380 / 1,955
危険を察知して避けるモニカさんとソフィー
しおりを挟む「王城か……記憶にあるよりは、小さく見える気もするが、以前来た時に子供だったからか」
「これが王城なんですね。凄く、大きいです……」
「レナーテ様、口を開けて見上げるのは、見栄えが悪いですよ?」
荷物に顔を突っ込んだエルサを抱き上げ、キューを食べようと抵抗するエルサを頭に乗せながら、仕方なく鞄からおやつのキューを上げていると、俺達から遅れてエフライム達が馬車から降りて来た。
エフライムやレナも、王城を見上げて感心している様子だね。
エフライムのように、子供の頃見た大きい物って、成長したら小さく見える事ってあるよね。
身長が伸びるからなのか、知識が付いたからなのかはわからないけど、懐かしい場所を見た時、エフライムのような感覚になる人って、結構いるんじゃないかな。
レナの方は、口を開けて王城を見上げていたのを、メイさんに注意されている。
お上りさんに見えなくもないから、確かに貴族の子女としては、あまり良くない事なのかもしれない。
そんなメイさんは王城を見ても、今までと変わらないすまし顔だ。
王都に来た事があるんだろうか?
「リク様、私はこれで。馬と馬車を兵士に任せた後、エフライム様達を城へ案内致します」
「長い間、色々と助かりました。ありがとうございます」
「いえ、リク様とご一緒できて、光栄でした。学ぶ事の多い時間でしたよ」
エフライム達とは、一旦ここでお別れとなる。
城の中まで顔パス状態になってしまった俺と違い、貴族家の人間であっても、ちゃんと受付をしないといけないからだ。
俺が一緒に連れて行ってもいいんだけど、それじゃ子爵家としての面目とかがあるみたいだからね。
エフライム達の案内は、マルクスさんが担当してくれる。
王都を出る時から、お世話になりっぱなしだから、頭を下げてお礼を伝えた。
マルクスさんにとっても、何かしらの経験になってくれたようで、良かった。
「それでは、リク様」
「はい」
「リク、後で会おう」
「リク様、また後でー!」
「失礼致します」
数人の兵士を呼び、馬と馬車を任せた後、マルクスさんがエフライムとレナ、護衛兼お世話係のメイさんと別れる。
エフライム達とは、受付が終わったら合流する事になる……のかな?
まぁ、俺に用意されている部屋まで、誰かが案内してくれるだろう。
城内には、兵士さんやメイドさんがいるしね。
「それじゃ、リクさん。私達も宿に戻るわ。荷物も整理しないといけないし」
「そう? 一緒に部屋までくると思ってたけど……仕方ないか」
「まぁ、宿の方も確認しないといけないからな。さすがに、私達がいない間も宿の部屋を開けておく事はないだろう?」
「言われればそうか。それじゃ、また明日……かな」
「そうね。明日にはまたリクさんの部屋に行くわ」
城へと入って行くエフライム達を見送った後、モニカさんが宿に戻ると言って、荷物を持った。
確かに、持って行った荷物を整理したり、ソフィーの言う通り、宿の部屋を取らないといけないだろう。
宿だって、十日以上も離れてる人のために、部屋開けておくのは損失だしね。
空を見上げれば、気の早い星が見え始めている。
王都へ来た時はまだ多少明るかったけど、今はもうほとんど日が沈んで暗い。
城門を出るくらいには、完全に暗くなるだろうから、町に出ても早々顔を見られそうにない。
「私は、リクと一緒に行くの!」
「……ユノちゃんはこっちね。エルサちゃんは……リクさんから離れそうにないから、仕方ないか」
「えー、なんでなのー?」
モニカさんとソフィーの二人と別れようとした時、ユノが俺と一緒に城へ来ようと主張した。
だけど、それはモニカさんに止められ、宿に行く組に入れられてしまう。
ユノが俺と一緒に来ちゃいけない理由でもあるのかな?
エルサは、キューを食べるのに夢中だから、諦めたようだけど。
「モニカさん、どうしてユノはこっちじゃいけないの?」
「だって……ねぇ?」
ユノと一緒に、俺もモニカさんに問いかけた。
モニカさんは、顔をソフィーへ向け、首を傾げる。
「そうだな。リクは恐らく、部屋に戻ったら何か言われる事になるだろうからな」
「何か……誰に?」
「アルネとフィリーナ」
「あ……」
忘れていた、と考えると二人に失礼かもしれないけど、アルネとフィリーナに何も言わず、王都を離れたんだった。
「まぁ、あの二人の事だ。暇な時は王城に来て、リクが帰ってないか確認していたのではないか?」
「目立つから、街中を散策もできないしねぇ。……そこで、陛下に捕まって、リクさんの部屋にいて、夜まで時間を潰す……と」
「あー、簡単に想像できるね」
二人が城へ、俺が帰ってる確認ってところじゃなく、姉さんが二人を捕まえて、とりとめのない話に付き合わされてる様子の事だ。
ヒルダさんが溜め息を吐きながら、お茶を淹れてる姿も目に浮かぶようだ。
「もし今いなくとも、明日の朝にでもリクさんが帰って来た事が知れて、すぐに城へ来るだろうしね」
「つまり、俺が怒られるのを予想して、ユノと一緒に避難しようと……?」
モニカさん達の言う事を理解して、問いかけると、二人は俺から視線を逸らした。
むぅ……アルネとフィリーナを置いて行くと決めたのは俺だし、パーティのリーダーでもあるから、怒られるのは俺の役目なのかもしれないけど……少し納得がいかない。
荷物の整理だとか、部屋を取るためってのは言い訳で、実は逃げるためだったりするのかもね……。
女の人って、なんでこんなに危機察知能力が高いんだろうか?
いや、俺がのんびりし過ぎで、忘れてたのがいけないんだけど。
「それじゃ、リクさん。頑張って!」
「それではな」
「また明日なの!」
「……おやすみ~。……はぁ、仕方ないか」
そそくさと、この場を去って行くモニカさん達に挨拶をして、溜め息を吐く。
最初は理由がわからなかったユノも、去って行く直前には、俺を哀れんだ目をして見てたし……。
まぁ、何はともあれ、帰らないという選択はないんだから、城に入らないといけない。
さすがにエルフの二人が暴力に訴えることはないだろうから、甘んじて怒られるようと覚悟を決め、城へと入った。
……エルサに飛んでもらって、ヘルサル辺りまで逃げられないだろうか?
マックスさん辺りに怒られるだけか……はぁ……。
「リク様、お帰りなさいませ。無事のお帰り、何よりでございます」
「ただいま帰りました、ヒルダさん。……で、これは一体?」
もう慣れてしまった城内を歩き、部屋へと入る。
中では、ヒルダさんが待っていて、迎えてくれる。
お互い挨拶をして、ホッと一息入れようと思ったんだけど……。
ソファーに姉さんやアルネとフィリーナが座っており、何も喋らない。
アルネとフィリーナは、俺に視線を向けて、帰って来た事を認識したみたいだけど、声を出せないようだ。
原因は……向かいに座っている姉さんか……機嫌が悪い?
眉間に皺を寄せ、険しい顔で不機嫌な様子を隠すでもなく、ソファーに座って腕を組み、右手の人差し指を左腕にトントンと当てている。
久しぶりに見たけど、昔からある姉さんの癖だ。
機嫌が悪くなると、あぁするんだよなぁ……と、懐かしむ余裕はほとんどない。
姉さんが不機嫌とか、何があったんだ?
11
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる