神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
562 / 1,955

謝罪と酒場の宣伝

しおりを挟む


 俺が頭を下げている事に、慌てているらしい店主さん。
 だけど、迷惑をかけたのは俺なんだから、ここは頭を下げさせて欲しい。
 英雄と呼ばれてるとかで、ふんぞり返ったりお金をばらまくだけで解決なんて事は、したくないからね。
 そう思って謝罪をしていたら、さらに慌てた様子の店主さんに腕を引っ張られ、店の奥へと連れていかれた。

 お客さんがいるのに、大声で頭を下げて謝罪っていうのも、いけなかったのかな?
 ……またお店に迷惑をかけてしまったかもしれないなぁ。
 ちなみにだけど、お店の奥へ行く時視界に入った隅の方では、俺が壊したと思われる粉々になった机や椅子が寄せられていた。
 木の床にも、数か所穴が開いているようだし……やっぱりもっと謝らないといけないなぁ、これは。

「えーと……それでその……」
「昨日は迷惑をかけてしまい、本当にすみませんでした……」

 連れていかれたお店の奥、事務所というか、店員の休憩所のような部屋だね。
 いくつかある椅子に座り、俺を連れてきた女店主さんに向き合って再び頭を下げる。
 女店主さんはどうしたら……と困った表情をしていたけど、とにもかくにも、まずは謝らないといけない。

 ちなみに、頭にはエルサがいつも通りくっ付いている。
 朝は避けられていたのに、渋々ながらもついて来てくれた。
 多分、以前俺がヒルダさんと話していた中で、一人になる云々というのを気にしているんだろう……ありがたい。
 ソフィーとエアラハールさんは宿で留守番だね。

 今回は俺だけが迷惑をかけたんだから、ついて来ると言っていたソフィーには遠慮してもらった。
 こういうのは、誰かについて来てもらうとかじゃなく、ちゃんと一人で謝らないとね……エルサはいるけど、それはそれとして。
 エアラハールさんは、俺が暴れた事でお酒をあんまり飲めなかったと言って、部屋でのんびり飲んでいると言っていた。
 ……昼前から飲んでいても大丈夫だろうかと心配だけど、あの人の事だからなんとかなるんだろう。

「リク様、とにかく頭を上げて下さい。そのままでは、畏れ多くて話ができません……」
「あ……えっと……はい」
「リクが頭を下げてたら、くっ付きやすかったのにだわ……」

 女店主さんに言われ、頭を上げる。
 エルサがボソッと呟いていたけど、それはスルーさせてもらう。
 後頭部にくっ付きやすくするために、頭を下げていたわけじゃないし、今は女店主さんと話さないといけないからね。

「? どこからか声が?」
「あははは、そっちは気にしないでいただけると……」
「はい。まぁ、昨夜リク様が暴れた事ですが……」
「申し訳ありませんでした! 修理費は払ったとの事ですが、足りなければ追加で! それに迷惑料も……」

 女店主さんにも、エルサが小さく呟いた声が届いたのか、キョロキョロと首を巡らせていたけど、とりあえず気にしないように伝える。
 まぁ、エルサの事をよく知らなかったら、喋るなんて思わないよね……噂では、白い毛玉を俺がくっつけているとしか思われていないようだし。
 ともあれ、昨日の事へと話が戻ったので、もう一度謝っておく。
 修理費が足りなかったり、迷惑料が必要なら払う事も辞さない構えだ。

「あぁ、いえいえ。それは大丈夫です。正直に言うと、うちとしてはありがたいくらいですよ」
「え、ありがたいって……さっき見ましたけど、テーブルや椅子も壊れていましたし、床も……」
「まぁ、床は修繕しないと危ないので、頂いた修理費を充てさせてもらいますが……テーブルと椅子は、あのままにしておこうかと考えています」
「うぇ?」

 この女店主さんは何を言っているんだろう?
 床を修繕しないといけないのは当然だろうけど、それでもテーブルや椅子はそのままって……。
 店としては、壊れて使えない物を置いておくなんて、損にしかならない気がするんだけど。
 よくわからなくて、変な声が出てしまった。

「いえね? 今この国で一番話題というか、噂になっている英雄リク様ですからね。そんな方が私の店を利用し、テーブルや椅子を破壊した……まぁ、リク様の気分を害したとか、そういう事はなかったと説明する必要はありますが、宣伝になりそうなのですよ」
「はぁ……いやまぁ、確かに酔っ払っただけで、気分を害したわけじゃありませんが……」
「もちろん、リク様の悪評となりかねないので、後でお伺いするつもりでした。……まさか、謝りに来られるとは思ってもいませんでしたので……」
「いえ、迷惑をかけたのはこちらですから。それに、お店の物を壊したわけですし……悪評……はあまりいい気分ではないですけど、物を壊したのは事実ですからね」

 商魂たくましい……と言うべきなんだろうか?
 女店主さんは、噂と俺の名前を使って、壊れたテーブルや椅子をそのままにする事で、お店の宣伝に使えないかと考えているようだ。
 確かに、王都から結構離れたこの場所にも、余計なものがくっ付いているとはいえ、既に俺の噂が広まっている事を考えると、客寄せになる可能性はあるのかもしれない。
 俺やエルサが、キューを食べていたという話だけで、キューが売れすぎたりもしているみたいだしね。

 悪評と言われると、ちょっと微妙な気分になってしまうけど、それでも物を壊した事は事実なんだし、それが多少誇張して伝わるだけかなと思う。
 ……そういう噂が広まると、姉さんには怒られそうだけど、今のような称賛される噂を少しは緩和できないかな……と浅はかにも頭の隅で考えたりもしている。

「リク様は昨日、親方と勝負をしたので知っていると思いますが……この街では、力を持っている事が良く見られます。もちろん、暴力が全てとかではなく、単純な力比べで強い人が優秀とされる程度ですけどね」
「はい。それは昨日もフォルガットさんに聞きました」

 力と言っても、喧嘩が強いとかそういう話ではなく、腕相撲で強いとかの、力持ちが称賛されるとかそういう事だ。
 この街には来たばかりだけど、体格のいい人や気性の荒そうな人はよく見かける。
 それでも、喧嘩をしている所というのは全く見ていないし、殺伐とした空気のようなものも感じない。
 鉱山に出る魔物の影響で、意気消沈していたりして、寂れている雰囲気は多少感じるけど、それでも争いを良しとする風潮ではない事くらいはわかる。

 というより、単純に力持ちの人が偉いというわけではなく、皆から尊敬される……といった程度で、それが上下関係をもたらしているわけではないんだろう。
 力試しも、腕相撲なら怪我をする事も少ないだろうしね。

「リク様は昨日、酔っていたとはいえ素手でテーブルや椅子を破壊していました。それは確かに、親方を打ち負かした事を納得できるものです。そして、多くの力自慢がいるこの街でも、あのような事ができる人はおりません」
「えーと……鉱夫さん達が暴れたりは?」
「酒場なので、そういう事も多々ありますが……元々荒っぽい人間が来る事も想定しておりますので、頑丈なテーブルと椅子を用意しております。そして、今まで力試しをしても、体格のいい力自慢の鉱夫が酔って暴れても、壊れる事はありませんでした。あれを壊す事ができたのは、リク様だけなのです」
「はぁ……」


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

処理中です...