 今まで領内で何かあっても、見ているしかできなかった騎士団が八つ当たり……かぁ。
 原因があっちにあるから、八つ当たりじゃなくて正当な反撃なんだろうけどね。
 何にしても、これで子爵領内が安全になるなら良い事だと思う。
 ロータの父親のような事が、この先起こらない事を願うばかりだ。

「申し訳ありません、お爺様。俺が捕まってしまったばかりに……」
「なに、気にするな。ワシも前以て予期する事はできなかった。内部にまで入り込まれていたとはな……。今回の事、リロは相当頭に来ていたようだ」
「リロがですか?」
「エフライム達が攫われた後、内部に裏切り者や内通者がいた事を、全て調べる事ができなかったと後悔していたな。ワシの所に来て土下座までして来たぞ? 騎士団を抜けさせられる覚悟まで決めてな」
「そんなに……ですか」
「その事を後悔して、ずっと内偵を進めていたんだ。解き放たれたリロは、喜々としてバルテル配下の者達を追い詰めるだろうな」

 リロさん、そこまで思い詰めてエフライム達が捕まった後、頑張ってたのか。
 会って話したのは、少しだけしかないが、子爵家への忠誠というか、騎士団としての誇りは十分過ぎる程にある人らしい。

「失礼致します」

 リロさんの話が終わった頃合いを見計らったように、先程の執事さんが数人のメイドさんを連れて部屋へと入って来た。
 そのメイドさん達は、それぞれに料理の載ったお皿を持っており、俺達の前へと配膳してくれる。

「やっと食事なのだわ!?」
「はいはい、ようやくお腹いっぱいに食べられるぞ。すみません、クレメン子爵」
「これくらいの事、気にしないで欲しい。リク殿には、エフライムやレナーテを助けてもらったのだ。これだけでは全く足りないだろう」
「そうだな。リクがいてくれたから、今こうしてここにいられる。騎士団長達の捜索を待っていたら、救出はもっと遅れてただろうしな」
「そう、ですかね?」

 さっきの話を聞い後だと、リロさんはある程度エフライム達がいた場所に、目星を付けていたのではないかと思う。
 そこを調べて、エフライム達がいる事を確認、子爵邸に戻って騎士達を連れて、救出……多分、ほんの2、3日で済ませてたんじゃないかな? と思う。
 まぁ、予想でしかないんだけどね。

「キューは、キューはないのだわ!?」

 配膳されて行くお皿を見ながら、唐突にエルサが騒ぎ始めた。
 確かに、用意される料理は、肉料理やサラダ、スープ等々で、キュー単体の物はない。
 俺達を歓迎してくれる証として、凝った物を用意してくれたのだろうと思うけど、逆にそれが、キューを単体で出す事が避けられる結果になったのかな。
 ……違うか……単純に、貴族家でキューを単体で出す事がないんだろう……王城でも最初はそうだったし。

「キュー……ドラゴンはそういった物を好むのか?」
「いえ、俺にもそれはよくわかりません。確かに、救出されてから見るに、キューを食べて喜んでる姿は何度も見ましたが……」
「先程も、キューを食べて喜んでいたな……」
「すみません……もしあればでいいんですが、キューを持って来てもらえると……」

 騒ぎ出したエルサに、悩むように考えながらエフライムへと聞くクレメン子爵。
 エフライムの方も、昨日の夕食や今日の朝食で、エルサがキューを大量に食べてたのは知ってるけど、それが好物だとは判断がつかないようだ。
 そんな二人に、申し訳ない気持ちになりながら、キューをお願いする。
 俺達が持って来ているキューでもいいんだけど、エルサの食欲に任せて食べさせたら、すぐに無くなってしまうからな。

 キューを主食に、他の料理をおかずにする……なんて事をやってのけるエルサだ。
 キューはいくらあっても足りない。

「了解した。なぁに、キューを用意するくらい、大した事でもないだろう。エフライム達を助けてくれたリク殿達の要望だ。領内の村にある、キューを作る農地の一部ごとあげてもいいくらいだ、はっはっは!」
「お爺様……さすがにそれは……」
「はぁ……」
「ははは、それはお気持ちだ受け取っておきます」
「キュー畑……夢がひろがりんぐだわぁ……」

 大袈裟な事を言って笑い始めたクレメン子爵。
 それだけ、孫が無事だった事が嬉しいんだろうけどね。
 エフライムはさすがに苦笑してるし、レナは溜め息を吐いている。
 孫に関する事で、何かしら暴走するのはよくある事なのかもな。

 それにしても、エルサ……キューの畑を本気で欲しがったりは……止めてくれよ?
 管理もできないし、大体誰がキューを作るのか……エルサに言ったら、俺が作ればとか言い出しそうだが。
 というか、ひろがりんぐなんてまた変なスラングを……どうせ俺から流れて来た記憶なんだろうが。

「よし、用意できたな。では、頂こうか」
「はい」
「キューなのだわぁ!」
「いっぱい食べるの!」

 追加でエルサ用のキューを用意してもらい、全てが揃った状態で、クレメン子爵の合図で食事の開始。
 クレメン子爵は既に昼食は食べていたようで、用意された物は地下通路を通って来た俺達用のようだ。
 改めて用意されたキューに飛びつくエルサと、大量の料理を前に戦闘さながらの気合を入れるユノ。
 クレメン子爵に失礼じゃないかと思ったけど、ちらりと窺うと笑顔だった。
 あまり細かい事は、気にしない人なのかな?


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

処理中です...