神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
706 / 1,955

広大な地下室の端へ到着

しおりを挟む



 突き進む俺達の前を塞ごうとしたり、横から襲い掛かって来るのを対処しているだけで、あまり深く考えたり注意深く見ていなかったなぁ。
 向こうが連携し始めているとは言っても、大小さまざまな机や椅子があったり、端の壁だけでなく途中途中にも試験管があったりして、大勢でという事はない。
 まぁ、一度に対処する相手が少ないのは余裕でいられる一因だけど、その代わり俺やヴェンツェルさんが進むのにも邪魔だから、一長一短だ。
 特にヴェンツェルさんは、大柄な体に加えて大きな剣を持っているから、大分動きにくそうだ……それでも、足を止める事なく薙ぎ払いながら進めるのは凄いんだろう。
 そもそも、ここは研究施設であって戦闘をする想定がされていない場所だから仕方ないし、突入して暴れているのは俺達の方なんだから、文句を言う筋合いじゃないんだけどね。

「むん! リク殿、そろそろ端に辿り着きそうだ」
「そうみたい……ですねっ! っと……よし。ん、あれは……?」
「奥に続く部屋か……一部の者達は、あの中に逃げ込んだようだな。遠目に、他の部屋へと逃げ込んだ者もいるようだがな」

 目の前を塞いだオーガを斬り倒し、結界で覆って内部で爆発させた後、再び走り始めようとしてヴェンツェルさんと奥を見て立ち止まった。
 さすがにオーガが正面にいる時は、結界で爆発を防ぐ必要があるので、そのまま走り抜けるわけにはいかないけど、それはともかく……ヴェンツェルさん、戦いながら進む中でもよく見ているね。
 俺も見てはいたけど、戦闘そのものというか経験が多いためか、戦いながらでも冷静に周囲をみているらしいのはさすがだ。

「ぬぅん! よい、これで正面は何もなくなったな。まぁ、後ろからも来るようになったが……どうする?」
「後ろからは、後続のモニカさん達と距離が離れたからでしょうけど……さて……」

 ヴェンツェルさんが気合一閃、大剣の腹で二人の人間をまとめて横薙ぎに弾き飛ばし、一つの扉の前で足を止める。
 薙ぎ払われた二人は、壁に激突した後折り重なるようにして動かなくなった……痛そう、というのは似た事をしている俺が考える事じゃないか。
 もうほとんどの人が逃げ込んだ後なので、扉は閉じられていたけど、俺達が突入した頑丈な扉と違って木の扉で、大きさも人間が通るくらいのサイズしかなかった。
 こちらは、人間用でオーガは中に入らないようにしていたんだろう。
 このまま扉を蹴破ってでも中に入るか、それとも作戦通り振り返って地下室の制圧を優先させるか、どちらにするべきかを考えるため、しばし黙考……とは言っても、敵はまだこちらに向かって来ているし、長い時間考える事はできないんだけどね。

 ちなみに、後ろからもオーガや人間が襲い掛かって来るようになったのは、端に辿り着いたという事もあるけど、モニカさんやソフィー達と距離が離れた事が大きい。
 右側から俺達を排除しようとしていた奴らは、俺やヴェンツェルさんの所に来るまでに、ソフィー達の方に向かって行っていたのが、距離が離れたおかげで俺達へと向かって来たからね。
 とは言っても、走っている俺達に追いつけない者もいたけど。

 ともかく、これからどう動くかを決めなければいけない。
 ヴェンツェルさんは、完全に俺へと任せるようで、どちらを選ぶか待ってくれている……どちらを選んでも、間違いというわけじゃないだろうというのが大きいか。
 今いる地下室をソフィーやフィリーナ達に任せて、奥を調べるという選択肢……さすがに追加で人間やオーガが増える事がほぼなくなっているし、突き進む過程で大分数も減ったしオーガも見渡す限りでは残り四、五体といったところだからエルサに任せても問題はなさそう。
 武装した人間はそれなりにいるから、協力してさっさと制圧した後、ゆっくり調べるという事もできる。

 逃げ道があるかはわからないけど、地上ではヴェンツェルさんが連れてきた兵士さん達の大半が残っているため、そちらで発見される可能性もあるし、遠くまで地下通路が作られていても、後から追えばいいだけだ。
 向こうは訓練されていない研究者達がほとんどだから、あまり早く動けないだろうし、集団で行動すると速度は落ちるから。

「じゃあ、とりあえず先にこの場所を皆で……」
「リク殿、エルサ様から聞いたが……たまには仲間に頼るのも、大事な事だぞ? もちろん、協力する事や助ける事も重要だが」
「……いつそれを、エルサに聞いたんですか?」
「少し前にな。リク殿が他の事をしている際に、エルサ殿が漏らしていた。リク殿は、他人に頼るのが苦手そうだ……とな」
「エルサはそんな事を……」

 ひとまず地下室を確保して、別の部屋も含めて調べるように……と考えて言おうとしたら、ヴェンツェルさんに遮られた。
 いつヴェンツェルさんとエルサが話したのかはわからないが、ルジナウムの戦いでも言っていたっけ。
 この世界に来るまでずっと……正確には姉さんが俺を庇ってから、どうしてもという時以外誰かを頼る事なく生きてきた。
 お世話になっている人は大勢いるけど、できるだけ迷惑をかけないように、できるだけ自分でできる事は自分で、それでいて誰かを助けられるように……それは、英雄と呼ばれるようになってから、さらに強く意識するようになった気がする。
 エルサは契約で俺の記憶が流れ込んでいるため、そんな考えもわかっているんだろう……いつもはおくびにも出さないくせに。
 ヴェンツェルさんにも言われてしまっては、もう強がるのはあまり意味をなさないような気がしてきたなぁ……うん、そうだね、俺は一人じゃないし、頼りになる人達が周囲にいるんだ。

「……わかりました。それじやあヴェンツェルさん、俺達はこの扉を破って中を調べましょう。後ろ……この地下室の制圧は、他の人達に任せます」
「……そうか……リク殿はそう考えたのだな。わかった、私もついて行こう!」

 今すぐに自分を変える事はできないかもしれないけど、まずは一歩と、ここはソフィー達に任せる事にして、ヴェンツェルさんといっちょに奥へ進む事を決意した。
 ヴェンツェルさんに伝えると、数秒目を閉じた後、ニカっと笑って頷いてくれた。
 なんというか、嬉しそうにも感じる優しい笑顔のように見えたのは、こんなヴェンツェルさんの表情を見慣れないせいなのか……。
 俺の周囲にいる人達は、ほんとにいい人達ばかりだなぁ……だからこそ、迷惑をかけたくないと考えていたりもするんだけど、少しずつ変わって行ってみよう。
 過去の経験や、一人になる事など、考える事はいっぱいあるかもしれないけど、少しずつ……ね。

「はい、お願いします! ――ふっ! フィリーナ!」
「こっちは任せていいわよ。もう数も少ないし、ソフィー達も頑張っているからね。はぁ……やっとね……」

 ヴェンツェルさんに応え、フィリーナに合図を送るように後ろから追いついてきた人間を、天井へと打ち上げ、名前を叫んで呼ぶと、魔法で増幅された声が聞こえてきた。
 こちらからの声は届かなくて、向こうからは届く一方通行だったけど、溜め息まで聞こえて来るとは……。
 というか、フィリーナもヴェンツェルさんと同じく知っていたのかな? エルサが漏らしていたらしいから、行動を共にする事が多いフィリーナが知っていてもおかしくないか。
 ……皆には、心配をかけてしまっているようだね……うーん、こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。

 とにかく今は、ヴェンツェルさんを連れて扉の向こうを調べるのが先だ。
 考えるのは後でもできるからね――
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

処理中です...