410 / 1,955
ヘルサルの冒険者ギルドへ
しおりを挟む「それじゃあ、お昼に冒険者ギルドで話しましょう」
「わかりました。クラウス殿には、私から伝えておきます」
「はい、お願いします。……あ、昼食はこちらで用意すると言っておいてください」
「リク様が? よろしいのですか?」
「どうせ、俺達も食べないといけませんからね。マックスさんに頼んで、用意してもらいますよ」
「評判の獅子亭の料理が食べられるのなら、嬉しい限りですな。では、そのように……」
冒険者ギルドで話す事に決まり、クラウスさんに伝えに行くハーロルトさんを見送る。
俺とモニカさんは、残っていたお茶を飲み干して、お昼の営業の手伝いを始めた。
ソフィーやフィリーナも手伝ってるし、お昼の用意をお願いするのに、何もせずに座ってるのはね……。
獅子亭での準備手伝いが終わり、お昼の用意をしてもらって、皆で冒険者ギルドへ。
一緒にいるのは、モニカさんとフィリーナ、それにエルサだ。
ソフィーはこういう話には疎いとの事で、獅子亭の手伝いに残った。
ヤンさんとの関わりも少ないし、あまり大勢で行っても……という事らしい。
ユノの方は、常連さんに可愛がられてる事を喜び、こちらも同じく手伝いに残った。
ちょこまかと動いて料理を配膳する姿は、女性客から特に人気だしね。
ちなみにエルサは、絶対について行くと言って、俺の頭にしがみついた。
元々置いて行こうとは考えてなかったんだけど、キューの事だから必死なんだろうな……とモニカさんとソフィーが温かい目で見てた。
自分が見られてるようで、ちょっと微妙な気分だったけどね。
「えーっと、すみません……」
「リク様! ……失礼しました。お待ちしておりました。既にクラウス様と副ギルドマスターは、別室にてお待ちしております」
冒険者ギルドに入り、カウンターの受付をしている女性に声をかけると、俺に気付いて大きな声を上げた後、ハッとなって頭を下げて謝り、俺達を案内するようにカウンターから出て来てくれた。
以前にも話した事のある人だったから、俺の顔を覚えてたみたいだね。
クラウスさんとヤンさんは既に待っているようで、受付の女性に案内されて、建物の奥へと案内された。
待たせちゃったかな?
「おぉ、リク様! 久しぶりでございます!」
「お久しぶりです、クラウスさん。ヤンさんとトニさんも」
「久しぶりですね。活躍は聞いていますよ」
案内された部屋に入ると、10人程度が座れる大きめの机に向かって、クラウスさんとヤンさんが座っていた。
トニさんは、クラウスさんの後ろに立って、静かに待機してる。
多分、小会議室のような部屋なんだろう。
俺が入って来た事に気付くと、すぐにクラウスさんが立ちあがり、揉み手をしながらニコニコと大袈裟に声を上げる。
オジサンに喜ばれても……とは思うけど、それでも嫌がられるよりは良いか。
クラウスさんに挨拶をしながら、ヤンさんとトニさんにも挨拶。
にこやかに返すヤンさんと、会釈だけをするトニさんは対照的だ。
秘書として、前に出ないようにしてるんだろうね。
「リク様が王都に活動拠点を移され、ヘルサルで過ごす日々は寂しく、無為にすら思えましたが……こうしてまた会えた事に喜びを感じます」
「あははは……大袈裟ですよ、クラウスさん」
詩を詠むように、大袈裟に俺と再会した喜びを伝えて来るクラウスさんだけど、さすがにそこまで言うのは大袈裟だろうと思う。
というか、これで頬でも赤らめてたら告白というか、好きな人に言ってるように見られかねない。
……オジサンに告白される趣味はないから、変な想像は止めておこう。
「リクさん、マックスさんからもそうですが、冒険者ギルドを通じて、活躍は聞き及んでいますよ」
「活躍なんて……エルサもそうですけど、皆がいるおかげですよ」
「いつもの謙遜するリクさんですね。あぁ、そうでした。Aランク昇格おめでとうございます。見事、統括ギルドマスターにも認められたようですね。最年少で最速のAランク……歴史に残るでしょうね」
「ありがとうございます。でもヤンさん、Aランクになるための書類を、本人に運ばせるのはどうなんですか?」
「ははは。本来は安全に運ぶため、別の冒険者に依頼したりするものですが……リクさんに運んでもらうのが、一番安全ですからね」
目を輝かせているクラウスさんに、若干引き気味になりながら、ヤンさんと話す。
俺の事や、パーティでの活動はギルドから情報を得ているようだ。
まぁ、各街や村と情報を共有しないといけない事もあるだろうから、知ってて当然か。
情報のやり取りをしていないと、別のギルドで受けた依頼を、行った先の街にあるギルドで報告なんてできないわけだしね。
ヤンさんから、Aランクに昇格した事を祝われ、クラウスさんも横でうんうん頷いて嬉しそうだ。
統括ギルドマスターというのはマティルデさんの事だろう。
歴史に残るとかは、特に気にしてないんだけど、俺が昇格するかどうかという書類を自分で運ぶというのはちょっとどうかと思う。
俺はそんな事をしようとは思わないけど、中を見たり、無くしてしまったりする事もあるだろうに……。
安全かどうかは……まぁ、エルサやユノがいれば大丈夫だと思うけど。
「リク様、よろしければ王都での武勇伝などをお聞かせ願いませんか?」
「え? 武勇伝って……でも、俺の事は知ってるんじゃないですか?」
「国からの報告は受けております。リク様がいればこそ、王都を始め、この国は救われたのだと。ですが、私はリク様から直接聞きたく存じます……」
「そ、そうなんですか……? でも……」
「んんっ!」
高揚した様子のクラウスさんから、王都での事を聞かれる。
俺の事は色んな所から聞いて知っていそうだけど、クラウスさんは直接聞きたいらしい。
んーそう言われてもな……目を輝かせるクラウスさんの希望に添えないのは悪いとは思うけど……。
そう考えながら、立ち上がっているクラウスさんの後ろに控えているトニさんを見ると、咳ばらいを一つ。
やっぱり、あまり話が逸れるのは良くないよね。
「む、トニ……いいではないか。せっかくこうしてリク様が戻って来て下さったんだ」
「ですがクラウス様、仕事も残っておりますので、時間も限られております」
「ぬぬぬ……仕方ないな……」
「ははは、それじゃあとりあえず簡単に話だけしますよ。どうせ、お昼も食べないといけませんしね」
「おぉ、そうですな。獅子亭の料理を持って来て下さったとか。わざわざありがとうございます。ほら、少しくらいいいだろう、トニ?」
「はぁ……わかりました。食事を済ませる間だけですからね……」
「マックスさんの料理は美味しいですからね。冒険者をしていた頃は、よく食べていました」
トニさんに止められて不満そうなクラウスさんだが、そんな二人の間に入って、食事の間だけ少し話をする事を提案した。
すぐに食いついたクラウスさんと違い、トニさんは仕方なさそうに頷く。
すみません、トニさん。
多くの時間が取れそうにないから、さっさと食事の準備を済ませようと、モニカさんやフィリーナと一緒に持って来ていた料理を机の上に広げる。
準備をする間に、ヤンさんが懐かしそうに呟いたのを聞く。
確かに、ヤンさんとマックスさんや、マリーさんは同じパーティの冒険者だったらしいから、マックスさんの料理を食べててもおかしくないか。
その頃からマックスさんは、料理が上手かったんだなぁ。
というより、ヤンさんは懐かしそうにしなくても、獅子亭に食べに行けば良いのに……と思わなくもない。
まぁ、忙しいとか、お客さんが多いとかであまり行けてないんだろうね。
11
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる